Awodey『圏論』第9章(9.3節)

例9.8の『左随伴は何であろうか?』に答えてみる。F:1 \rightleftharpoons \mathbf{C}:! から、問題となる図式は

\frac{F(*)\to C}{*\to !C}

となるが、下は1_*しか射が無いので、対応する上の射も一つしかない。つまり、F(*)\mathbf{C}の始対象である。答えは、\mathbf{C}の始対象となる。

その後の『この最後の例は次の一般的な事実の明白な事例である』とあり、なんのこっちゃという感じであるが、どうやらこの例で終対象、始対象はそれぞれ存在すれば同型という事実を言っているようである。さて、命題9.9の最後に述べられている、『これらの随伴の単元と余単元は何か?』に答えてみる。一例として、\lim_{\vec{\quad J\quad}}\dashv \Delta_Jをとりあげる。\lim_{\vec{\quad J\quad}}:\mathbf{C}^J \rightleftharpoons \mathbf{C}:\Delta_J から、図式は

\frac{\lim_{\vec{\quad J\quad}}(D)\to C}{D\to \Delta_J(C)}

となる。具体的な対応は、上の射fに対して、余極限の入射c_j:D_j\to \lim_{\vec{\quad J\quad}}(D)を合成したものとなっている。そこで、単元はこの余極限の入射そのものである。余単元は、\lim_{\vec{\quad J\quad}}\circ \Delta_J=1であることから、1_Cである。


例9.10 なにかそれらしい例である。『忘却関手の左随伴は自由な構成』という勝手に作った標語の一例にもなっている。多項式環が忘却関手の左随伴として定式化できたとしても、何かわかった気にはならない(あくまで個人の感想です。左随伴の存在に多項式環を使うのでは論点先取か?)。ただ、多変数への拡張の容易さや、代入との関係が多少はっきりする点では、少しはいけてるのかもしれない。


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・p.245 上から4行目

 誤『例えば、対角関手 \Delta:\mathbf{C}\to \mathbf{C}\times\mathbf{C}に対する左随伴はどのようなものと想像するだろうか?それは以前の例2.2であり、\Delta(C)=(C,C)であり、\Delta \dashv \timesである。これは...』
 正『例えば、対角関手 \Delta:\mathbf{C}\to \mathbf{C}\times\mathbf{C} (これは以前の例9.2のもので、\Delta(C)=(C,C)であり、\Delta \dashv \timesであった。) に対する左随伴はどのようなものと想像するだろうか? これは...』

 原文でのwhereの挿入句の和訳での位置が変で、意味が不明になってるような。