位数16の群 その2

extension typeを列挙するために,次のLemma2が必要となる.

Lemma2

1) Aut(C_8)\simeq C_2\times C_2
2) Aut(C_4\times C_2)\simeq D_8

<Lemma2の証明>
いずれも証明というよりも直接計算による確認である(表はWild論文のものに不動点を加えた).
1) C_8の生成元をxとする.Aut(C_8)xの像により定まる.結果は次の通り.

Aut(C_8) xの像 位数 不動点
\phi_1 x 1 C_8の元すべて
\phi_2 x^3 2 1,x^4
\phi_3 x^5 2 1,x^2,x^4,x^6
\phi_4 x^7 2 1,x^4

2) C_4\times C_2の生成元をx(位数4)およびy(位数2)とする.Aut(C_4\times C_2)x,yの像により定まる.結果は次の通り.

Aut(C_4\times C_2) xの像 yの像 位数 不動点
\psi_1 x y 1 C_4\times C_2の元すべて
\psi_2 x^3y x^2y 4 -
\psi_3 x^3 y 2 1,x^2,x^2y
\psi_4 xy x^2y 4 -
\psi_5 xy y 2 1,x^2,x^2y
\psi_6 x^3 x^2y 2 1,x^2,xy,x^3y
\psi_7 x^3y y 2 1,x^3,x^3y
\psi_8 x x^2y 2 1,x,x^2,x^3

このときAut(C_4\times C_2)=<\psi_2,\quad \psi_5;\quad \psi_2^4=1,\psi_5^2=1,\psi_5 \circ \psi_2 \circ \psi_5 = \psi_2^{-1}>\simeq D_8である.証明終わり.


組み合わせとしてはかなり多くなるので,同値なextension typeを取り除いてなるべく計算する数を減らす必要がある.ただし,同値でないextension typeから同型な群が生じる可能性は排除されていないため,最後は出来上がった群のリストが各々同型でないことを別にチェックする必要性がある.

いくつか具体的にやってみる.C_8の生成元をx としておく.
(C_8,\quad 2,\quad \phi_1,\quad 1):
このextension typeは x^8=1,\quad a^2=1,\quad [x,\quad a]=1を与えるので,これはC_8\times C_2である.


(C_8,\quad 2,\quad \phi_1,\quad x):
これも可換群であるが,(xa)^2=xaxa=x^2\cdot x=x^3より(xa)^8=x^4となるのでxaの位数は16となる.よってこれはC_{16}

位数8の元をもつ位数16の可換群はこの2つしかないので,\phi_1を使った残りのものはどちらかと同型となる.


(C_8,\quad 2,\quad \phi_2,\quad 1):
axa=\phi_2(x)=x^3であるから非可換群であるが,これは\phi_2による半直積である.


C_8を含む場合は,Red cat氏の論文の同じ箇所の繰り返しになるのでこれまでとするが,この場合は可換群が2つ,D_{16}Q_{16}を含む非可換群が4つが含まれる。


(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_1,\quad 1):
これは可換群で,C_4\times C_2 \times C_2.


(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_1,\quad y):
これは可換群で,aの位数は4である.[tex:\cup =1]なので,[tex:C_4\times C_4]. これで可換群はすべて出たので,残りの[tex:\psi_1]を使ったものはそのどれかと同型になる.


[tex:(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_3,\quad 1)]:
このとき [tex:a]と[tex:y]は可換である. [tex:axa=x^3=x^{-1}]であるから,[tex:\simeq D_8].すなわちこの群は [tex:D_8 \times C_2]となる.


[tex:(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_3,\quad x^2)]:
このとき [tex:a]と[tex:y]は可換である.[tex:a^2=x~2] で [tex:x^{-1}axa=x^3axa=x^3 \cdot x^3 \cdot x^2=1]であるから [tex:\simeq Q_8].すなわちこの群は [tex:Q_8 \times C_2]となる.


[tex:(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_3,\quad x^2y)]:
このとき [tex:a]と[tex:y]は可換である.生成元として[tex:x]と[tex:a]が取れるがこれらはどちらも位数4であり,かつ[tex:\cup
=1]となっており,[tex:\simeq C_4]の[tex:\simeq C_4]による[tex:x \to x^3]で作った半直積となっている.


[tex:(C_4\times C_2,\quad 2,\quad \psi_5,\quad 1)]:
このとき [tex:a]と[tex:y]は可換である.これは[tex:C_4\times C_2]の[tex:C_2]による半直積なのだが,[tex:x^{-1}ax=ya]であるから,[tex:\simeq C_2\times C_2]は正規部分群となっており,これの[tex:\simeq C_4]による半直積でもある.(Wild論文の結果に合わせた.)


といったようにLemma2の表のデータにより群の演算は決まってしまうので,あとは具体的な計算による同型判定だけが問題であるということになる。Wild論文の最後の部分で,群の各々の元の位数を調べ上げることでこれが実行されている.手法としてはエレガントというよりはベタで,計算機向けである.位数16の群は可換群が5種類,非可換群が9種類の合計14種類存在することが結論となる.