■
[集合論] Cofinality その2/2(Jech本p.31)
次のLemma3.10には一応テキストに証明は付いているが,証明の概略のようなものなのでかなり苦労させられた.以下,テキストの解読結果である.<Lemma3.10> 無限基数とする.
また,この条件を満たすような最小のはである.
<証明>
()の中のcofinalな-列がある.とすればsingularなのでかつLemma3.8よりは基数である.とすれば条件をすべて満たす□
()この条件を満たすが少なくとも一つあるという仮定なので,そのうち最小なものを改めてとしておく.と定義する.
<Claim 1> は内の非減少な-列である.
<証明>
で,もし であるなら,それぞれが基数であったから,でなければならない.一方で,だから となるので矛盾する.よって非減少列である.また,もし が成立したとする(が基数なのでからであることは分かっている).このとき,であることを示そう.もし,ならばが基数であったことから,でなければならないが,これはと矛盾する.ところで が成立するような最小のをとすると,が題意の条件を満たすため,の最小性に反していることになる.よって □
<Claim 2>
<証明>
とする.だったので,を次のように定める.に対して
なのでは定義されている.さて,ここでが中へのone-to-one写像であることを示そう.とせよ.すなわち かつ .としておこう.ここに包含関係があって,となるが,これは整列集合間の順序を保つ写像となっており,でなので,はの切片である.また,かつなので真に小さい切片である.真に小さい切片と全体は順序同型にならないが,このことは仮定のと矛盾する.よってであり,はone-to-oneとなる.ちなみにテキストでは基数に対しては,集合濃度を表す絶対値記号がついていたりいなかったりとこんがらかるが,たとえばの濃度の比較と考えても,をのorder typeとして順序数の比較と考えてもこの場合はが基数なので同値となる.ただ,次にというような表記がでてきて解釈に悩むが,よくよく観察すると『基数には絶対値記号を付けなくても濃度の表記と読み替えてよい』というルールのようである.なのでなどは濃度の比較と解釈しておけばよいが,以下ではあえて絶対値記号を付けるようにしておくことにする.
次のステップでは定理3.5を使うが,これはAlephすなわち無限基数について成立する定理であることをリマインドしておく(2つ前の記事の件).さて,上のにより,.の定義からもともとだが,仮にと仮定してみよう.で(∵は基数だから),かつなるような基数が存在する.とする.だが,左辺はより等しいか大きいので,は無限基数でなければならない.すると定理3.5よりとなるが,は矛盾である.よって, □
<Claim 3>
<証明>
-列 にとして,Lemma3.7(ii)を適用すると, □
さて,であったから,がsingularであることが証明された.また()の証明に使った列があるので,の最小性よりとなるが,さきの不等式と合わせて がわかる □
ここでテキストのコメントがあり,5章でのKönigの定理への期待が高まるが,その定理の系として次の定理は出るらしいのだが,ここでは独立に証明するとのこと.
<Theorem 3.11> を無限基数とするとき,
<証明>
定理のステートメントにおける不等号は濃度の不等号である.定数関数を考えれば,なので,と仮定してみよう.これは,からへの関数がの元とone-to-one対応しているということなので,その対応を と表記する.そうしておいて,以下にに属さないような関数を構成することで矛盾を導くが,要するにこれは対角線論法の類似品である.
cofinalityを与える列をとして,
この上のカッコの中が空でない(少なくとも一つのが,カッコ内の性質を満たす)のは, なので,となり,左辺に属さないの元が存在するためである.このように定義されたはどのとも異なる.なぜなら,もしなら,なるようにを選ぶと,定義から なので,特にととると.これはに矛盾する□
テキストの締めくくりのコメントは,weakly inaccessible cardinalがどれぐらいでかいかというような話である.が極限かつregularなcardinalとしたとき,.ここに2つ目の等式は,としたとき,なので,.逆向きは としたとき,と定義すれば,は単調増加な列であり,となるため,.またなので(∵ 超限帰納法による.のとき なので .のとき,より が従う).
は定義からnormal(p.22)なので,いくらでも大きなfixed point をもつ(問題2.7)が,それがいつregularになるのかが問題とのこと.ちなみにテキストにはこのfixed pointの最小のものが次のように与えられているが,作り方からわかるようにそのcardinalityは残念ながらである.
つまりは である.これがfixex pointであることを示すのに,自明でない だけを示すと,左辺に属する元は有限回で打ち切ったのどれかの元に属するでと書けるため,明らかにの元となる.最小性は,もしなら.以下繰り返せばが出る.
以上のことから,weakly inaccessible cardinalが存在するなら,既に途方もなく大きなよりさらに大きいということになる.