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[集合論] 気づいてしまったシリーズ - の彼方編
Jech本を読み進めているが,次のCofinalityの節の証明でJech先生は手を抜きすぎでなかなかのギャップがある.まあ,イントロ的な章なのでこんな手抜き具合なのかもしれないが,私自身もCofinalityの定義にあまり慣れていないので何に使うのかさっぱりだし,そもそも順序数列を使った定義はめんどーである.まあ,特に時間に追われているわけでもないのでじっくり取り組んでいる.一週間ぐらい何も進まなくてもへっちゃらですわ.それでもJech本の行間の幅がちょうど今の私に絶妙で,別の本やWebを調べたりと苦しみながらも少しでも進んだときはとても楽しいですな.
シリーズの第二弾としてCofinalityの節を読み進める過程で気づいてしまったことを今回の(ぷち)ネタにしたい.
さて,Alephの定義(p.29)はこうである.『無限順序数で基数であるもの』.
一方,次のp.30には,が唐突に定義されているが,そこをよく読むと「すべてのAlephを列挙する」と書いてはあるものの,どこにその証明があっただろうか? このことを定理3.5を任意のAlephに適用しようとして気づいてしまったのである.つまり,『任意のAlephはのどこかに現れる』かどうかである(調べてみると,Kunen本には同じ旨の記載がある(補題10.19)が,証明はまったく書いていないのでさらに手抜きである).
一瞬,ウッと来たが落ち着いて証明してみよう.例によって,に現れない最小のAlephをとする.を考えるとこれは無論,集合なので,Lemmna3.4から も基数である.また作り方からである.
(i) の場合:
このときの最小性よりと書けるが,との間に基数は存在しないので,なのでの定義に矛盾する.
(ii) の場合:
の元はの最小性よりの形に書けるので,をと定義する.これは作り方から単射である.が集合であったから,置換公理からその像も集合で,は順序数となる.ちなみにならなので(∵そうでなければ が成立してしまう)は極限順序数である.ここで が成り立つことを示そう.なので,の作り方から なのは明らかであろう.逆にとしたとき,でとなるようなものが存在するが,このとき なので,が成立する.だったから,となって,の定義に矛盾する.
よって,『任意のAlephはのどこかに現れる』が証明され,一件落着である.このときの最小性よりと書けるが,との間に基数は存在しないので,なのでの定義に矛盾する.
(ii) の場合:
の元はの最小性よりの形に書けるので,をと定義する.これは作り方から単射である.が集合であったから,置換公理からその像も集合で,は順序数となる.ちなみにならなので(∵そうでなければ が成立してしまう)は極限順序数である.ここで が成り立つことを示そう.なので,の作り方から なのは明らかであろう.逆にとしたとき,でとなるようなものが存在するが,このとき なので,が成立する.だったから,となって,の定義に矛盾する.
蛇足編:ちなみに,記法としてとかなんだかわからないことになっていると思うのだが,一応テキストにはと書くと基数すなわち順序数で,と書くとorder-typeであるとしている(p.30).後者は整列順序集合の同型類という意味だが,Kunen本では両者の記法は同じく基数の意味であり,は使わないようである.Jech本でも テキストの別のところではorder-typeと言いながらOrdへの写像とか作ってるので,まあ,どっちでもいいのであろう.しかし,p.30の のカッコの中身はじゃね?と思うのだが...