位数16の群 その1

調子にのって位数16にもチャレンジしてみる.16=2^4なので,本当なら一生懸命やっていた p-group generation algorithmを使ってみたいところなのだが...
位数16の群の分類もまた Red cat氏の論文にばっちり書いてあるが,ここではcyclic extension theoremを使った手法について紹介してみたい。これはネットで流れている Wild氏の論文 "The Groups of Order Sixteen Made Easyに基づくものである.著者は違うがこの論文の姉妹編で一般のp^4についてのもの"GROUPS OF ORDER p4 MADE LESS DIFFICULT"も発見した.こっちはまだ目を通していないのだが、楽しみは先にとっておこう。

さて,有限群Gとその正規部分群Nで,G/N巡回群C_nになっている場合,GNC_nによるcyclic extensionと呼ぶ.ここで,G/Nの生成元になるa \in Gを選ぶと,a^n=v \in N で,aによるN上の共役作用を\tau \in Aut(N)とすると\tau(v)=a^{-1}a^na=v\tau^n=Int(v) \quad i.e. \forall x\in N,\quad \tau^n(x)=v^{-1}xvである.
extension typeを組(N,\quad n,\quad \tau,\quad v), \quad n\in \mathbb{N},\quad \tau \in Aut(N),\quad v\in Nで条件 \tau(v)=v,\quad \tau^n=Int(v)を満たすものとする.先に見たように cyclic extension が与えられると extension typeが得られる(データの詳細はaのとり方に依存するためuniqueではない). cyclic extension theoremとはこの逆の主張である.

Cyclic Extension Theorem

extension typeが与えられると(そのデータを持つ)cyclic extension が定まる.

この定理の証明の詳細を述べることはしないが,集合N\times C_nに次のように積を定義すると,これがextension typeに付された条件により群となるのである.
x,\quad y\in N,\quad \quad i,\quad j\in \{0,\quad 1, \ldots ,n-1\}に対して,
[tex:(xa^i)(ya^j)= \begin{cases} x\tau^i(y)a^{i+j} & \mbox{if }i+j

Lemma1

位数16の群GC_2\times C_2\times C_2\times C_2に同型な場合を除き,C_8\triangleleft GまたはC_4\times C_2 \triangleleft Gである.

<Lemma1の証明>
Gの元の位数で最大のもので分類を行う.
1) 16または8の場合:
 この場合はGC_8を含み,それは指数が2であるから正規部分群となる.
2) 2の場合:
 この場合はGは可換群となり,C_2\times C_2\times C_2\times C_2に同型となる.
2) 4の場合:
 一般にp群の中心Z(G)は1でないので,その中から位数2の元zを選ぶ.もし位数4の元xで,x^2 \neq zなるものが存在すると [tex:\simeq C_4\times C_2]が求めるものである.そこですべての位数4の元xに対して x^2=zとしよう.[tex:G/]を考えるとその元の位数は高々2であるので,これは可換群(\simeq C_2 \times C_2 \times C_2)となる.位数4の元xを任意に選んでその中心化群C_G(x)を考えるとg^{-1}xgx^{-1}の形の元を[tex:G/]に送ると1になるため,[tex:g^{-1}xgx^{-1}\in ].すなわちg^{-1}xg=xまたはg^{-1}xg=xzであるから,xの共役類の個数は高々2となり,[G:C_G(x)]\leq 2. よって|C_G(x)|\geq 8となるので,C_G(x)は[tex:]以外の元yを含んでいる.yの位数が2なら,[tex:\simeq C_4\times C_2]が求めるものである.yの位数が4なら,u=xyとするとu^2=x^2y^2=z^2=1であるから,[tex:\simeq C_4\times C_2]が求めるものである.証明終わり.


このLemma1によれば,N=C_8およびN=C_4\times C_2に対するextension typeでn=2かつ(Nが可換なので)\tau^2=id_Nのものを調べれば位数16の群が尽くせる(C_2\times C_2\times C_2\times C_2に同型なものを除く)ことになる.これは結局 Aut(N)の位数2の元\tau(involution)とその不動点v\in N,\quad \tau(v)=vの組を探すことになる.