[集合論] Cofinality その1/2(Jech本p.31)

 お次はcofinality(共終数)である.定義は割と簡単ではあると思うが,そもそもなんでこんなものを定義するのかという動機は本章では何も書かれていない.ちょろっと調べてみると基数のベキ 2^{\aleph_\alpha}がどれくらい大きいか(小さいか)が,\aleph_\alphaのcofinalityで制御されるというような話らしい.GCH(一般連続体仮説)と関連するもののようだ.

まずは関連する定義から:
 \alphaを極限順序数,\betaを極限順序数として\alphaの中の単調増加する\beta-列 < \alpha_\xi \in \alpha:\xi < \beta > としたとき

 < \alpha_\beta > \alphaの中でcofinal(共終) \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} lim_{\xi \to \beta}\ \alpha_\xi=\alpha

また,類似した定義として,集合A \subset \alphaに対して,
A\alphaの中でcofinal(共終) \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ A=\alpha

そこで,\alphaのcofinality cf\ \alphaを次に様に定義する:

cf\ \alpha=min\{\beta:\mbox{極限順序数であり,}\alpha\mbox{の中のcofinalな}\beta\mbox{-列が存在する}\}

なんじゃらほいという定義だが,上の\{\}の中が空でないのは, < \xi:\xi < \alpha > というcofinalな\alpha-列がある.ゆえに cf\ \alpha \le \alphaである.
 テキストにあげられた例 cf (\omega+\omega)=\omegaを示そう.\omega-列  < \omega+n:n < \omega > により,cf (\omega+\omega) \le \omega
となるが,有限順序数では明らかにcofinalな列がないので,等号が成立する.もうひとつ cf (\aleph_\omega)=\omega\omega-列  < \omega_n:n < \omega > がある.

 さて,ここまでで私の大きな疑問は無限順序数\alphaならcf\ \alpha=\omegaじゃないんですか? である.\alphaがとてつもなく大きいと可算列では指し示せない可能性はありそうだが,その実例が見たいということである.果たして,テキストはそれに答えてくれるのか,先に進んでみよう.私にとっては cofinalityは新しい概念なので,丁寧にやってみる.

Lemma 3.6 cf(cf\ \alpha)=cf\ \alpha

<証明> テキストの証明がやや謎めいているが,以下のようなロジックである.
cf\ \alpha=\betaとして < \alpha_\xi \in \alpha:\xi < \beta > \alphaの中のcofinalな\beta-列とする.またcf\ \beta=\gammaを与える\betaの中のcofinalな\gamma-列を < \gamma_\eta\in \beta:\eta < \gamma > とする.このとき \gamma-列を < \alpha_{(\gamma_\eta)}\in \alpha:\eta < \gamma > とすると,これは\alphaの中でcofinalとなっている(∵\gamma_\etaが単調増加であるため).cofinalityの定義から,\beta=cf\ \alpha \le \gammaでなければならないが,一方で\gamma=cf\ \beta \le \betaであったから \beta=\gamma. すなわち cf(cf\ \alpha)=\gamma = \beta=cf\ \alpha

Lemma 3.7 \alphaを極限順序数とする.

(i) A\subset \alpha かつ sup\ A=\alpha ならば cf\ \alpha \le \mbox{order-type}(A)
(ii) \beta_0 \le \beta_1 \le \cdots \le \beta_\xi \le \cdots,\ \xi < \gamma\alphaの中の順序数の非減少な\gamma-列で,lim_{\xi\to \gamma}\beta_\xi = \alphaとする.このときcf\ \gamma=cf\ \alphaとなる.

<証明>
(i) A \subset \alphaであるからAは整列集合となるのでそのorder typeが存在する.そのorder typeである順序数を\betaとすると順序同型によりA\alphaの中の\beta-列となり,sup\ A=\alphaよりcofinalとなる.よって cf\ \alpha \le \beta

(ii) \gamma=lim_{\nu\to cf\ \gamma}\xi(\nu)とする. < \beta_{\xi(\nu)}:\nu < cf\ \gamma >は非減少のcf\ \gamma-列で\alpha=lim_{\nu\to cf\ \gamma}\beta_{\xi(\nu)}となっている.ここでテキストではしれっとこの列から極限が\alphaな増加列を選び出せて,かつその指標が  \le cf\ \gammaなので,cf\ \alpha \le cf\ \gammaと結論している.しかし『部分列を選び出す』というようなアヤシイ操作は要注意である.順序数の集合A A:=\cup_{\nu < cf\ \gamma}\{\beta_{\xi(\nu)}\} \subset \alphaと定義すると,Aのorder type \le cf\ \gammaである.これは\beta_{\xi(\nu)}が同じAの元になるような\nuの集合の中から例えば最小元を選んで(選択公理不要),中への順序を保つone-to-one写像 A\to cf\ \gammaが作れるからである.ちなみに2つの順序数\alpha,\ \betaで順序を保つ中への写像\alpha \to \betaがあるなら\alpha \le \betaである.あまりどこにも載っていないみたいなので,補題として証明を付けておく.

補題\alpha,\beta \in Ord,

順序を保つ写像 \phi:\alpha\to \betaが存在する \Rightarrow \alpha \le \beta

<証明>
\betaに対する超限帰納法\beta=1のときはOK.\beta+1=\beta\cup\{\beta\}に対しては,\phiの像が\betaの中に入ってしまうと帰納法の仮定から結論が成立してしまうので,結局\alphaも継続順序数で\alpha=\alpha'\cup\{\alpha'\}\phi(\alpha')=\betaというケースが残るが帰納法の仮定から\alpha' \le \betaより,\alpha = \alpha'+1 \le \beta+1で成立する.\beta=lim_{\xi\to \beta}\ \xiのとき,\alphaが継続順序数だとその最大元の\phiでの像\xi\xi < \betaなので,帰納法の仮定から\alpha \le \xi < \betaと結論が成り立つ.残るは\alpha=lim_{\nu\to \alpha}\ \nuの場合だが,\phi(\nu) < \betaであるため,\exists \xi < \beta(\phi(\nu) < \xi)より帰納法の仮定(と\phi\nu上に制限しても順序を保つ写像となる)から \nu \le \xi < \beta\nuの極限をとれば \alpha \le \betaとなる□ (単射という条件だけなら前に見たように \omega+1\to \omegaなどが存在する.)

さて,(ii)の続きだが,逆向きのcf\ \gamma \le cf\ \alphaを示したい.まず,\alpha=lim_{\nu\to cf\ \alpha}\ \alpha_\nuとしておいて,各\nu < cf\ \alpha \le cf\ \gamma \le \gamma(二番目の不等式は先に示した)に対して,lim_{\xi\to \gamma}\ \beta_\xi = \alphaであったから,\alpha_\nu < \beta_\xi < \alphaなる\xiが存在するが,同時に\forall\tau < \nuに対して,\xi(\tau) < \xiも満たすようにする.\xiを大きくすればいつでもこの2つの条件を満たせるような\xiが存在するので,それら中で最小のものを改めて\xi'(\nu)と書こう(テキストと記号を変えた).\alpha_\nu < \beta_{\xi'(\nu)} < \alphaなので \nu\to cf\ \alphaでは \beta_{\xi'(\nu)} \to \alphaである.ただ,この列は単調増加ではないこともあるが,実はそこは重要ではなくて,示したいのは\xi'(\nu)\to \gammaである.作り方から\xi'(\nu)は単調増加列なので,これが言えると直ちにcf\ \gamma \le cf\ \alphaとなる.ところでいまさらの注意だが,\alphaが極限順序数で列\beta_\gamma\alphaの中にあるのでいきなり\beta_\gamma=\alphaというような値は取れない.一方でlim_{\xi\to \gamma}\beta_\xi = \alphaということは列\beta_\gammaは単調ではないが極限として\alphaに近づいていっているという描像である(解析学とのアナロジーが適切かどうはともかく形式的には同じである).さて,\xi'(\nu)\to \gammaでないとすると,\forall\nu (\xi'(\nu) \le \eta < \gamma)となるような\etaが存在する.一方で,\forall\nu (\beta_\xi'(\nu) \le \beta_\eta < \alphaとこちらも頭打ちになるが,これは\beta_{\xi'(\nu)} \to \alphaと矛盾する□

さて,\aleph_\alpha:regular \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} cf\ \omega_\alpha = \omega_\alpha とし,そうでないとき(cf\ \omega_\alpha < \omega_\alphaのとき)singularと定義する.先の私の疑問は\omegaより大きい regularなcardinalの例を見せてくださいということであったが...まずいですなこれは...テキストのちょっと先(p.33)に"existence of (weakly)inaccessible cardinals is not provable in ZFC"とコメントされていて,(weakly)inaccessible=uncountable regular limit cardinalなので,そんな例の存在はZFCでは示せないということですか(これは私の誤解であることはのちに)...残念.さらにもう完全に蛇足な情報として,Kunen本には訳者のコメントがあって,

 Gitik: All uncountable cardinals can be singular, 1980

という文献で,ある巨大基数公理の無矛盾の仮定において,ZFとすべての無限基数のcofinaliry が \omegaであることが矛盾しないという結果が得られているとのこと.Jech先生もこの結果は知っているはずだが,巻末の文献表にもないのであまりZFC以外のことはテキストとしては触れない方針なのかもしれない.ただ,選択公理があっても(weakly)inaccessible cardinalの存在を示せないということから,もっと公理(巨大基数とか)を追加したくなるのは分かる気がする.テキストでもPart IIの中に巨大基数がテーマの章がある(そういえば,いつ買ったのか Kanamori本がうちの本棚に死蔵されている.今パラパラと見てみたが...これはまだまったく読めないですな).

いろいろガッカリ感はあるが,続けよう.

<Lemma3.8> 任意の極限順序数\alphaに対して,cf\ \alphaはregularな基数である.

<証明> \alphaが基数でないとき,|\alpha|\to \alphaという全単射があるが,|\alpha|の基数を\alpha'としたとき,\alpha' < \alphaである.このときテキストで示唆されているように \alpha'-列で\alphaの中でcofinalなものが存在すれば,cf\ \alpha \le \alpha' < \alphaとなる.記号が同じ\alphaなので紛らわしいが,cf(cf\ \alpha)=cf\ \alphaであったので,cf\ \alphaに対して今証明したことを適用すれば,cf\ \alphaは基数でなければならないことになる.そしてもちろんregularである.さて,『\alpha'-列で\alphaの中でcofinalなものが存在する』が残っている.全単射\psi:\alpha'\to alphaとする.単調写像f:\alpha' \to \alphaを次のように定める.(Kunen本からの借用)

f(0)=\psi(0),\ f(\xi)=max(\psi(\xi),sup_{\eta < \xi}\{f(\eta)+1\})

これが単調なのは後ろのsup項の中で+1しているためで,また\alphaからはみ出ないのは\alphaが極限順序数という仮定からである.これがcofinalであるのは,任意の\nu < \alphaに対して,\xi:=\psi^{-1}(\nu)とすれば,定義より明らかに,f(\xi) \ge \psi(\xi)=\nuだからである□

用語の定義:\kappaを極限順序数,部分集合X\subset \kappaとしたとき,

X:bounded \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ X < \kappa
X:unbounded \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ X = \kappa

<Lemma3.9> \kappaを基数とする.

(i) X\subset \kappaかつ |X| < cf\ \kappa \Rightarrow \ \kappa:bounded
(ii) \lambda < cf\ \kappa,\ f:\lambda\to \kappa \Rightarrow ran(f):bounded

<証明>
(i) Lemma3.7の(i)からもしXがunboundedすなわちsup X=\kappaならcf\ \kappa \le \mbox{order-type}(X)となるが,これは仮定|X| < cf\ \kappaに矛盾する□

(ii) X:=ran(f) \subset \kappaf:\lambda \to X全射なので,|X| \le \lambda(読者注:全射が存在するときの濃度比較は逆像から一つ選んで単射をつくるプロセスがあるので,一般的には選択公理が必要となると思う.ただ順序数を相手にしている場合は逆像の最小元で指定できるので本件では選択公理はいらない).仮定と合わせて|X| \le \lambda < cf\ \kappaなので(i)より直ちにX=ran(f):bounded

ここでテキストにコメントがあり,いくらでもでかいsinglarな基数が存在し,(例:cf\ \aleph_{\alpha+\omega}=\omega)また,選択公理のもとで \aleph_{\alpha+1}がregularであることを5章で扱うそうである.あれれ? ああそうか.私の欲しかった例はここにありました.cf\ \aleph_1=\aleph_1 > \omegaだからこれでいいですね.先の weakly inaccessible cardinalの存在がZFCで示せないというのは,weakly inaccessible cardinalの定義に limit cardinalという条件があるので上の結果とは矛盾せず,単に私の早とちりであったわけです.といっても\aleph_1自体まだ正体不明ではあるわけですが...