鈴木『群論』の問題を解いてみる−第1章 §2

§2−1.
P.8のi),ii)の条件を満たすことを示す.
Hが空でないので,元x\in Hが存在するが,問題の条件よりxx^{-1}=e\in Hが分かる. 任意の元a\in Hに対して,問題の条件よりea^{-1}=a^{-1}\in Hなので,ii)が成立している.任意の2元a,b\in Hに対して,b^{-1}\in Hはすでにわかっているから,a(b^{-1})^{-1}=ab\in Hより, i) が成立する.逆にi), ii)から,題意の条件が出るのは自明である. □


§2−2.
(a) 任意の元a\in Hを取る. 条件からa^n\quad (n>0, \quad n\in \mathbb{N})の形の元はすべてHに含まれる. Gは有限群なのでaの位数は有限であるから,このベキ乗の中にe,\quad a^{-1}が含まれているので,部分群の条件 ii)も満たされている. □


(b) (a)の証明で実質使ったのは有限位数であることであるので証明は同様.  □


(c) 加法群\mathbb{Z}の部分集合 \mathbb{N}が反例のひとつ.  □


§2−3.
ヒントがごちゃごちゃしているが,(b)から(a)がでるということで,後は順に誘導に従えばよい.

(b)は有理数r,\quad sを整数の分数の形でr=a/b,\quad s=c/dと書いて,m=bc,\quad n=daとすればよい.


(a)はまず,任意の0でない有理数rをとったとき, \{nr|n\in \mathbb{Z}\}\{0\}を真に含み,\mathbb{R}に真に含まれる部分群であるから,\{0\}は極大部分群にはならない.すなわち M\neq \{0\}.
次に\mathbb{R}の元でMに入っていない元rを取る.また,Mの0でない元sを取る. (b)より,mr=nsなるm,\quad n \in \mathbb{Z}が存在するが,k=mとすれば kr=ns \in Mと題意を満たすものがとれる.


(c)M_kが部分群となるのは,Mが部分群であることから出る.つまり,s_1,s_2\in M_kks_1,ks_2\in Mk(s_1+s_2)=ks_1+ks_2\in Ms_1+s_2\in M_k. また, s\in M_kks\in Mk(-s)=-ks\in M-s\in M_k.


(d) まず,定義よりM_k\supseteq Mであるのは明らかで,(a)より,r\in M_kとなっているが,r\notin Mであったから M_kMより真に大きい. Mの極大性より, M_k=\mathbb{R}.

(e) (d)より,M_k=\mathbb{R}なので,\forall s\in \mathbb{R}(ks\in M)が成立している.任意の元a\in \mathbb{R}をとる.s=a/k\in \mathbb{R}であって,ks=k(a/k)=a\in Mとなるから,M=\mathbb{R}.   □


また,ヒントで示唆される別証明は次のとおり.(出るのは(d)ではなくて(e)のミスプリであろう)
剰余群\mathbb{R}/Mは自明でない部分群を持たないため,それは素数位数p巡回群である(定理2.24).その生成元a\mathbb{R}から選んで,\mathbb{R}/M=<\bar{a}>とする.このとき,pa\in Mが成立する.したがって,\forall s\in \mathbb{R}(ps\in M)が成立するが,s/p,\quad s\in \mathbb{R}なる形の元を考えれば, s=p(s/p)\in Mとなるため,M=\mathbb{R}なる矛盾が生じる.  □


§2−4.
(ドイツ文字のひげ文字フォントが出ないようです.)
\mathfrak{H}帰納的順序集合であることを示す.(2.27)より,任意の鎖に現れる部分群\{H_\lambda\}の和集合\cup_\lambda H_\lambdaはまた部分群となり,\forall \lambda (H_\lambda \cap X=\phi)(\cup_\lambda H_\lambda)\cap X=\phiであるから,\cup_\lambda H_\lambda\in \mathfrak{H}. すわなち\mathfrak{H}の任意の鎖が\mathfrak{H}に上界をもつから,帰納的順序集合である.\mathfrak{H}_0についても,まったく同様である.  □


§2−5.
ヒントの誘導に従う.問題4より[tex:\mathfrak{H}=\{L|K\subset M']より M'=Gとなるから Mは極大部分群である.
問題の後半は,H=\{e\}とすればよい.  □