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[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その2
今回はp.311の[問題3]の下にある[注意]から。これもうっかり油断していると放たれる高木先生のジャブである。
解の存在については、本書の証明がそのまま使える。問題は個数の部分である。よく見ると[問題3]の証明中に「ただ一つの解」である説明も抜けている。またもや罠である。
異なる解 があると となっているので、斉次方程式 のでの解の数を数えるのと同じである。
天下りだが、を掛けるという写像 を考える。なので、になっている。また、が求めたい解の数である(∵を掛けると の中でになるの元の数が異なる解の数だから)。一方、準同型定理から
が成立する。これより、
(1)
一方、同型 も成立している(∵これも準同型定理による同型の一つ)ので、
(2)
(1)と(2)から、が得られるが、右辺がに等しいのは定理5.21(p.306)からである □
とはいえ数としては一致しているものの、という情報だけから具体的に解を構成しているわけではないのが、痛しかゆしというところ。ただ、のときは、があるので、もしなら なので、解は一つしかないことが簡単にわかる。
もう一つ p.313に
ノルムがより小さいイデアルは有限個しかない
とさらっと書かれている。蛇足ながら、ちょっとその上にとか絶対値がご丁寧に書かれているが、イデアルのノルムの規約としては非負になるように定義してあるので絶対値記号は不要そうなのであるが、整数のノルムというのをとして(たっけ?)しまうと負にもなりうる。単項イデアルのノルムとは、という関係にあるのでそんなに問題ということではないが、なんだか記号の濫用にみえる。それはさておき、イデアルの標準的基底による表現から とすると、であったから、の組が有限に制限されてしまうのでそのようなイデアルは有限個しかない(∵という条件があるため)。
そのもう少し下。
しからば は単数である
ちょと待ったー。単数は定義から整数でなければならない(p.242)。はぱっと見、整数にはみえないんですが... ちなみに で でも、は整数とは限らない。反例は など。しかし、ミソは である。これから直ちになる整数 があるから、は整数となる。