有限生成群の部分群で指数が有限なものは、有限生成

この定理は,今回,計算群論を調べているうちに初めて出合った定理であった.いままで関係式による群の定義は知っていたものの,その逆である全ての有限群は関係式により定義できるということは漫然と当たり前と思っていた.しかし,もしある有限群を定義するのに関係式が無限個必要だったら,かなり嫌な感じである.この定理は有限個の関係式でよいということを保証してくれる.美しい定理であると思う.以下にその証明を述べる.(参考にしたのは,鈴木通夫 『群論 上』である.)


有限生成群をG,その指数有限な部分群をHとする.Gの生成元の集合をXHによる剰余類の代表系をTとする.仮定よりXTも有限集合に取れる.
任意のHの元をhとして,hXの元による表示を


h=x_1 x_2 \cdots x_n


とする.(x_iの逆元も,もともとXに入っているとしておく.) 
部分積を u_0=1, \quad u_i = x_1 x_2 \cdots x_i \quad (1\le i\le n)と定義する.
さて,Tは剰余類の代表系であったから,  0\le i \le nに対して,


Hu_i = H t_i


が成立するような t_i \in Tが存在する.ここで分解


h=(t_0 x_1 t_1^{-1})(t_1 x_2 t_2^{-1}) \cdots (t_{n-1} x_n t_n^{-1}) t_n


を考えると,項  t_i x_{i+1} t_{i+1}^{-1} \quad (0 \le i \le n-1)


H t_i  x_{i+1} t_{i+1}^{-1}=H u_i x_{i+1}t_{i+1}^{-1}=H u_{i+1}t_{i+1}^{-1}=H t_{i+1}t_{i+1}^{-1}=H


であるから,  t_i x_{i+1} t_{i+1}^{-1} \in H \quad (0 \le i \le n-1)となる.最後のt_nは,u_n=h\in Hよりもとからt_n=1である.すわなち,H t'  x t^{-1}  (t', \quad t \in T かつ  x \in X かつ  t'  x t^{-1}\in H) なるような元で生成されていることになり,有限生成である.