Awodey『圏論』第9章(9.1節)

ずいぶん放置していたが、リアルのお仕事が結構忙しかったのである。しかし、9章は『本書の見せ場』と著者自ら書いているところなので、こちらも書かずにはおられない。9.1節は随伴の導入という位置づけらしく、次節の定義9.6(p.242)で正式な定義がなされる…

Awodey『圏論』第8章(8.7節から)

結構早い時期に途中まで記事を書いて放置して、もうとっくにGWも終わってしまった。ゆるゆるにもほどがあるが、いつもはこんなペースである。 さて、ついにトポスの登場である。といってもちょろっと紹介されているだけではある。参考文献にトポスのバイブル…

Awodey『圏論』第8章(8.5節から8.6節)

今回はなかなか手強かったが、ゆるゆると行きたい。 命題8.7について少々コメントを。極限の存在をいきなり仮定して計算するとこうなるので定義はこうする(8.4)とよいというのは発見法的でアリなのだが、そこで証明が終わってしてしまうのでなんだか気持ち…

Awodey『圏論』第8章(8.4節まで)

8.1節の後半は代数的位相幾何学からの例だが、p.211のダイヤグラムはSimplicial Complexの説明である.圏の定義は7章のどこにあったかよくわからないが、8章末の問題4に『は有限順序数とその間の順序を保つ写像』とあるのでこれを採用すればよい.一番目の図…

Awodey『圏論』第7章その2(7.9から)

p.201の真ん中あたりの依存型理論について少々.一つの例をあげると、型INTの整数nに対してそのn次元整数ベクトル(配列)を返す関数vを考えてみる.引数に対応して値域の型がになっているので、vの型はどうしたもんかということになる.Xを型INTとして、Aの…

Awodey『圏論』第7章その1(7.8まで)

いきなりCatの余積で詰まった.積の定義はp.47にあるのだが、余積の定義は本書には見あたらないのだ.しかし、考えるとSetsと同じDisjoint Unionでいいようである.さっそくp.168の反例にあたってみる.C+CのオブジェクトはCのオブジェクトを直和成分のどち…

Awodey『圏論』第6章その3 (6.6から)

直観主義命題計算と型付きラムダ計算がCurry-Howard対応で同型になるということは計算機の世界ではよく知られているらしいが、命題6.14では直観主義命題計算にはハイティング代数、命題6.17ではラムダ計算にはデカルト閉圏に対して完全性定理が述べられてお…

Awodey『圏論』第6章その2 (6.3から6.5まで)

怒涛のように論理学関連からの例が出てくるが、6.4の随意(entailments) について一言. これはモデル理論の概念で『ある解釈Mがpを真にするならば、qも真にする』という意味である. はどんな解釈でも真にならない命題、はどんな解釈でも真になる命題の意味で…

Awodey『圏論』第6章その1(6.2まで)

本書も半分ぐらいに差し掛かってきて、難しくなってきた."証明は読者への練習問題とする"という言い回しも増えてきたような気がするが、trivialなものを除き入門書ではせめて章末の練習問題にして、略解でも載せて欲しいと思う...間違った理解のまま先に進ん…

Awodey『圏論』第5章

5章は極限と逆極限である。これまで出てきたもろもろの構成が、極限と余極限で統一される...ということだが、あまり感動はなかった...(あくまで個人の感想です)...本書で最初に知ったわけではなかったが、元を使わずに定義できるとはとても想像できなかっ…

Awodey『圏論』第4章その2

続きを調べていたが、さほど多くは見つからなかったので4章の練習問題9をちらちらながめていた。実はこれはp.90の下から3行目で言及されていたもので、そのときは例によって原著者のtalkだと思って軽く流していたのだが、練習問題ということならと取り組んで…

Awodey『圏論』第4章その1(4.1節まで)

なぜ、原著者がこの4章の内容をこの4章の位置に持ってきたかはよくわからないが、けっこうややこしいというか、こんがらかってしまいそうになる内容を今ここで述べる必要性があるとは思えない。後の構成の都合なのかもしれないが、とても初学者向けとは思え…

Awodey『圏論』第3章

(2015/12/8 p.72 下から6行目『拡張』などを追記)さっそく間違い探しです。p.61 4行目 誤『また正しい文章となる』 正『また文法的に正しい文となる』 『正しい』の原文は『well-formed』なので、もちろん"真"という意味ではないですが、誤解を避けるために…

Awodey『圏論』第2章

本章で面白かったのは、例2.8の選択公理とエピ射の分裂との関連だった。謎の多い選択公理が群や環論でおなじみの分裂の概念と等価とあって軽いショックを受けた。圏論で数学基礎論を書きなおすというような試みもこんな仕掛けがからんでくるのかもしれない。…

Awodey『圏論』第1章

前回、原書は圏論の入門書として定評あると書いたが、Amazon.com 書評で一人だけ星ひとつを付けている人がいる。曰く、『著者Steve Awodeyは、研究者としてはすぐれているが、教科書の執筆者としてはそれほどでもないぞ。うんぬん。』主張を短く言うと、『初…

Awodey 『圏論』をこっそり読む

ひさびさに数学が勉強したくなって、さてなにしようかと考えていたら、前々から勉強したかった(がMacLaneで挫折した)圏論で、入門書として定評のあるAwodeyの『Category Theory』の和訳がでたので、おお、これは幸いと買ってみた。圏論 原著第2版作者: ス…

生成言語学をこっそり中断

夏休みに続きをやろうかといろいろ調べてはいたんですが、生成文法に対する興味が急激に減退してしまいました。おそらく生成文法が目指しているところは正しい(特に言語獲得に関するプラトン問題に対して)と思われるのですが、どうも方法論としてはアレレ…

生成言語学をこっそり学ぶ(その6)

今回はちょっと横道。もうゴールデンウイーク終わっちゃいましたね。Aspects of the Theory of Syntaxを読んでいないのもどうかと思って、さらにこっそりと読んではいるのですが...Aspects of the Theory of Syntax (Massachusetts Institute of Technology.…

生成言語学をこっそり学ぶ(その5)

第2節の後半は変換規則の定義です。まずは基本変換から。は定義2.7と同じとします。 定義2.8 (I) 基本削除 。 (II) 基本置換 ただしは内部を持つとする。 (III l) 基本左付加 ただしは内部を持つとする。 ここには、 なるような最長のものとする。 (III r) …

生成言語学をこっそり学ぶ(その4)

第2節では、第1節の内容の形式化を行っています。今回は前半。定義2.1〜2.3までの内容は解析木を表現するための簡約化されたラベル付きカッコ形式(labeled bracketing)の定義です。以降、解析木は簡約化されたwell-formedなラベル付きカッコ形式とします。…

生成言語学をこっそり学ぶ(その3)

(factorの定義を修正-2013/05/02) 第1節の前半は句構造規則はさらっと飛ばした変換規則のざっくりとした説明です。後半には、変換規則を適用する前提である構造条件(structural condition)と基本変換(elementary operation)の定義があります。例として "t…

生成言語学をこっそり学ぶ(その2)

では早速、Peters,P.S, Ritchie,R.W. 『On the generative power of transformational Grammars』INFORMATION SCIENCES 6,49-83(1973)に取り掛かろうと思います。この文献は、まあ40年前のものですのでまじめに読むというよりも、これを生成言語学の勉強のと…

生成言語学をこっそり学ぶ(その1)

ゴールデンウイーク企画ということで、暇にまかせて生成言語学を勉強してみようということです。 計算論の絡みで前から興味はあったものの、なかなかきっかけがなかったのですが、新・自然科学としての言語学―生成文法とは何か (ちくま学芸文庫)作者: 福井直…

素数全書 練習問題1.17

つかみどころがわからなくて、かなり長い間考えていた問題である。 が、先日出張中の宿でいろいろやっているうちに気がついた。modulo 3 で系列を追いかけるのである。スタートの素数をPとする。P=3 でなければ、Pの3での余りは1か2である。仮にP≡1(mod 3)と…

前原昭二『数学基礎論入門』朝倉書店

以前にもちらっと参考書として挙げていた本書であるが、冬休みを利用して最初から読みなおしてみた。 昔読んだときは肝心の後半部分を流して読んでいたのだが、『数学基礎論講義をこっそり読む』が第二不完全性定理にさしかかったのでその予習のつもりである…

岩波 藤崎源二郎『体とGalois理論I』の二章章末問題50

突然だが、藤崎源二郎『体とGalois理論I』岩波書店 を読んでいたりする。これも名著という噂である。 かなり前に入手したものの積読であった。実はアルティンの『ガロア理論入門』ちくま学術文庫 を読んでいたところ、終盤の『三章 応用』で気持ち悪いギャッ…

数学基礎論講義をこっそり読む(その9)

第6講に入っていよいよ第一不完全性定理です。 お話っぽい説明が多くてサクサク進むのですが、行間を埋めつつ読み進めます。 まず p.87 の メタ定理 の証明。 ()証明のゲーデル数をとすると が成立している。(1)より、. はのモデルなので、 □ () ならば …

森田紀一『位相空間論』をこっそり読んでいた...

位相空間論 (岩波全書 331)作者: 森田紀一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1981/11/24メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (3件) を見る前から読んでみたいと思っていた岩波書店の森田紀一『位相空間論』をこっそり読んでいたわけです。…

数学基礎論講義をこっそり読む(その8)

まず p.77 定理5.6(および定理5.8)に関してです。『定理5.6 1)において表現可能な全域関数や関係は、すべて再帰的である。 2)任意の再帰的全域関数、任意の再帰的関係は、上の適当な論理式、ならびに適当な論理式でにおいて表現される。』 おおっとい…

数学基礎論講義をこっそり読む(その7)

Part Bに入りました。いよいよ算術です。なぜか新井敏康著『数学基礎論』ではPAオンリーでロビンソンの算術Qは出てきません。 算術Qで不思議なのはやはり、p.69の でしょうか。公理A4でがあるので、これは加法の交換法則の特殊なもの すら成立していないこと…