2008-01-01から1年間の記事一覧

特別企画 小林・益川論文を読む! −その3

ではKM論文の続きに入る.1ページ目の終わりからKM論文でのモデルが提出される.KM論文での論理の流れとしては,牧らの強い相互作用を扱ったquartet modelに対して,弱い相互作用をゲージ群を とするゲージ場として導入するということであるが,その基礎に…

特別企画 小林・益川論文を読む! −その2

今回の予備知識編はCP対称性についてである.C対称性のCとは,Charge Conjugate(荷電共役変換)のことで,粒子⇔反粒子の入れ替えである.P対称性のPとは,Parity(鏡像変換)のことで,空間座標反転であると俗に説明されているが,実際のところはもうすこしや…

特別企画 小林・益川論文を読む! −その1(以下続くのか?)

南部氏,小林氏,益川氏のノーベル賞受賞を記念して,京都大学ではその受賞理由となった1973年の論文をPDFで流している. "CP-Violation in the Renormalizahle Theory of Weak Interaction" 見るとたったの6ページである.これはひょっとしたら読めるのでは…

お試し計算群論 演算表から群の位数を求める−その1

群論の計算を計算機にやらせてみようという企画の手始めとして,群の演算表が与えられたときにその群の位数を計算するというプログラムを考えてみる。群の元が1から番号をつけられているとして(1番目は常に単位元としておく),演算表が1からまでの整数をエ…

Burnside Ring

ふたたび、Alperin本(Alperin&Bell, Groups and Representations,GTM162)の1.3章の章末問題からである。Burnside Ringの問題がこの章の演習問題中に仕込まれた難問であろう。有限群に対して,作用のある有限集合つまり、有限-空間の同値類の集合を考える…

位数16の群 その2

extension typeを列挙するために,次のLemma2が必要となる. Lemma21) 2) <Lemma2の証明> いずれも証明というよりも直接計算による確認である(表はWild論文のものに不動点を加えた). 1) の生成元をとする.はの像により定まる.結果は次の通り. の像 位…

位数16の群 その1

調子にのって位数16にもチャレンジしてみる.なので,本当なら一生懸命やっていた p-group generation algorithmを使ってみたいところなのだが... 位数16の群の分類もまた Red cat氏の論文にばっちり書いてあるが,ここではcyclic extension theoremを使った…

位数60の単純群 その2

位数60の群に対して,『が単純 』の後半部分を示す.5-Sylow部分群は6個あり,5-Sylow部分群の集合にはGの内部自己同形による置換が引き起こされるため、準同形 が定義できるが,の単純性よりこれは単射となっている。また,前回でも使った論法だが,置換の…

位数60の単純群 その1

前にBurnsideが著作のなかで位数60の群の分類はいい演習になると書いていることを紹介したが,私が探した範囲では,完全な記述はRed cat氏の論文以外には見たことがない.再度ここに紹介しておく."位数120までの群の分類"さて,位数60の群は全部で13ある.…

The p-group Generation Algorithm

数ヶ月にわたってO'Brien論文を読んできたわけであるが,結論として与えられたp-群のimmediate descendantを求めるアルゴリズムをまとめるとつぎのようになる. step 1) からを求める. step 2) のp-multiplicator とnucleus を求める. step 3) の部分群で…

p-covering group of G と immediate descendant その2

本解説は O'Brien論文を解読しているのだが、多少のオリジナリティを出そうと,の universality だけを使う証明にしようとしてずいぶんてこずり,気がつくとかなり更新の間隔があいてしまった.その間,残念なことに数学リングが無くなってしまい,いったい…

演習問題

かなり久々の更新である.ほっと一安心と思っていたら後ダレの残務がいろいろとあり,そうこうしているまにちょっと無理がたたったか体調を崩してしまって,ここしばらくの数学の勉強はAtiyah&MacDonaldの演習問題を1日2,3問解くだけであった.実のところま…

ちょこっと代数幾何

仕事がやっと一段落.例年四月の頭に仕事で大きなイベントがあり,期末前あたりから出張が多くなる. 移動時間や宿での暇なときに勉強してやろうと,張り切って数学書を詰めこんでいくのだが,結局のところ新幹線では寝こけてたり,宿ではボーっとテレビを見…

p-covering group of G と immediate descendant

p-covering group のある性質をみたす部分群とのimmediate descendantとに対応があるというのが を導入したミソである. Theorem 有限p-群をd-generator かつ exponent-p class c とする. このとき任意ののimmediate descendant に対して,の真部分群が存在…

駆け足で有限群を見てみよう

私が計算群論にはまり込んでしまう前に企画していたのが、鈴木通夫氏の講義録 駆け足有限群を見てみよう を解読してみようというプランであった.が、私の力不足で企画倒れになりそうなので当面は実現しそうにない. 準備の部分はともかく、第二章以降はマシ…

p-covering group of G の普遍性

immediate descendantとの関連を調べる前にp-covering group のuniversalityについて述べる. p-covering group of Gの普遍性 有限p-群をd-generator かつ exponent-p class c とする. このとき任意の 有限 d-generator p-群と 全射準同型 で、その核 がele…

演習問題その後

本業のほうで海外出張に出かけたりと忙しくてなかなか勉強は進んでいないが,ちょこちょことCGTの勉強などしている.今回はとりあえず前回の演習問題の考察である.問題を再掲する. 問題 ,, を1より大きい任意の3つの整数とする. このとき有限群とその元…

演習問題

O'Brien論文の解読作業がもうちょっと先の方で停滞しているので,ちょっと別のネタを. もともとFT定理本を読もうという目論見で,その準備と称して有限群論やら表現論やらの本を買い込んでは放置してあるのだが,その中で Alperin & Bell 『Groups and Rep…

有限生成群の部分群で指数が有限なものは、有限生成

この定理は,今回,計算群論を調べているうちに初めて出合った定理であった.いままで関係式による群の定義は知っていたものの,その逆である全ての有限群は関係式により定義できるということは漫然と当たり前と思っていた.しかし,もしある有限群を定義す…

p-covering group of G

さて、そんな都合のいい方法とは... まずは天下りながら,d-generator p-群に対してそのp-covering group と呼ばれる p-群を定義する. p-covering group of G p-群をd-generator かつ exponent-p class c とする. のd個の生成元からなる自由群をとし,…

p-group generation algorithmの戦略

やっと本論に突入. まずは、p-群のdescendantの定義である. p-群のdescendant の定義 p-群を d-generator かつ exponent-p class c とするとき d-generator p-群で なるものを のdescendantと定義する. またdescendant のうち、特にとなっているものを imme…

lower exponent-p central series その2

O'Brien論文の最初のほうに列挙されているの性質について解説する. の性質 1) 準同型 に対して、 2) かつ は exponent-p class c ならば 3) 有限p-群 に対して、 : のFrattini 部分群(のすべての極大部分群の積集合) 1) は を作る操作と準同型で送り…

PCPの例

定義だけではなんなので、具体的なPCPの計算をとでやってみる。 を定義として、降中心列を計算すると、 となる。それぞれの商群から生成元を選んでやると、たとえば とすると、PCPは となる。 では、 となり、降中心列はよく似ているが、 と選ぶと、PCPは と…

Lower exponent-p central series

O'Brien論文のための予備知識第二弾である。降中心列の類似品である lower exponent-p central series を次のように定義する。 Lower exponent-p central series p-群に対して , , と定義するとき、はの特性部分群であり、.また在るに対して となる。 を…

Power-Commutator Presentation

O'Brienの論文で前提とされている事柄がいくつかあるが、まずp群に対するPower-Commutator Presentation (PCP)について解説しておく。PCPは一般に可解群について定義できるが、ここではベキ零群、特にp-群に対しての定義を述べる。 p-群はベキ零であるので、…

計算群論事始

前回述べたBescheらのミレニアムプロジェクト等々、コンピュータを使って有限群論を研究するという分野はCGT(Computational Group Theory)と呼ばれている。ルービックキューブの最小手順を求めたりするお遊び風のものもあれば、化学で高分子の異性体の数を…

位数2000までの群は全て求められている

この群の構成の問題はいまどこまで解けているのだろうか? この問題で手ごわいのは意外に2の冪乗の群である。位数16で14個、位数32で51個、位数64で267個、位数128で2328個、位数256で56,092個、位数512で10,494,213個とどんどん恐ろしいことになってくる。…

位数の小さな群を全て求める

与えられた位数の有限群の同型類を全て求めるという問題である。この問題の歴史は古く、1854年にCayleyが位数4と6の群を決定したことに端を発する(ちなみにどちらも2つの同型類がある)。群論の演習で出てきそうな問題であるが、Burnsideも位数60の群の決定…

絵で見る有限群

有限群ネタを求めてネットを漁って見つけたもので、一番感動を覚えたのは次のサイトである。 弘前大学理工学部数理システム科学科のサイトにある月間ホームページ2002年3月号: 絵で見る有限群 なんと位数60までの有限群が(全部ではないが)ヴィジュアルに…

FT定理はすごい!

では私が当面の目標としている Feit-Thompsonの定理、別名、奇数位数定理(odd order theorem)についてひとくさり。 まずはその内容であるが、 [Feit-Thompsonの定理] 奇数位数の有限群は可解である これだけである。しかし主張していることはすごい。群の位…