lower exponent-p central series その2

O'Brien論文の最初のほうに列挙されているP_i(G)の性質について解説する.



P_i(G)の性質


1) 準同型 \thetaに対して、\theta (P_i(G))= P_i(\theta (G))


2) G \triangleright N かつ G/N は exponent-p class c ならば P_c(G) \le N


3) 有限p-群 G に対して、P_1(G) = \Phi (G) : GのFrattini 部分群(Gのすべての極大部分群の積集合)

1) は P_iを作る操作と準同型で送り込む操作とが交換可能であることを意味している。これはP_i(G)の定義からほぼ自明である。特に\theta : G \rightarrow H全射のとき、P_i(H)=\theta (P_i(G))である.


2) は 自然準同型 \theta : G \rightarrow G/H に1)を適用して、1=P_c(G/H)=\theta (P_c(G))から出る.


3) p-群GでのFrattini部分群の性質: G/\Phi (G) は基本可換p-群となることから、[G,\quad G],\quad G^p \in \Phi (G) より P_1(G) \le \Phi (G). 逆向きは、定義から G/P_1(G) は基本可換p-群となるため、 \Phi(G/P_1(G))=1. 一方で、G/P_1(G)の極大部分群M/P_1(G)の元像 MGの極大部分群である(M \ge \Phi(G) \ge P_1(G)準同型定理より、Mの指数がpとなる).よって、自然準同型 G \rightarrow G/P_1(G) による \Phi (G)の像は、\Phi(G/P_1(G))=1に入るため、P_1(G) \ge \Phi (G).


補助的な定義として、p-群GのGenerator number d を基本可換p-群であるG/\Phi (G)の生成元の数(=C_pの直積の数)とする.このときGは最小でd個の元で生成される.Gを d-generator p-群と呼んだりもする.


以上で、準備はおしまいである.計算群論などいままでまったく知らなかったので結構準備に時間がかかった.論文の理論編はここから約5ページ分であるが、きっちり解読したのはまだ1ページ分.前途多難である.
また、いろいろググッてみて分かったが、この分野はまだまだ日本では流行っていないようだ.これから流行るんだろうか...”計算群論”でググルとこの日記が一番最初に出てきて気恥ずかしいものがあるが、しかし、これってまったく流行ってないという意味では...前途多難である.