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[数論]高木貞治『初等整数論講義 第二版』第五章ノート その11
§51はイデアルの問題Bを解決する。
「モ変形」の再登場。定理5.27の証明中、少しギャップがあるので補足する。
としたときに、2つの変換を続けて行ったのを行列で書くと
と元に戻っているわけだが、右辺の行列の積の部分が単位行列に等しいことが言えればいい。しかし、このことは定義からが無理数、は有理整数であったので上(上でも)線形独立なので成立している。
逆にモ変形があったときに、
もいきなりだが、逆に一旦、と定義しておいて、
なのでOKである。モ変形は逆変換があるので、とイデアルとして等しくなる。イデアルの対等でのはもとの二次体の元でよく、整数環の元である必要はないのに注意(p.300)。
テキストp.331 (3)とその共役を並べて、
の行列式を取ればテキストp.331の一番下の等式となる。
証明を反省してみると、二次体のイデアルが高々2つの元から生成されていることが、イデアルとの対等と「モ変形」を結びつけている。なので一般の代数体で似たようなことは言えそうにない...おや? そういえばたしかDedekind環のイデアルは高々2元で生成されるという事実があったような...
さて、特にが単項イデアル(なら何でもいいので)のときを考えると標準的底で書けば、なので、が単項イデアルに対等かどうかは、がに対等かどうかと同値になる。実二次体の場合は、テキストでは(記号を濫用してるのでこんがらかるが)をその簡約された二次無理数に置き換えることで、の連分数展開で終項にそれが現れるかどうかを見るというアルゴリズムになっている(p.201 定理3.4)。虚二次体の場合は、を複素平面上の基本区域に追い込んで、に等しくなるかを見るという方法になる。ちなみにテキストの参照の(§27)は(§30)の間違いかと。
[例1] ; ,
. と対等な基本区域内の複素数を求めるには、§30の方法による。ですでに基本区域内に入っている。一方、は単位円内にあり、基本区域内ではない。で、シフトすると、. まだ単位円内なのでもう一度。. シフトするとと一致するので、これで対等が示された。このプロセスから、からへのモ変形は、
すなわちを得る。
[例2] ; ,
. はすでに簡約された二次無理数なので、の連分数展開をみればよい。再びちょこっと計算の出番(拡張したままなので、行の前半の結果しか今はいらない。ノルムが整数でないのはが整数環の元ではないためなので気にしない気にしない)。
ω=1/3+1/3*√34=2.2769839649484336 ω'=1/3-1/3*√34=-1.6103172982817668 2, 5/3+1/3*√34, x/y=2, x-yω=5/3+ -1/3*√34, N(x-yω)=-1 3, 2/3+1/6*√34, x/y=7/3, x-yω=6+ -1*√34, N(x-yω)=2 1, 2/5+1/5*√34, x/y=9/4, x-yω=23/3+ -4/3*√34, N(x-yω)=-5/3 1, 3/5+1/5*√34, x/y=16/7, x-yω=41/3+ -7/3*√34, N(x-yω)=5/3 ...
展開の三行目にが出てきている。テキスト通りに.
次のp.333の附記は計算が楽しそうなので、また次回にとりあげたい。