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[小ネタ]
の逆関数を求める
久々の投稿ではあるが,めっちゃ小ネタである.実は仕事のソフトを書いていてこの問題にぶつかった. の濃度が
の濃度に等しいということの証明として,対応を具体的に
と与えることができる.
という具合に
の作る平面を斜めに切るように数える,よく知られたものである.さて,問題はプログラムでループ変数を
にして,
の方を求める,つまり逆関数が欲しいと思ったのである.ところが意外にもこの対応の逆関数を陽に表した公式が Webで見つからないのである.頼みの綱のstack overflowにも『全単射なんだから逆対応の存在は明らか』みたいなのしかなくて困ったが,一つだけ手がかりとして,『
』というのが見つかった.このヒントは,確かに
をにらむと見えては来るが,数値で計算してみると,
を切り上げたり切り捨てたりしても合ってはいない.いろいろ試行錯誤の挙句,次のような公式を得た.
ここには
を切り上げて整数化する記号である.
ちょっと試してみよう.
のとき
で,
.切り上げて
なので 0.
のとき
で,
.切り上げて
なので 1.
のとき
で,
.切り上げて
なので 1.
のとき
で,
.切り上げて
なので 2.
のとき
で,
.切り上げて
なので 2.
のとき
で,
.切り上げて
なので 2.
とかなりきわどいもののイケている.もっと先の方を適当にやってみると,
のとき
で,
.切り上げて
なので 53-2=51=20+31 とこれも正しい.
がわかると
なので逆関数は求まったことになる.
さて,上の公式を証明しよう.
と置く.
の切り上げが
に等しいということは,
であることと同値である.まず,
を示す. もし,
なら
で,
は矛盾である.よって
.
同様に なら,
.
は矛盾.よって
□
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[物理学] Dirac『一般相対性理論』を読んでいた
えーと,興味が抽象的な数学から具体的な数学に移る波の途中であらぬ方向に逸れて一般相対性理論に行ってしまった今日この頃です.これにはちょっと事情があって,実はHawking & Ellis『The large scale structure of space-time』を読もう(これもまた渋いチョイス)というネット勉強会が立ち上がりつつあって,その予習のために自習でDiracを読むという段取りだったわけです.ちなみにDirac『一般相対性理論』は短い(100ページちょいぐらい)ので有名なテキストですが,最初に読む本ではありませんです.とはいえ,テンソル計算の復習はできるので整理には良いのかもしれません.一方,Hawking & Ellisももはや古典で,特異点定理を学ぶのなら今なら Wald 『General Relativity』を読めという情報がネットにありました.まあ,そこは趣味の世界なのでH&Eでもいいかなぁと.
Dirac『一般相対性理論』に戻ると,なんと『ちくま学芸文庫』にも収録されているとのこと(ちくま文芸文庫は収録のチョイスが謎で面白い).また,ネット上でも高橋善樹さんという方が,『ディラック 「一般相対性理論」を読む』というタイトルで丁寧なノートを作っておられるので,もし本書を自分でも読みたいという奇特な方がおられたらぜひ参考にすることをお勧めします.
さて,私が本書を読んでいて二か所でハマったので,そのハマリのご紹介を.
最初は,『19. ブラックホール』である.18のシュヴァルツシルトの解でにある,いわゆる時空地平の特異性を座標変換であたかも何も特異性が無くなってしまうかの如く記述がある.Dirac先生も『特異性は解消である』とか言っているが,(19.1)で作った座標は
で独立変数でなくなるため,数学的にはさっぱりである.まあ,ここはDirac先生の勘違いということで自分は納得した.そもそも計量が定義されていない点がある時点で議論に困ると思うのだが...まあ,H&Eではさすがにそういう点は最初から除外されていたはずである.
もう一点は本当にハマったところで,『27. 物質が連続的に分布している場合の作用』である.この中の変分の形を与える式(27.4)
の導出が納得いかなかった.先の高橋ノートでもここはそのまま使われていて参考にはできなかった.これ
の部分が反対称なので自然に連続の方程式
が出るので非常に綺麗な形をしている.それはわかるのだが,Dirac先生の説明はいかにも物理屋な説明である.
自分でも考えてはみたものの,速度場の定義が問題で,これって本当に時空座標の関数になっているのかが疑わしい(軌道上でしか定義されていないと思う).結局『25.物質のエネルギー・運動量テンソル』節での説明がよくわからない(固有時間
は軌道を決めないと決まらない).ネット情報に救いを求めてみたのだが結構手強かった.
しかし,数日の調査の結果ついにヒントを見つけましたよ.StackExchangeありがとう.『How to derive equation 27.4 in Dirac's "General Theory of Relativity" book?』というそのままの質問(ググってもなぜか直接出てこないが,ヒットした質問の関連質問というところに載っている)で解答には,単一の質点の運動に対してだが正確な記述があった.それによると速度場は時空座標の関数ではなく,時空座標に関連するのは質量分布の部分だけである.
では質量が連続分布しているときはどないなんねんと思うが,速度場と言っているものが軌道依存であるので,軌道の連続分布というようなものを考えないといけないのだろうか? いや待て待て,なんやわからんが 速度場 なるものが最初から与えられているとしたら,点
を通る軌道は
かつ
なる積分曲線であるはずである.ここに
は単なるパラメータであるが,
であったから,実は
は固有時間に一致している.4次元時空のある三次元空間断面(その点を
でパラメタライズすると考える)を
での始点の全体と考え,軌道を
と書いて,
と拡張してみてはどうだろうか.描像としては,初期点
しかし,この変位で軌道の微分方程式は,
に変わっている.この右辺の長さは
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[集合論] Real Numbers その4(Jech本4章 p.42)
4章本編の最後に取り上げるのは,Baire空間である.Baire空間さて,Baire空間
任意の自然数の有限列
これはに離散位相を入れたときに,無限積
に入れる位相としてよくある直積位相というやつになっている.ちなみにテキストには
は閉集合にもなっているというコメントがあるが,
ここに
は
なる有限列,だからである.さて,
は正と負に分けると
となるが,負の時
,正の時
で写像すると無理数であることを保ちながらそれぞれ
と
の中の無理数の集合に位相同型に写像される.このことから結局
の無理数全体と開区間
の無理数全体は位相同型であることがわかる.そこで
から
の無理数全体への写像を次のように連分数を使って定義する:
ちなみにJech本では
さて,自然数の無限列に対して右辺は収束するのでその極限値を像とするのであるが,
テキストのコメントではBaire空間
さて,Baire空間と
が類似品というような話をする一方で,
の部分集合が完全集合であるための必要十分条件を以下の木(tree)の概念を使って定式化する Lemma 4.11が結局,本節のミソであるようだ.
には直接的には木を定義するような自然な構造がないので,そこが
との差異と言えば差異だろうか.
を全ての自然数の有限列の集合として,
について,
と定義する.また,
と定義する.
逆に
と定義すると
さて,の完全集合を木の言葉で定式化するために次の定義を行う.
空でない木に対して:
この定義は要するに,任意の
以上の準備のもと,Lemma4.11のステートメントは非常にシンプルである.
Lemma 4.11
閉集合に対して:
テキストに証明はついていないが,ほぼ定義の言い換えのようなものである.
<証明>
であるが,右辺の全称記号の順番を入れ替えてみると有限列
を伸ばした異なる無限列
が存在するのでそれらを適当に有限で切れば
が完全の条件と一致する.逆に任意の
に対して,
を有限で切ったものを
とすれば
が完全である条件は,
の中に
と異なる
の元が存在する(∵
のどちらかは
とは異なる
を有限で切ったものになっている)という主張であり,すなわち
は
の孤立点ではない □
に対して,
と定義すると,
さて,
以上の準備の上で,例によって
と定義する.
ここで補題として,
最後に を示す.
なので 左辺 ⊃ 右辺.逆に左辺の元を
とすると,
なる最小の
が存在する.もし,
が後続順序数なら,
として,
なので
は右辺に属する.もし,
が極限順序数ならば,
で補題より
. ところが,
の最小性から
なので矛盾.つまりこのケースは実は起こらない.□
さて,の右辺は,高々可算集合の高々可算集合個の和であるので,高々可算集合である.
を
の非加算な閉集合とすると
と書けるので,先の等式は,
が完全集合と高々可算集合の和に分解されるというCantor-Bendixsonの定理の
バージョンである.
■
[集合論] Real Numbers その3(Jech本4章 p.40)
今回のネタは定理4.6 (Cantor-Bendixson)『実数の中の任意の非加算な閉集合さて,独自調査により Cantor-Bendixsonの定理は選択公理を使わなくても証明できるらしいので,テキストの証明をこの観点から眺めてみよう.ところで蛇足ながら,CantorはCantor-Bendixsonの定理を証明しようとして,超限帰納法(超限順序数)をあみ出したそうである(1880年代).先の系にも連続体仮説との関連がうっすら見えるように,Cantorは生涯にわたり連続体仮説の証明に腐心していたらしく,その証明がうまくできないことと集合論の基礎をめぐってのKroneckerの執拗な攻撃により精神を病んでいったとWikiにある.ちなみにKroneckerはLindemannのπが超越数である証明(1882年)を『美しいが無意味.なぜなら超越数は存在していないから』と言ったそうである.真意はもちろん知らないが,『πが代数方程式を満たさない』ことは認めるが,かといって『代数方程式を満たさない数としての超越数』という概念そのものの構成を否定しているのだと思う(直観主義の人だから,補集合を取る操作だけでも考えている世界からはみ出てしまうかもしれないのである).
<定理4.6の証明>
limit point の定義は『の点
がlimit point
を含む任意の開集合が
以外の
の点を含む 』である.以前の記事で述べたように点列での定義は不採用である.記号
で
に含まれるすべてのlimit pointの集合を表す.この
は
から論理式で表現できるため,すべての位相空間のクラスからそれ自身への関数クラスが定義されていると考えてよい.すると次のような超限再帰的な定義が可能である.
しかもは非増加である.出来上がったものは順序数全体のクラス
から
のベキ集合への関数クラスとなる.これは超限再帰的な定義なのであって集合を単に列挙しているわけでもないので選択公理の出番はない.
さて,以前にもあった論法だが,もしすべてのについて,
が成立すると,
から
への単射となっている.この逆関数の関数クラスを作る(像でないところは0にするとか適当でよい)と集合
から
への全射が得られるが,置換公理より
が集合でなければならないが,これは矛盾である.そこで
なるような最小な
が存在することになる.このとき,
とする.
なので,もし
が空でないなら,完全集合である.
が空であろうがなかろうが,
が高々可算集合であることを示そう.
その準備として,両端が有理数であるようなの開区間の全ての集合を考えてそれら可算集合でインデックス付けしたものを
としよう.これは有理数が
でインデックス付けできるので,両端を考えると
への単射が存在するが,
なので一つの
でインデックス付けできる理屈である(途中飛ばして番号を付けなおす必要はある).特に整列集合であるところがミソで,一般的に『XXXの条件を満たす開集合を選ぶ』という選択公理にひっかかるステートメントを『XXXの条件を満たす開集合
の内,
の最小なものを選ぶ』とすることで選択公理の使用を避けるという工夫ができるのである.ただ,本証明ではストレートに
らを使うので,そういった工夫はせずとも選択公理は不要となっている.
さて,を示そう.
より
なので
より 左辺
右辺はOK.
として,
なる最小の順序数を改めて
とする.
が後続順序数で
なら
の最小性から
かつ
.
が極限順序数なら 定義より
だが,
の最小性から
なので
となり,矛盾してしまう.よってこのケースは実際にはなく,与式は証明された.ちなみに
ならば
なので
となり,右辺はdisjoint unionになっている.それゆえ
とすると
なる
はユニークに決まり,かつ
は
の孤立点であることになる.そこで
のなかから
を含みかつそれ以外の
の点を含まないようなもので
が最小のものが存在するので,そのような
を
と書く.あとはこの対応がone-to-oneであることが示されれば,
が高々可算であることがわかるので定理の証明は完了である.
で
としよう.
なる
がユニークに存在するが,
と仮定しても一般性を失わない.このとき
なので
の決め方から
以外の
元を含まないため,
. なので
である □
ついでに定理4.8の証明も補足しておく.これも選択公理を使わない証明となっているが,よくある証明では長さが縮小していく区間を使うがJech本はちょっと違う証明となっている.
定理4.8(Baireのカテゴリー定理) を
の稠密な開集合の可算列とする.このとき
も稠密である.
<証明>
稠密であることを示すには任意の空でない開区間と
が交わることを示せばよい.そこで次のような開区間の減少列を作ってみる:
ところでなぜこれをカテゴリー定理と呼ぶのかについて調べてみた.まず,内点をもたないような閉集合の可算和(の部分集合)を第一類と呼ぼう.第一類は割とスカスカな感じがするだろう.第一類でない部分集合を第二類と呼ぼう.えらくざっくりな定義ではある.さて,ここで第一類は本当にスカスカだろうかという問題を提起してみよう.『スカスカ=内点を持たない』と考えると『内点をもたない閉集合の可算和は内点を持たないか?』で,同値な主張としては『内点を持つ部分集合は第二類か?』となる.ところで
⇔任意の開区間と
なので,内点を持たない閉集合の可算和の補集合は,稠密な開集合の可算積となり,定理4.8からこれが稠密であることから,『
■
[集合論] Real Numbers その2(Jech本4章 p.40)
今回のネタは定理4.5『実数の中の任意の完全集合の濃度は完全集合とは,孤立点を持たない閉集合のことで,孤立点をもたないとは『任意の点のどんな開近傍もその点以外の点を含む』ことである.これと同値な定義としては,『任意の点に対して,その点に収束する点列でその点以外の点からなるものが存在する』というのがあるが,実はこの同値の証明(『開近傍』⇒『収束点列』の方向)には選択公理が必要なことが知られている.後の話の展開の都合でここでは『開近傍』での定義を孤立点をもたないという定義として採用する.
<定理4.5の証明(よくあるバージョン)>
完全集合をとする.
を区間
で区切っていくと,そのどれかには区間の内点に
の点を含む区間がある(そうでないと区間の端点が
の孤立点になるから)のでそれを
とする.ちなみに
らは完全集合でないことがあることに注意.たとえば区間
は完全集合だが,
は完全集合ではない.区間の端点が孤立点になってしまうことがあるからである.
の端点が
の孤立なら
を少し縮めて
が完全集合とできる.
が有界ならその上限
と下限
が存在し,どちらも
の点である(∵
が閉集合だから).さて,
は
の孤立点ではないので,
のそれぞれを中心とした
より小さい半径の開区間を考えれば,
なるような
が存在することがわかる.
そこで交わらない2つの閉区間を,
と定義する.ただし,先に述べたのと同じ理由で
が
の孤立点になることがあるので,そういった場合はすこし
を小さくとりなおせば,
が完全集合とできる.
についても同様である.このとき
の長さは
より小さい.
,
は
のいくらでも近くに
の点があるのでそれぞれの区間の内点に
の点が存在する.以下この区間の分割作業を続けていくと,[0,1]からなる長さ
の任意の有限列
に対して,
(ii)
(iii)
さて,
少し戻って,
とまあ,証明はできるのだがひとつ気にいらないことがある.それはこの証明ではどう見ても『選択公理を使っている』ことである.しかし,Jech本では言及していないが,調べてみると定理4.5は選択公理を仮定しなくても証明できるらしいのである.を定義するには選択公理は不要なので,定理4.5の証明に選択公理がいるかいらないかはそれなりの意味がある.上の証明で,選択公理を使っていそうなアヤシイところを検討してみよう.要は有限のところでの
の存在はよいのだが,
という対応が列挙なので(集合として)関数になっている保証がないのである.この対応が関数でなければその共通集合は作れない.
① の存在は問題ない.
② の上限
と下限
の存在は
の性質なので問題ない.
③ の選び出し部分はNGである.『存在するので一つ取ってくる』を論理式で書けるような規定にしなければならない.証明を少し修正して,ぴったり
の長さの閉区間
を考えよう.もし右の端点
が
の元であってかつ
の孤立点でないなら
としよう.右の端点が
の元であっても
の孤立点だったり,
の点でないときは
の最大元を
と定める.同様の方法で
も定める.この定義では
がユニークに決まってしまう(かつ定義を論理式で書ける)ので以下の繰り返しのステップでこの手法を使えば,選択公理は不要となる.
④ の有界閉集合
はコンパクト.いわゆるハイネ・ボレルの定理である.この定理の証明に選択公理が不要だというのは私は今回調べてみて初めて認識した.この定理の背理法での証明のプロセスを少し復習してみる.ある開被覆
が存在してこれからどんな有限個を選んでも
を被覆できないとする:
(ii) この閉区間で区切られた
(iii)
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[集合論] Real Numbers その1(Jech本4章 p.37)
さて,まずは定理4.1『実数の濃度 よくある証明は『区間の実数を小数展開して対角線論法で矛盾を導く』というものではなかろうか.しかし,この十進でも二進でもいいが『小数展開』できるという部分はなんだか気持ち悪くないだろうか? この主張は実際のところ
と言ってしまっているのである.ベキ集合は元の集合より濃度が大きい:
Jech本の定理4.1の証明はそれではない.実数の2つの性質
しか使っていないのである(さて,とわいえ例によってJech先生は証明の最後のところを読者に放り投げているので,それを補完した形で紹介する.
<定理4.1の証明>
実数 が可算だと仮定して,その可算列を
としよう.以下この列から次のように再帰的に数列
を定義する:
・,
; ここに
は
,
・; ここに
は
,
・; ここに
は
.
結局から
のような数列ができることになる.
さて,らは有界なので
が存在するが,この
は
のどれとも一致しないので矛盾であるというのである.この部分を補足する.仮に
となったとしてみる.
の定義から
であるが,この等号は実は成立せず(∵ 成立すると
となるため
の定義に反する)
.一方で,同じく上限の定義から
だがここでも等号は成立しない(∵ 成立すると
となってしまう).よって常に
が成立している.ところが
は
なるような最小の
と決めたが,すでに
があるので
でなければならないため,この操作が高々有限回
で止まってしまうので矛盾である □
さて,の証明も念のため.
を示す:
に
を対応させるとこれは
の
における稠密性より単射である.
が可算無限であることを認めると,
□
を示す:
はCantor set と呼ばれる集合
を含んでいる.具体的には
で
と表される実数である.Cantor setの構成は認めるとして,作りかたから
.
なので
□
N進小数展開を使うよりずっと見通しがいい感じである(個人の感想です).
■
[集合論] Jech本三章章末問題その2(Jech本p.34-35)
後半戦はDedekind有限性に関してだが,あまり面白い問題はなかったのでまとめ風にしてみた.まず定義:
集合がDedekind有限
に対して,上へのone-to-one写像
が存在しない.
集合がDedekind無限
に対して,上へのone-to-one写像
が存在する.
ある集合の真部分集合に対して,元の集合と一対一対応があるという直観的に正しそうな無限の定義である.Jech本での有限順序数へone-to-one写像が存在しないという(Dedekindと断らない)無限性の定義との関係を以前から知りたいと思っていたが今回の章末問題で解消できた.
まず,『有限 ⇒ Dedekind有限』(対偶は『Dedekind無限 ⇒ 無限』)である(∵証明は普通の数学的帰納法を使えばよい).この逆,『Dedekind有限 ⇒ 有限』あるいは『無限 ⇒ Dedekind無限』はどうかというと,選択公理を仮定するとこれは正しい(証明はすぐ後で).というわけで選択公理があると,Dedekindの有限・無限性は本書の有限・無限性と一致してしまう.一方,選択公理がないとこの逆向きは証明できないとのコメントがある.
<(AC)『無限 ⇒ Dedekind無限』の証明>
選択公理を仮定すると任意の集合は整列可能で,ある基数
が存在して,
.
が無限なら
で特に
なので,
は可算無限集合を含む.この可算無限集合に対しては一つずつずらし,それ以外は同じ要素を対応させる写像は
から
に対応する元を除いた真部分集合への上へのone-to-one写像になっている(問題3.14の左向き).つまり,
はDedekind無限である □
実際のところ,選択公理を仮定せずに 『:Dedekind無限 ⇔
が可算無限部分集合を含む』(問題3.14)となっている.この右辺の『
が可算無限部分集合を含む』については以前にネタに取り上げたことがあるが,
(https://kazu-fgf.hatenablog.com/entry/2022/08/04/011920)
選択公理を仮定しない場合に無限集合なのに可算無限部分集合が存在しないという奇妙なことが起こるというのを覚えておられるだろうか? それはまさに『無限 ⇒ Dedekind無限』の反例になっているというわけである.
右向き(⇒)については,テキストのヒント通り,Dedekind無限の定義を与える上へのone-to-one写像 を使って,
から始めて,
と作ればよい.以前のネタでも指摘したように,この無限操作には問題は無く,写像
があれば可算無限部分集合は再帰的に定義可能なのである.
さて,選択公理を仮定しないときにはこの2つの有限・無限性の定義は異なることが分かったとして,その優劣はあるだろうか? そもそも優劣を決める基準などは無いが,有限集合から構成されたいろいろな集合が再び有限集合であるかどうかという基準を採用してみよう.つまり集合を作り出す操作で閉じているかどうかである.
<問題3.15>
(ii)
(iii) 互いに素な Dedekind有限集合のDedekind有限個の族の和集合も Dedekind有限
<解> 問題3.14のDedekind無限と同値な条件『可算無限部分集合を含む』を使えば大体解決する.
(i)はできたものが可算無限集合を含むとすると,または
がそうなるので矛盾する.
(ii)は異なる有限列が可算無限個あるとしよう.それらの有限列からを順に今まで選んでこなかった元を選んでいく.ある有限列でいままで選んだ元しかないときはスキップして次の有限列に行く.この再帰的な作業が止まらなければ,の可算無限部分集合が作れるので矛盾.もし途中で
番目以降で元が増えなくなったとすると,すでに集めた
個の元からなる値の重ならない有限列は有限個しかないので可算無限列は途切れるはずなので矛盾である.
(iii)は和集合が可算無限集合を含むとする.族は互いに素なので可算無限集合の元それぞれにそれが属する族のインデックスが対応付けできる.ところがインデックスはDedekind有限なので,すくなくともどれか一つのインデックスに対して,可算無限回この対応が被ることになる.しかし,このことはそのインデックスに対応するDedekind有限集合が可算無限部分集合を含むことになるので矛盾である □
その直後のテキストのコメントによると,projection, ベキ集合,Dedekind有限集合の部分有限集合全体,そして (互いに素を仮定しない)Dedekind有限集合のDedekind有限個の族の和集合 はDedekind有限集合になることが選択公理なしでは証明できないとのことで,Dedekind有限集合の概念は単純な集合演算に対しても閉じていないということになる.テキストでの有限集合の定義ではこれらはすべてふたたび有限集合なので,こちらに軍配が...とはいえ有限順序数がガチガチに構成されている(ので数学的納法が使える)のが効いているでなんとも.
さて最後の問題:
<問題3.16> が無限集合なら,
はDedekind無限集合
この問題が興味深いのは,『Dedekind無限 ⇒ 無限』なので,がDedekind無限集合のとき,
はDedekind無限集合にならないことがあると先に述べたが,
は再びDedekind無限集合になるということを含意している.
<証明> ヒントにより を考えてみる.カッコの内側は
を固定すると
の元(かつ
が無限集合なので空ではない)なので,
は
の可算無限部分集合を定義している.よって
はDedekind無限集合 □