FT定理はすごい!
では私が当面の目標としている Feit-Thompsonの定理、別名、奇数位数定理(odd order theorem)についてひとくさり。
まずはその内容であるが、
[Feit-Thompsonの定理]
奇数位数の有限群は可解である
これだけである。しかし主張していることはすごい。群の位数が奇数であるというだけで、その群が可解であると言い切ってしまっている。可解というのは、交換子群を作るという操作を繰り返していくとどんどん小さくなって最後は1になるという性質を持つ群である。交換子群は正規部分群であり、もとの群が可換でなければ、1とも異なる。したがって非可換な可解群は単純群(それ自身と1以外の正規部分群をもたない群)ではない。つまり非可換な奇数位数の群は単純ではないということで、非可換な単純群の位数は偶数であるということになる。つまり、有限群論の大テーマである単純群の分類において、偶数位数の群だけ調べればよいということがわかったのである。
この最後の形、「非可換な有限単純群の位数は偶数である」という主張は1911年の大御所Burnsideによるものである。その後、1957年のSuzukiによる部分的な解決を礎に、1962年にFeitとThompsonによって解決されたのである。話はちょっとそれるが、このSuzukiとは鈴木通夫である。26個しかない散在型単純群のうち、鈴木通夫と原田耕一郎(前回紹介したモンスター群の本の著者)はそれぞれひとつづつ発見しており、有限群論における日本人の貢献は結構大きいのではないかと思っている(今までぜんぜん知らなかったが...)。
さて、Feit-Thompsonのオリジナル論文は255ページあるそうだが、当時の群論の論文としては異常に長いものであり、また専門家にとっても相当に難解な代物であるらしい。ただ、幸運なことにこの証明を簡易化したものが本として出版されている。オリジナル論文での証明は大きくlocal analysis(局所解析?)とcharacter theory(指標理論)に分かれており、これを反映して本の方も2分冊(著者も違う)となっている。
Local Analysis for the Odd Order Theorem (London Mathematical Society Lecture Note Series)
- 作者: Helmut Bender,George Glauberman
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1994/01/01
- メディア: ペーパーバック
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Character Theory for the Odd Order Theorem (London Mathematical Society Lecture Note Series)
- 作者: T. Peterfalvi,R. Sandling
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2000/03/30
- メディア: ペーパーバック
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