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[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その9
次の§49は二次不定方程式のイデアル論による再論。本テキストの本編の残りはこの話題関連である。キーになるのは対応:
である。次の段階で右辺をの整数環の中でイデアル間の関係に翻訳する。ここで一つだけ補足しておきたいのは、でないと話が始まらないのだが、テキストでははっきりとは説明がない。というか p.322の前半の議論が今一つスッキリしないのだが、ここを次のように順番を変えて整理してみた。
の平方因子をすべてに入れて、を平方因子を持たないとする。このとき、の整数環 を考えると、 となっている。
証明は次の通り:
1) のとき:
なのでの奇偶は一致する。よって、.
2) のとき:
の一方で なので、もしだとで合同になりえない。よってはで割れ、またもで割れることになる。したがって、の分子は分母ので割り切れて、の元となっている.
イデアル間の関係への翻訳は次のように進む。
・(ここが[]でないのが重要というか面倒)としたとき、.
・解の作る単項イデアルはに含まれるため、イデアルが存在して、. このとき.
解を求めるにはこの逆の手順を踏む(イデアルとの情報は与えられている)
(A)を満たすイデアルを求めること。
(B)が単項イデアルになるかどうか判定し、もしそうなら生成元 を求めること。これと同値な条件はなので、とが対等かどうか(対等ならその係数を求める)という問題になっている。
そして、補助的に
(C)なる元があったときに、ある単元との積 が の形に書けるものを探すこと。
最後の(C)が必要なのは、だが、一般的にはの元は有理整数係数による の線形和ではないからである(解として欲しいのは有理整数係数のもの。丸かっこ()は定義から有理整数ではなくて、整数係数による生成である)。
(A)は§50、(B)は§51、(C)は§52に割り当たっている。
すこし§50の内容を見てみる。
まず、最初にイデアルの標準基底による表現から、のときにの満たすべき条件を求め、最終的には中国剰余定理に還元する。しかし、これは本来やりたいことではなくて、イデアル論で解決したいらしい。これは二次体を離れて代数体に一般化したときに標準基底のようなきれいな表示方法は望めないからだと思われる。
それはさておき、この問題はすでに解決しているに等しい。を素イデアル分解して
となったとせよ。ここになる第一種(今なら完全分解)、なる第二種(今なら惰性)、および(いまなら分岐)の3種類の素イデアルに分類してある。すると
なので、の素因数分解と各々の素数の素イデアル分解の情報(完全分解か惰性か分岐か)から直ちに問題が解けることがわかる。
一般論としてはこれで終わりなのだが、高木先生はさらに各々の素イデアルの標準基底(これは以前の議論から既知)から、素イデアルの積の具体的な計算方法を[問題1~4]で探求している。いや、先生それ、二次体にもどってますやん。