Awodey『圏論』第1章

前回、原書は圏論の入門書として定評あると書いたが、Amazon.com 書評で一人だけ星ひとつを付けている人がいる。曰く、『著者Steve Awodeyは、研究者としてはすぐれているが、教科書の執筆者としてはそれほどでもないぞ。うんぬん。』主張を短く言うと、『初学者にわからんような、いらんこと書きすぎ』というようなことで、実際、ある程度同意である。星ひとつはひどいとは思うが..。なので、ウンチクが出だしたら流して読むのがコツであろう(...と主にウンチクが書いてあるブログで述べるのもナンだが)。第1章ではp.15の注意1.7がそれだろう。いつのまに圏の同型の定義があったのか面喰った(第1章にあるのは対象間の同型の定義のみ)。
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さて、間違い探しですが、第1章は特になさそうです。と思ったら、意外なところに...練習問題の解答の中です。(ただし練習問題は全部は見てません...そこはお許しを)


p.315 3行目 『空集合\phiへの写像を考えよ;ただ一つだけ存在する.』


原文も『Consider maps into the empty set\phi; there is exactly one.』で、誤訳ではありません。
が、しかし、原文からして間違いです。 (コメント参照のこと)

集合論の重箱の隅に小さく書いてありますが:

AからBへの写像を考える。
Aが\phiのときはBがなんでも(\phiでも)AからBへの写像はただ一つだけ存在
Aが\phiでなく、Bが\phiのとき、AからBへの写像は存在しない

Awodey氏の勘違いでしょう。 上の事実は集合の圏で空集合が始対象であることを意味しています(あっウンチクだっ)。