[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その5(しょぼっと解決編) §47の[問題3]の[注意]のハマりを解決しよう。[問題3] とすれば、二次体において、とするとき、もも単項イデアルである。[注意ハマりポイント] ののどちらか片方のみに必ず有…

[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その4(ハマり編) §47の問題を続ける。[問題3]の注意でめちゃくちゃハマった。[問題3] とすれば、二次体において、とするとき、もも単項イデアルである。[解] の基本単数をとすると、[問題1]より . と…

[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その3 §47で二次体の単数の話題が終わり、直後に怒涛のごとく問題が並んでいる(pp.314-316)。今までは問題の解法の説明もそれなりに親切だったが、5章ではなぜか突き放されることが多いような気がす…

[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その2 今回はp.311の[問題3]の下にある[注意]から。これもうっかり油断していると放たれる高木先生のジャブである。 二次体の整数環とそのイデアルについて、一次合同式 は なら、のとき解が存在し、…

[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノートその1 先に本書の記述のスタイルが気に入らないというコメントをしたが、よく考えるとブルバキの『数学原論』が刊行され始めたのが1939年なのであって、『初等整数論講義』の初版は1931年なのでこれはB…

[数論]二次体の整数環の素イデアルをすべて求める(最終回 計算編) 前回の結果を再掲する。 整数環の0でない素イデアルはi) 型のイデアルであり、その存在の必要十分条件はであること。ii) 型のイデアルであり、その存在の必要十分条件は型のイデアルが存在…

[数論]二次体の整数環の素イデアルをすべて求める(素イデアルとは何ぞや編) さて、整数環の素イデアルを求める冒険を続けよう。まず、素イデアルとは何か...いやまあ、なんでこんなことを言ってるのかというと底本での定義はp.287の冒頭に、『イデアル(た…

[数論]二次体の整数環の素イデアルをすべて求める(準備編) ひさびさの更新である。あんまりまとまって数学の勉強をしていなかったのだが、つらつらと高木貞治先生の『初等整数論講義 第二版』を読んでいる。初等整数論講義 第2版作者:高木 貞治共立出版Ama…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その10 さて、すでに終盤に突入している。2.4.1節に取り組もう。ホモトピー解釈からさらに進んで、Martin-Lf型理論をホモトピー理論の論理学としたいのである。 2.4. Higher algebraic structures ホモトピー解釈によって本質的に…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その9 2.3節の後半。実際のところモデル圏であることの確認はかなり難しいようであるが、それをいったん認めて、本題である内包的型理論のモデルへと話を進めてみよう。 (2.3. Homotopical models of type theory の続き) 今や型…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その8 さて、Steve Awodey "TYPE THEORY AND HOMOTOPY"の勝手に翻訳シリーズもいよいよ佳境である。2.3節ははっきり言って急に難しくなっている。今までは何だったんだ。まずは2.3節の前半。 2.3. Homotopical models of type theo…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その7 さて、Steve Awodey "TYPE THEORY AND HOMOTOPY"の勝手に翻訳の続きである。もちろん翻訳そのものが目的ではなく中身の解読がメインである。今回は第2章 The homotopy interpretationの2.2節まで、いろいろ調べ物をしながら…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その6 いろいろぐぐっているうちに次のAwodey氏のレビューペーパーを見つけた。Steve Awodey "TYPE THEORY AND HOMOTOPY" 2010これもarXiv.orgで無料で手に入る。こんないいのがあるなら早く教えてよって感じである。全部20ページ…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その5 今回はHoTT Bookにもどってみる。このテキストは"HoTT Book"でぐぐれば公式でPDFを無料でゲットできる。さて、まだ1章のFoundationを少しずつ読み進めている段階であるが、Introductionを読み返してみるとちょっとわかった…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その3 Martin-Lfのextensional版とintensional版についてもう少し追及してみる。その後の調査では、というようなidentity typeの導入(intensional identity typeと呼ばれるそうな)があるものをintensional版と理解すればよいよう…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その2 さて、まずはMartin-Lf依存型理論というのを勉強せんといかんわけだが、調べれば調べるほどなんだかとっ散らかっている感がある。標準的な定式化というのがあるようなないような、バリエーションも多く、表記の違いなのか何…

[HoTT]HoTTをこっそり学ぶ その1 HoTT始めました。HoTTとはHomotopy Type Theoryの略語であり、またその最初のテキスト(?)である『Homotopy Type Theory Univalent Foundations of Mathematics』というタイトルの本(電子本もネットに落ちている)も指し…

[記号論理学]McCuneの群のSingle Axiom について 田中一之先生の『数学基礎論序説』が裳華房より刊行された。数学基礎論序説: 数の体系への論理的アプローチ作者: 田中一之出版社/メーカー: 裳華房発売日: 2019/06/19メディア: 単行本この商品を含むブログを…

[記号論理学]Cut-elimination Theorem について その2 さて、小ネタ第二弾である。小ネタの割に温め過ぎて、えらく時間が経ってしまった。カット除去定理の証明の記述は複雑だが、結局は証明の書き換えのアルゴリズムなのであって、構成的なところがいいので…

[記号論理学]Cut-elimination Theorem について 来春に『はてなダイアリー』がサービスを終わるとのことで、『はてなブログ』にひっこししてみた。結果、なんかTEX表示がところどころ壊れてる...め、めんどくさ。まあ、そのうち直すかもしれない。 さて、久…

ルート2の手計算

計算フアンの皆さま、こんにちは。 さて、しょうもない会議のときは私は聞いたふりしながらルート2の手計算をしていることが多い。つい最近、画期的な方法を見つけたのでご紹介したい。普通、この手の計算では逐次近似法が使われるのではないだろうか。小数…

近藤『群論』をこっそり読む その2

二章には特に目立ったミスやギャップはないと思う。 読者への挑戦は、§2.2(p.59)のを直接的に示せ、である。これもなかなか悩んだが、私の解答案は次の通り。 まず、である(これはただ二項係数の定義を書き並べればわかる)。するとであればよいことにな…

吉本・中村『現代意味論入門』をこっそり読んだ

私が記号論理学を勉強している一つの理由は言語の理解への応用である。まあ、いろいろつまみ食いをしているわけであるが、ちょっとまえに手を出していたチョムスキーも現代的な立ち位置がいま一つわからんまま(ミニマリストさっぱりわからず)で他の手法を…

近藤『群論』をこっそり読む その1

Awodeyをほったらかして、早半年。抽象的な数学の後は具体的な数学が恋しくなる。 そこで本来のこのブログのテーマであった(はずの)群論に回帰してみた。群論 (岩波基礎数学選書)作者: 近藤武出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/09/25メディア: 単行本…

Awodey『圏論』第9章(9.6節の途中から)

では、命題9.16を詳細に見ていく。まず、任意のに対して、関手の自然同型の構成の復習から。自然同型であること示すのには、補題7.11から各々の対象上で同型であることを示せばよいので、となっているかが問題となる。 添え字圏は命題8.10で構成されており、…

Awodey『圏論』第9章(9.6節の途中)

さて、本節開始直後に なる随伴の系列が紹介されているが、実際のところV,F,Rについては本書では何も(定義すら)述べられていないようだ。いろいろ調べたところ、その答えはMac Lane本の4章2節の練習問題の中にあった。 :Setsの対象(集合)に対して、その…

Awodey『圏論』第9章(9.5節)

前半はあまりコメントするところがないが、p.250の最後の"栞"はなんのこっちゃであって、ここでいう"bookkeeping"とは、全称化の規則で(次の図式はただの推論の図)、"ただしは自由変数記号でには現れないものとする。"というこの”ただし”以下の付帯条件を…

Awodey『圏論』第9章(9.4節)

念のため、前順序と半順序の違いは、半順序では、反対称律( かつ ならば )が成立している点である。ということは、前順序では順序関係がループになっているケースも許しているわけである。ちなみにテキストの骨格的(skeletal)とは、圏論用語では対象間の…

Awodey『圏論』第9章(9.3節)

例9.8の『左随伴は何であろうか?』に答えてみる。 から、問題となる図式はとなるが、下はしか射が無いので、対応する上の射も一つしかない。つまり、がの始対象である。答えは、の始対象となる。その後の『この最後の例は次の一般的な事実の明白な事例であ…

Awodey『圏論』第9章(9.2節)

さて、命題9.4である。まず注意として、原文でも似たような書き方なので罪は同じだが、条件2から条件1を言う時に、条件2の中に直接のデータとしてはは与えられておらず、すぐ下のをの定義として、これが自然変換であることを示す必要がある。それゆえp.240終…