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[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その14
§52の問題4から。今回も怒涛の文字密度である。[問題4] :
. なのでなるような単項イデアル を探すことになる。例によっての素因数の分解状況の情報が必要で、テキストでは
:惰性
:分岐
と与えられている(p.292 定理5.16)。上記の後半はからの計算である(例えば 17だと前の項から+1、後ろから-1がでるので全体で-1なので)。
を素イデアルに分解してそのノルムを考えれば、すなわち惰性の素イデアルを含むとそのノルムはになるので、はの偶数ベキを含むことになる。
次にが単項イデアルになるための条件を求める。では であることは分かっている(§45)。原始イデアルが単項イデアルでないことは、現時点での知識ではをシフトしたが基本領域に属していて、かつに一致していないことからもわかる。
さて、完全分解する有理素数に対して、なる素イデアルを考える。
ア)が単項イデアルの場合:
上記の ア)、イ)ででの分類を尽くしていて、かつ重複がないため、それぞれが必要十分条件であることがわかる。
また、分岐する有理素数に対する素イデアルがもし単項イデアルになったとするとノルムより . のときはそもそもこれに有理整数解がない(がを分解する単項でない素イデアルであった)し、のときは という単項イデアルになっている。
以上をまとめると、の原始解の存在の必要十分な条件は、を素因数分解したとき、
② タイプ(分岐)すなわち をそれぞれ高々1つしか含まず(∵それぞれで2つ以上含むと原始解でなくなる。の分解に対応する素イデアルは単項イデアルであることに注意)
③ タイプ(完全分解)のうち、タイプを含む数とを含む数の合計が偶数(積が単項イデアルになる条件)。
1) : 素因子は、タイプであるので原始解が存在する。を素イデアルに分解するには、の解が必要だが、ちょこっと計算すると が求まる。となるが、これは実は単項イデアルのはずである。答えはすでにテキストに一発で出ているのだが、ここは先の単項イデアルの生成元を計算するアルゴリズムを使ってみよう。
. シフトして、. . シフトで で確かにと対等なので単項イデアルである。モ変形は
すなわちを得る。この分母の共役が単項イデアルの生成元 となる。よって解は.
2) : で、素因子は、タイプである. テキストでを与えてもらっているので、を分解する素イデアルはとわかる。の方は再録するとである。なるようなが欲しいが、テキストでは"迅速"な方法として、謎の計算が行われている。このロジックをほぐすと次のようである。
② はでも割りきれる。∵ がを素因子に含むため。
③ よってはで割り切れる。どちらも単項イデアルなので、 なる整数が存在する。両辺のノルムを比較すると すなわち .
④ そこで となる。
3) : どちらもタイプである。
対応する素イデアルをそれぞれとする(は形はちょっと違うが既出。はよりOKである)。
続く計算も一見謎だが、解読するとこうなる。
②同様に なので、.
③そこで、.
④ 一方 . なぜなら、左辺
.
⑤ の単元はしかないので、とすると、. すなわち .
今回は別の解が から生じる可能性がある。上の結果②の共役をとれば を得る(テキストにはにプライムがついてないというミスプリがある。また、の共役は自分自身に等しい)。あとは同様の計算で、. よって、 .