鈴木『群論』の問題を解いてみる−はじめに

しばらく前に岩波から鈴木通夫『群論 上,下』が復刊されている.

群論 上

群論 上

群論 下

群論 下

実は以前に苦労して古書を手に入れてときおり眺めていたのだが,やっぱりこの本はすごい.上巻は教科書風だが,群論の大抵のことは載っているし,下巻ではFeit-Thompsonの定理や有限単純群の分類についても言及されている.無論,刊行当時の1977年ではまだ有限単純群の分類は完成していなかったし,本文中にもまだ未完成と記述されている箇所がある(復刊では何かそのことで追記があるかは確認していない).いつかは読んでみたいと思い続けていたが,なかなか手付かずであった.
 ところが,偶然にFeit-Thompsonの元論文がWebで無料で手に入ることを発見し,また昔の野望がアタマをもたげてきた.
Wikiページ "Feit-Thompson theorem"の下のリファレンスを参照)

Feit-Thompsonの証明はその部分的な解決である『奇数位数の CN群(単位元以外の元の中心化群がnilpotentになる群)は可解である』の証明を雛形としており,難解なFeit-Thompsonの証明を理解するには,そのCN群に対する証明を先に理解すべしというアドバイスが以前紹介したFT定理の解説本 Bender& Glauberman の前書きにも書かれている.CN群に対する証明の元論文は上にあげたリファレンスにあり,これも無料である.また,Gorensteinの『Finite Groups』(のかなり後半)にも証明が載っているようである.
しかし,さらに遡ると,このCN群に対する証明は,鈴木通夫によるCA群(単位元以外の元の中心化群がAbelianになる群)に対する証明を雛形としているということであるから,CA群に対する証明を読んでみることから始めるのは悪くなさそうである.鈴木通夫のオリジナル論文は1957年のものであるが,これは無料では手に入らなかった.いろいろ調べてみたが,CA群の概念そのものがより広いCN群に取って代わられているようであまり情報は見つけられなかった.そこで鈴木氏の『群論』に何かないかと調べてみたところ,まさにCA群に関する結果そのものずばりが,下巻の651ページあたりに載っているではないか!

もう,これは鈴木『群論』を読むしかない!

というようなわけで,前口上が長くなったが,復刊されたことで手に入りやすくなって読者も増えているだろうし,せっかく読むのだったら問題の解答例を作ってみることで,自分のモチベーションを高めてみようという作戦である.