森田紀一『位相空間論』をこっそり読んでいた...
- 作者: 森田紀一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1981/11/24
- メディア: 単行本
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前から読んでみたいと思っていた岩波書店の森田紀一『位相空間論』をこっそり読んでいたわけです。実はこの本、評判は高いものの絶版になって久しく、古書店でもあまり出回っていないようで(と思ったらAmazon.co.jpでけっこう出てますね。ひょっとして復刊される予定とか?)、幻の名著ファンの私としてはぜひ手に入れてみたかったのですが、昨年なんとヤフオクでお安くゲットするという幸運に恵まれ、こっそり読んでました。
噂にたがわず、問題の解答が載っている、反例がきちんと提示されているなど、かゆいところに手が届く名著であると納得の一品ですが、最後の8章の§31だけは別格で急激に難しくなってます。本書の発行は1981年ですが、当時の割と新しい結果が紹介されているなど、この節だけはGenaral Topologyの新しい研究内容を読者に紹介しようという意図のようです。ちなみに本節でキーになっている定理31.1は証明が省略されていますが、ここ に本文で引用されているMoritaの論文がありました。
Morita論文 p.36の証明について少々補足を。
の存在についてですが、の基底の集合(濃度)から有限個を選んで、それがの被覆になっているもの全体をとします。の任意の有限開被覆をの基底で細分しておいて、がコンパクトであることからその有限部分開被覆を選び出すとそれはの元になっています。(作り方から、の濃度は高々で、有限開被覆は基底の元からなっている。)
最後の最後に未解決と紹介されている命題は、3つある Morita conjecturesの2番目のもので、2001年にBaloghによって解決されたと英語版Wikiにあります(3つの森田予想はすべて解決済み)。蛇足ながら、1番目を解決したMary E. Rudinは解析学の教科書で有名なWalter Rudinの奥さんです。彼女は、定理29.11 『距離空間はパラコンパクトである』というStoneの定理の短くて見通しのいい証明の論文も書いています。なんと1ページしかありません。ここです。
短いですが、誤植を一つ発見。証明の最後から二行目の後ろの方で、“but, by(2),”とありますが、"but, by(1),"の誤りです。
の仮定があるので、の中心であるは(1)の仮定よりには入りません。