特別企画 小林・益川論文を読む! −その6 最終回
さて,と結合している項は,
である.などをなどのダッシュつきで書き直したいわけであるが,混合の行列を成分表示で書くと, であるから,
となり,U(2)の元 を改めてと定義すると論文中に出てくる行列Kによる変換で,がの順に変わるので,上のの結合をつくる行列は,正にの形である.これでKM論文の計算が確認できたことになる.
一方,の項というと,今度はがという位置に現れることになる.
さて,いよいよCP対称性の問題であるが,どうやら物理学としてはCP対称性があるかないかは,実際に観測にかかる量である散乱振幅の計算を実行して比較するという手続きを踏むらしいのであるが,これはとても私の手には負えない.ここでは単純にラグランジアンレベルで見るということにする.CP変換はこの場合,具体的には,, になる.によって,という形式は,と変換されるから,結局,今の場合はCP対称であるためには, すなわち, で,が実行列であるという要請となる.無論,一般にはこれは成り立たないが,先に述べたように散乱振幅という最終結果には各々の場の位相の自由度は効かないため,この自由度を使ってを実行列にできればCP対称が成り立つことになる.
とすると,から, , ,の関係式がでる.
一方,場の位相の自由度は,という形で作用し,その行列式はとなる.
まず,とする(これによって全体にかかる位相の自由度が消える).
つぎに,それぞれとの自由度を使って,とを実にできる.最後にの自由度を使って,とできる.
結局,つまり,の形となる.
以上で計算はおしまいである.実際やってみると,これをクォーク対を3つ含む 6-pletモデルにするのは確かに同じような計算でできそうだと分かる.それよりもKN論文の最終ページにある(13)式の形を出すほうが面倒そうな気がする.これはを場の位相の自由度で割ったものであるが,の実次元は9で,位相の自由度は6であるが,位相の自由度の1つは全体の位相として消去されるため,9-(6-1)=4つの自由度が残る.しかしそのうち という1自由度だけが複素数として残り,これがCP対称性を破る可能性ということになる.
最後に感想.いやー物理って難しい...でも楽しかった.