演習問題

かなり久々の更新である.ほっと一安心と思っていたら後ダレの残務がいろいろとあり,そうこうしているまにちょっと無理がたたったか体調を崩してしまって,ここしばらくの数学の勉強はAtiyah&MacDonaldの演習問題を1日2,3問解くだけであった.実のところまだ1章の演習問題から抜け出せていないようなわけで... しかし,こうちまちまと演習問題をやっているだけでもけっこう楽しかったりする.何とかという群論の本の演習問題のように猛烈に難しい問題をこっそり忍ばせていることもなく,素直に楽しめる.特に環の代数的な構造が prime spectrumに入れた Zariski topologyにより,位相的な性質に翻訳されてしまうというのが非常に不思議である.非常によくできている.中でも仰天したのが,Bool代数のStoneの定理と呼ばれるものがいつの間にやら証明できてしまうことであった.

そこで数年前にちらっと勉強したっきり本棚に埋もれていた 田中俊一『位相と論理』を引っ張り出して,Stoneの定理の証明のあたりを見直してみると,こちらではBool代数 BからBool代数2(元が0,1のみのBool代数)への準同型写像全体に位相を入れて証明しているのだが,よく考えればこれは 写像とその写像の核(実はmaximal ideal)とを対応付ければ,prime spectrumの集合と一致し,しかもそこで入れた位相はまさしくZariski topologyに一致している.しかも,つぎのようなコメントまで文献ノートに載っていたのである.

(田中俊一『位相と論理』 p.65)
1930年代にM.H.Stoneはブール代数の表現定理を証明し,ブール代数が豊かな数学的内容をもつことを示した.当時まだ一般概念としては存在しなかった可換環の素イデアルの空間(スペクトル)とカテゴリーにおけるアジョイントの概念が実質的に用いられているという,時代に先駆けた結果である.

いやはや,今ようやくこのコメントの意味が了解できたわけである.