Awodey『圏論』第7章その1(7.8まで)

いきなりCatの余積で詰まった.積の定義はp.47にあるのだが、余積の定義は本書には見あたらないのだ.しかし、考えるとSetsと同じDisjoint Unionでいいようである.さっそくp.168の反例にあたってみる.C+CのオブジェクトはCのオブジェクトを直和成分のどちらに属しているかを区別したものである.射は同じ直和成分間はCの射そのもので、異なる直和成分間の射は存在しないとする.余対角関手\nablaはオブジェクトに対しては直和成分をそのままCに落とし、射に関しては同じ直和間の射はそのまま写像する.異なる直和間のオブジェクトa,b間の射は存在しないので、\nabla(a,b):Hom_{C\times C}(a,b) \to Hom_C(a,b)は空射である.これより\nabla(a,b):Hom_{C\times C}(a,b) \to Hom_C(a,b)は空射か射をそのまま移すので単射である.よって\nablaは忠実である.一方、オブジェクトaに対する射1_aは2つの直和成分のどちらのものかで区別されるので、それらはC+Cの射としては異なってるが、\nablaでの像はどちらも1_aになるため、\nablaは射について単射ではない.


7.8節にマクレーン連接定理とカット除去定理の証明方法について面白そうなコメントがあったので、Mac Laneを当ってみたがいまいちよくわからない. 恐らく\epsilon_0までの超限帰納法を使うという話かと思ったが、証明はそうは見えなかったのだ。ぱっと眺めただけなのでなんとも不正確な話なのだが...そこでの注釈で、この話は Lambek という人の仕事ということらしい...精進せねば.ところで線形論理(線型論理という説もあり)って流行らないですねぇ. 計算機関連ということで興味あるのだが、竹内先生の本は復刊しないだろうか...


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てつさんの指摘分
http://tetsuro-memo.blogspot.jp/2016/01
でほぼ尽くされていますが、いくつか補足を。


・p.176 12行目
 誤『\phi_Bが必ずしも単射ではないことをみるのは難しくない』
 正『\phi_Bがつねに単射であることをみるのは難しくない』
 原文『It is not hard to see that \phi_B is always injective』

 はっきりと誤訳です。ほぼ真逆のステートメントになってます。訳文だとそもそも、その直後の素イデアル定理云々の説明と整合がとれてません. また章末の練習問題3にもあるように実際にはこれらは同型になります.


・p.176 15行目
 誤『が準同型写像\phi_Bを伴っているとき』
 正『と準同型写像\phi_Bを合わせて』
 原文『together with the homomorphism \phi_B
 条件的な意味合いはありません。


・p.182 下から2行目
 誤『冪評価がA\times \mathcal{P}(A)上の要素かどうか(特性関数)に対応している』
 正『冪評価がA\times \mathcal{P}(A)上の特性関数に対応している』
 原文『the exponential evaluation corresponds to (the characteristic function of) the membership relation on A\times \mathcal{P}(A)

 試訳でもなんのこっちゃですが、評価関数を\epsilon:A\times \mathcal{P}(A)\to 2としたとき、2への写像はすべて特性関数と考えることができるということです.
中身は [tex:\epsilon()=\top \,\Leftrightarrow\, f(a)=\top \,\Leftrightarrow\, a\in f]となっています.


・p.184 8行目
 誤『F次の"交換法則をみたす"』
 正『Fは次の"交換法則をみたす"』