Awodey『圏論』第9章(9.2節)


さて、命題9.4である。まず注意として、原文でも似たような書き方なので罪は同じだが、条件2から条件1を言う時に、条件2の中に直接のデータとしては\etaは与えられておらず、すぐ下の\eta_c=\phi(1_{FC})\etaの定義として、これが自然変換であることを示す必要がある。それゆえp.240終わりからp.241中ごろの議論が必要となる。あと、証明の最初に誤訳が一つ(下参照のこと)。


証明を少し補足。1から2の時、\phi(g)=U(g)\circ \eta_C\phiの作り方そのものであり、\eta_c=\phi(1_{FC})は、U(1_{FC})=1_{UFC}であるから成立している。
2から1の時のp.241の中段の練習問題を解いてみる。\etaが自然変換であることは射f:C'\to Cに対して、

\begin{matrix} & \quad C' & \to^{\eta_{C'}} & UF(C') \\ f & \downarrow & & \downarrow & UF(f) \\ & C & \to^{\eta_{C}} & UF(C)  \\ \end{matrix}

が可換であることを示せばよいが、UF(f)\circ \eta_{C'}=UF(f)\circ \phi(1_{FC'}=\phi(F(f)\circ 1_{FC'})=\phi(F(f)). 一方、\psi(\eta_C \circ f)=\psi(\eta_C)\circ F(f)=\psi(\phi(1_{FC}))\circ F(f)=1_{FC}\circ F(f)=F(f)であるから、\eta_C \circ f=\phi(F(f))となるため、可換が成立している。


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・p.238下から3行目
 誤『\phiの作り方としては、任意の\etaは単に述べられたものでしかないが』
 正『与えられた\etaに対して、\phiの作り方は、まさに先に述べられたものであるが』
 原文『The recipe for \phi, given \eta is just the one stated』

文の構造から、主語は"The recipe"以外にあり得ない。それはそれとしても"given"を"任意の"と訳すのはまずいでしょう。