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[集合論] Jech本三章章末問題その1(Jech本p.34)
やってみて気になった問題を解説する.<問題3.5>
左辺でがAlephのたびにに戻るのに対して右辺のベキは単調増加だから評価ガバガバやんと思っていたのだが,みたいな不動点はを含め無限に存在するので逆にイケてる不等式なんじゃないかと,証明した後で気が付いた.
<証明>
に対する超限帰納法.のときは成立している.のとき,の順序がどうなっているかを見てみると
(最後のはの元ではないが,始切片であることを表した).これを順序数の和で表現すると,
となる.帰納法の仮定とを使うと,
となりOKである.であるとき,が始切片であることから,.一方,帰納法の仮定からで左辺の極限を取れば,が成立する □
<問題3.6> Ordのすべての有限列のクラスに整列順序を入れて,すべての順序数に対して,の中の全ての有限列の集合が,始切片となりかつその順序タイプがになるものがある.
どうせならその整列順序の定義も書いておいてよ,と思うのだが.での経験から,有限列のmax値でまず順序を付けて,その中では辞書式順序でいけるだろうか.整列性については,それぞれの有限列のmax値の最小値が存在するので,その最小値を取る有限列の集合を辞書式順序でみたとき,列の1番目の最小値を与える列の中から,二番目の最小値を与える列の中から...と調べていくが...あーこれはだめだ.0がn個続いて,1で終わる有限列のnを全て動かして集めた集合には最小元がない.そこでちょっと修正して,max値の小さいもの,列の短いもの,最後は辞書式に並べよう.これならば,整列順序である.
<証明>
まず,一般的にの中に値を取る有限列が上の順序で,となっているのはほぼ自明であろう(∵最初にmax値で大小が決まるため).よって問題の始切片の部分は示された.
後半部だが,をと定めれば,は順序を保つ写像なので,であることは分かる.のときは有限順序数の有限列の全体はに順序同型になるとほぼ同じ論法で,は成立している.この等号が成立しないつまり,となっている最小の順序数をとしておく(ただ,以下の証明では最小性は微妙に使っていない).上の不等号から,はの始切片なので,それはのある始切片に対応する.その始切片を定義する有限列をとしよう.すなわち.この右辺の集合濃度を評価する.とするとでなるような無限基数があるとしてよい.一方,.右辺は集合としては に等しく,その濃度は.ところが定理3.5から,なので .しかし,これはに矛盾する □
以下の問題で次の用語を使う:
ここでさらっと選択公理を仮定すると
と述べられている.逆像から選択公理で一つ元を選べば,なる単射が得られるのでこれは正しい.テキストではこれに続いて,選択公理なしにはこのことは証明できないと述べている.これは選択公理を仮定しないZF公理系で上のステートメントが成立しないモデルが作れるという意味だが,今は深追いは避けておこう.
<問題3.7> がのprojection ならば
<証明>
なんだかすでに上で証明してしまった感はあるが,選択公理の仮定が無くても projection の逆像から最小元を選べばよい □
<問題3.8> の有限部分集合の全体の集合濃度は
<証明>
問題3.6からの有限部分列の集合の全体(と書く)の集合濃度はとわかっている.任意の有限列から要素を集めて有限集合を作れば,有限列全体の集合(と書く)から有限部分集合全体の集合への全射が得られる.つまり,から全射が入るので 問題3.7から. 一方,の元を一つの元からなら部分集合だと思えば,単射 が存在するので, □
<問題3.9> がのprojection ならば
<証明>
を全射とする.に対して,を対応させる写像は単射である(∵が全射なので ) □
<問題3.10> はのprojectionである.
<証明>
ヒントがなかなか難しい.定理3.5からなので,の代わりにを考慮する.写像 を構成するのだが,でが整列順序関係を与えるものに対しては,そのorder-typeをとし,そうでないようなには(なんでもいいので)としておく.
さて,この像がに一致することを示したい.まず,作り方から像になっているorder-typeの順序数の濃度は高々である.なので,でなければならず は明らか.逆に任意のなる順序数 の濃度は基数の定義から なので,単射が存在する.の整列順序の構造をに入れれば,(の部分集合)上に整列順序関係が定義されるが,作り方から なので題意が証明された □
<問題3.11> .
<証明> 問題3.10と問題3.9から .一方,なので題意の不等式が成立する □
<問題3.12> を非加算な極限基数とすると,.
<証明> と書いて,とする.は必ずしも基数とは限らないので,が成立するように を定めると かつ となっている(∵後半はが極限順序数であることを使った).-列は非減少列で,Lemma3.7 (ii)より,.左辺は なので題意が証明された □
<問題3.12>(ZF) は可算個の可算集合族の和集合ではない.
本文で示唆されていたが,これと同じステートメントをで主張するには選択公理が必要ということである.
<証明> ヒントに従う.で,各 が高々可算集合としよう.をのorder-typeとする.とすると である(∵もし なら だが,は高々可算な順序数なので無論これは成立しない).ここで からの写像をに対して,もしならばに対応するの元,そうでないときはとすれば,条件からが全射であることがわかる.一方で,はの部分集合で (定理3.5)であるから結局(対応していない元は適当に0に写像すれば)からへの全射が得られる.問題3.7より が得られるがこれは矛盾である □
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[集合論] Cofinality その2/2(Jech本p.31)
次のLemma3.10には一応テキストに証明は付いているが,証明の概略のようなものなのでかなり苦労させられた.以下,テキストの解読結果である.<Lemma3.10> 無限基数とする.
また,この条件を満たすような最小のはである.
<証明>
()の中のcofinalな-列がある.とすればsingularなのでかつLemma3.8よりは基数である.とすれば条件をすべて満たす□
()この条件を満たすが少なくとも一つあるという仮定なので,そのうち最小なものを改めてとしておく.と定義する.
<Claim 1> は内の非減少な-列である.
<証明>
で,もし であるなら,それぞれが基数であったから,でなければならない.一方で,だから となるので矛盾する.よって非減少列である.また,もし が成立したとする(が基数なのでからであることは分かっている).このとき,であることを示そう.もし,ならばが基数であったことから,でなければならないが,これはと矛盾する.ところで が成立するような最小のをとすると,が題意の条件を満たすため,の最小性に反していることになる.よって □
<Claim 2>
<証明>
とする.だったので,を次のように定める.に対して
なのでは定義されている.さて,ここでが中へのone-to-one写像であることを示そう.とせよ.すなわち かつ .としておこう.ここに包含関係があって,となるが,これは整列集合間の順序を保つ写像となっており,でなので,はの切片である.また,かつなので真に小さい切片である.真に小さい切片と全体は順序同型にならないが,このことは仮定のと矛盾する.よってであり,はone-to-oneとなる.ちなみにテキストでは基数に対しては,集合濃度を表す絶対値記号がついていたりいなかったりとこんがらかるが,たとえばの濃度の比較と考えても,をのorder typeとして順序数の比較と考えてもこの場合はが基数なので同値となる.ただ,次にというような表記がでてきて解釈に悩むが,よくよく観察すると『基数には絶対値記号を付けなくても濃度の表記と読み替えてよい』というルールのようである.なのでなどは濃度の比較と解釈しておけばよいが,以下ではあえて絶対値記号を付けるようにしておくことにする.
次のステップでは定理3.5を使うが,これはAlephすなわち無限基数について成立する定理であることをリマインドしておく(2つ前の記事の件).さて,上のにより,.の定義からもともとだが,仮にと仮定してみよう.で(∵は基数だから),かつなるような基数が存在する.とする.だが,左辺はより等しいか大きいので,は無限基数でなければならない.すると定理3.5よりとなるが,は矛盾である.よって, □
<Claim 3>
<証明>
-列 にとして,Lemma3.7(ii)を適用すると, □
さて,であったから,がsingularであることが証明された.また()の証明に使った列があるので,の最小性よりとなるが,さきの不等式と合わせて がわかる □
ここでテキストのコメントがあり,5章でのKönigの定理への期待が高まるが,その定理の系として次の定理は出るらしいのだが,ここでは独立に証明するとのこと.
<Theorem 3.11> を無限基数とするとき,
<証明>
定理のステートメントにおける不等号は濃度の不等号である.定数関数を考えれば,なので,と仮定してみよう.これは,からへの関数がの元とone-to-one対応しているということなので,その対応を と表記する.そうしておいて,以下にに属さないような関数を構成することで矛盾を導くが,要するにこれは対角線論法の類似品である.
cofinalityを与える列をとして,
この上のカッコの中が空でない(少なくとも一つのが,カッコ内の性質を満たす)のは, なので,となり,左辺に属さないの元が存在するためである.このように定義されたはどのとも異なる.なぜなら,もしなら,なるようにを選ぶと,定義から なので,特にととると.これはに矛盾する□
テキストの締めくくりのコメントは,weakly inaccessible cardinalがどれぐらいでかいかというような話である.が極限かつregularなcardinalとしたとき,.ここに2つ目の等式は,としたとき,なので,.逆向きは としたとき,と定義すれば,は単調増加な列であり,となるため,.またなので(∵ 超限帰納法による.のとき なので .のとき,より が従う).
は定義からnormal(p.22)なので,いくらでも大きなfixed point をもつ(問題2.7)が,それがいつregularになるのかが問題とのこと.ちなみにテキストにはこのfixed pointの最小のものが次のように与えられているが,作り方からわかるようにそのcardinalityは残念ながらである.
つまりは である.これがfixex pointであることを示すのに,自明でない だけを示すと,左辺に属する元は有限回で打ち切ったのどれかの元に属するでと書けるため,明らかにの元となる.最小性は,もしなら.以下繰り返せばが出る.
以上のことから,weakly inaccessible cardinalが存在するなら,既に途方もなく大きなよりさらに大きいということになる.
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[集合論] Cofinality その1/2(Jech本p.31)
お次はcofinality(共終数)である.定義は割と簡単ではあると思うが,そもそもなんでこんなものを定義するのかという動機は本章では何も書かれていない.ちょろっと調べてみると基数のベキ がどれくらい大きいか(小さいか)が,のcofinalityで制御されるというような話らしい.GCH(一般連続体仮説)と関連するもののようだ.まずは関連する定義から:
を極限順序数,を極限順序数としての中の単調増加する-列としたとき
また,類似した定義として,集合に対して,
そこで,のcofinality を次に様に定義する:
なんじゃらほいという定義だが,上のの中が空でないのは,というcofinalな-列がある.ゆえに である.
テキストにあげられた例 を示そう.-列 により,
となるが,有限順序数では明らかにcofinalな列がないので,等号が成立する.もうひとつ は -列 がある.
さて,ここまでで私の大きな疑問は無限順序数ならじゃないんですか? である.がとてつもなく大きいと可算列では指し示せない可能性はありそうだが,その実例が見たいということである.果たして,テキストはそれに答えてくれるのか,先に進んでみよう.私にとっては cofinalityは新しい概念なので,丁寧にやってみる.
Lemma 3.6
<証明> テキストの証明がやや謎めいているが,以下のようなロジックである.
としてをの中のcofinalな-列とする.またを与えるの中のcofinalな-列をとする.このとき -列をとすると,これはの中でcofinalとなっている(∵が単調増加であるため).cofinalityの定義から,でなければならないが,一方でであったから . すなわち □
Lemma 3.7 を極限順序数とする.
(ii) をの中の順序数の非減少な-列で,とする.このときとなる.
<証明>
(i) であるからは整列集合となるのでそのorder typeが存在する.そのorder typeである順序数をとすると順序同型によりはの中の-列となり,よりcofinalとなる.よって □
(ii) とする.は非減少の-列でとなっている.ここでテキストではしれっとこの列から極限がな増加列を選び出せて,かつその指標が なので,と結論している.しかし『部分列を選び出す』というようなアヤシイ操作は要注意である.順序数の集合をと定義すると,のorder type である.これはが同じの元になるようなの集合の中から例えば最小元を選んで(選択公理不要),中への順序を保つone-to-one写像 が作れるからである.ちなみに2つの順序数で順序を保つ中への写像があるならである.あまりどこにも載っていないみたいなので,補題として証明を付けておく.
<補題>,
<証明>
に対する超限帰納法.のときはOK.に対しては,の像がの中に入ってしまうと帰納法の仮定から結論が成立してしまうので,結局も継続順序数ででというケースが残るが帰納法の仮定からより,で成立する.のとき,が継続順序数だとその最大元のでの像はなので,帰納法の仮定からと結論が成り立つ.残るはの場合だが,であるため,より帰納法の仮定(とを上に制限しても順序を保つ写像となる)から .の極限をとれば となる□ (単射という条件だけなら前に見たように などが存在する.)
さて,(ii)の続きだが,逆向きのを示したい.まず,としておいて,各(二番目の不等式は先に示した)に対して,であったから,なるが存在するが,同時にに対して,も満たすようにする.を大きくすればいつでもこの2つの条件を満たせるようなが存在するので,それら中で最小のものを改めてと書こう(テキストと記号を変えた).なので では である.ただ,この列は単調増加ではないこともあるが,実はそこは重要ではなくて,示したいのはである.作り方からは単調増加列なので,これが言えると直ちにとなる.ところでいまさらの注意だが,が極限順序数で列がの中にあるのでいきなりというような値は取れない.一方でということは列は単調ではないが極限としてに近づいていっているという描像である(解析学とのアナロジーが適切かどうはともかく形式的には同じである).さて,でないとすると,となるようなが存在する.一方で,とこちらも頭打ちになるが,これはと矛盾する□
さて, とし,そうでないとき(のとき)singularと定義する.先の私の疑問はより大きい regularなcardinalの例を見せてくださいということであったが...まずいですなこれは...テキストのちょっと先(p.33)に"existence of (weakly)inaccessible cardinals is not provable in ZFC"とコメントされていて,(weakly)inaccessible=uncountable regular limit cardinalなので,そんな例の存在はZFCでは示せないということですか(これは私の誤解であることはのちに)...残念.さらにもう完全に蛇足な情報として,Kunen本には訳者のコメントがあって,
Gitik: All uncountable cardinals can be singular, 1980
という文献で,ある巨大基数公理の無矛盾の仮定において,ZFとすべての無限基数のcofinaliry が であることが矛盾しないという結果が得られているとのこと.Jech先生もこの結果は知っているはずだが,巻末の文献表にもないのであまりZFC以外のことはテキストとしては触れない方針なのかもしれない.ただ,選択公理があっても(weakly)inaccessible cardinalの存在を示せないということから,もっと公理(巨大基数とか)を追加したくなるのは分かる気がする.テキストでもPart IIの中に巨大基数がテーマの章がある(そういえば,いつ買ったのか Kanamori本がうちの本棚に死蔵されている.今パラパラと見てみたが...これはまだまったく読めないですな).
いろいろガッカリ感はあるが,続けよう.
<Lemma3.8> 任意の極限順序数に対して,はregularな基数である.
<証明> が基数でないとき,という全単射があるが,の基数をとしたとき,である.このときテキストで示唆されているように -列での中でcofinalなものが存在すれば,となる.記号が同じなので紛らわしいが,であったので,に対して今証明したことを適用すれば,は基数でなければならないことになる.そしてもちろんregularである.さて,『-列での中でcofinalなものが存在する』が残っている.全単射をとする.単調写像を次のように定める.(Kunen本からの借用)
これが単調なのは後ろの項の中で+1しているためで,またからはみ出ないのはが極限順序数という仮定からである.これがcofinalであるのは,任意のに対して,とすれば,定義より明らかに,だからである□
用語の定義:を極限順序数,部分集合としたとき,
<Lemma3.9> を基数とする.
(ii)
<証明>
(i) Lemma3.7の(i)からもしがunboundedすなわちならとなるが,これは仮定に矛盾する□
(ii) では全射なので,(読者注:全射が存在するときの濃度比較は逆像から一つ選んで単射をつくるプロセスがあるので,一般的には選択公理が必要となると思う.ただ順序数を相手にしている場合は逆像の最小元で指定できるので本件では選択公理はいらない).仮定と合わせてなので(i)より直ちに □
ここでテキストにコメントがあり,いくらでもでかいsinglarな基数が存在し,(例:)また,選択公理のもとで がregularであることを5章で扱うそうである.あれれ? ああそうか.私の欲しかった例はここにありました.だからこれでいいですね.先の weakly inaccessible cardinalの存在がZFCで示せないというのは,weakly inaccessible cardinalの定義に limit cardinalという条件があるので上の結果とは矛盾せず,単に私の早とちりであったわけです.といっても自体まだ正体不明ではあるわけですが...
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[集合論] 気づいてしまったシリーズ - の彼方編
Jech本を読み進めているが,次のCofinalityの節の証明でJech先生は手を抜きすぎでなかなかのギャップがある.まあ,イントロ的な章なのでこんな手抜き具合なのかもしれないが,私自身もCofinalityの定義にあまり慣れていないので何に使うのかさっぱりだし,そもそも順序数列を使った定義はめんどーである.まあ,特に時間に追われているわけでもないのでじっくり取り組んでいる.一週間ぐらい何も進まなくてもへっちゃらですわ.それでもJech本の行間の幅がちょうど今の私に絶妙で,別の本やWebを調べたりと苦しみながらも少しでも進んだときはとても楽しいですな.
シリーズの第二弾としてCofinalityの節を読み進める過程で気づいてしまったことを今回の(ぷち)ネタにしたい.
さて,Alephの定義(p.29)はこうである.『無限順序数で基数であるもの』.
一方,次のp.30には,が唐突に定義されているが,そこをよく読むと「すべてのAlephを列挙する」と書いてはあるものの,どこにその証明があっただろうか? このことを定理3.5を任意のAlephに適用しようとして気づいてしまったのである.つまり,『任意のAlephはのどこかに現れる』かどうかである(調べてみると,Kunen本には同じ旨の記載がある(補題10.19)が,証明はまったく書いていないのでさらに手抜きである).
一瞬,ウッと来たが落ち着いて証明してみよう.例によって,に現れない最小のAlephをとする.を考えるとこれは無論,集合なので,Lemmna3.4から も基数である.また作り方からである.
このときの最小性よりと書けるが,との間に基数は存在しないので,なのでの定義に矛盾する.
(ii) の場合:
の元はの最小性よりの形に書けるので,をと定義する.これは作り方から単射である.が集合であったから,置換公理からその像も集合で,は順序数となる.ちなみにならなので(∵そうでなければ が成立してしまう)は極限順序数である.ここで が成り立つことを示そう.なので,の作り方から なのは明らかであろう.逆にとしたとき,でとなるようなものが存在するが,このとき なので,が成立する.だったから,となって,の定義に矛盾する.
蛇足編:ちなみに,記法としてとかなんだかわからないことになっていると思うのだが,一応テキストにはと書くと基数すなわち順序数で,と書くとorder-typeであるとしている(p.30).後者は整列順序集合の同型類という意味だが,Kunen本では両者の記法は同じく基数の意味であり,は使わないようである.Jech本でも テキストの別のところではorder-typeと言いながらOrdへの写像とか作ってるので,まあ,どっちでもいいのであろう.しかし,p.30の のカッコの中身はじゃね?と思うのだが...
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[集合論] Canonical Well-Ordering of (Jech本p.30)
本節の最終目標はテキストp.31の(3.14)というシンプルな公式である.この証明のために,クラスの積 にwell-orderingを次のように定義する.
おや? この定義は整列集合の積に対する順序付け Definition 2.23(p.24)と微妙にmaxの条件があるのが違っている.しかし,なぜこのmaxの条件が必要なのかについては特にテキストではコメントはない.別にwell-orderingであることの証明には障害はない.これが理由かな?と思われるのは,テキストのorderingでは任意のinitial segmentは集合であるが(∵maxの条件で上限が縛られるため),もしDefinition 2.23を採用すると,たとえばなどと第1要素が0でない元のinitial segmentは全て真のクラスとなってしまう.
これに関連して,テキストでのinitial segmentがであるというのもmaxのおかげである
(∵).
さて,をのinitial segmentのorder typeと定義する.
<補題>
またそれは順序同型である.
<証明>
をinitial segmentの表記する.
なのは明らかで,また右辺ではのinitial segmentなので,そのorder typeでもinitial segmentとなり,. 逆向きは今の証明から が出るからである.
残りはがontoであることだが,これは結構悩んだ.まず,を示そう.要するに像は下方向には詰まっているという意味である.なので に対応する元をとしよう.はのinitial segmentなので,の中で対応する順序数をとしよう.ならどちらも同じに順序同型なのに片方がもう一方のinitial segmentになるので矛盾.よって.最後にontoを示す.今見たようにが全部でないとすると,というような上界が存在する(像でない順序数のどれでもよい).は集合なので,も分出公理より集合となるが,それとone-to-oneに対応するは真のクラスなので,矛盾である□
記号の復習として というのは順序数番目の基数であった.
<定理>
まずのとき,で,が,,の昇順に並べられており,全体としてに順序同型であることはよいだろう.よって.さて,をなる最小の順序数としよう.集合としてで単射が入るので明らかに.ここで等号が成立しないという仮定により,.するとで,なるものがある.前回の記事の議論で は極限順序数なので,なるを選ぶ(たとえば).先の議論ではinitial segmentでなので.よって濃度としては.一方で,の最小性から,なので矛盾である(最後の不等式はが基数かつであることを使った)□
この定理の系として
がでる.証明を補足しておく.
<証明>
と仮定しておこう.と上の定理より,.もとより適当な包含写像により なので(∵和から積に入れるには とか), □
この節の最後のコメントとして,基数のベキについては選択公理が無いとですら整列集合にできるかどうかわからないとのことで,5章を待てとある.
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[集合論] Alephs(Jech本p.29)
cardinalはもともとは集合の同値類として定義されているが,その代表元を順序数から選びたいという流れである.ただし選択公理を使った議論は5章を待てということらしい.まずは順序数の中で同じcardinalityを持つもののクラスの最小元として基数(cardinal number)を定義する.テキストではこれに同値な定義として,冒頭部分に『すべての無限なcardinalは,極限順序数である』と書いてあってアレ?と思うが,この節でのcardinalとは先の順序数の基数(cardinal number)のことなのでまだ選択公理を使った一般的なcardinalの議論をしているわけではない.というわけで,このステートメントは『なる後続順序数は基数にはならない』ということを言っているだけである.この証明を補足しておく.として,を示す.対応は次の様である.
(前にも使った,ひとつずらして隙間を作る手法である)
<Lemma 3.4.>
(ii)を基数の集合とするとき,は基数である.
<証明>
(i) 任意の集合に対して,順序数を次のように定義する.
これはの濃度より大きい濃度をもつ最小の基数の意である.もちろんひょっとするとこれは空かもしれないわけだが,テキストp.29の最後に次のような説明があって,これが空でないと言っている.
”There is only a set of possible well-orderings of subsets of X. Hence there is only a set of ordinals for which a one-to-one function of into exists.”
かなりの謎の呪文だが,和訳しつつ解読を試みてみよう."There is only a set"を『は高々集合である』と解釈すれば(直訳は『ぽつんと集合がある』)数学のステートメントらしくなる.解読結果は,『の部分集合とその上に可能なwell-orderingの(部分集合とその上のwell-orderingの両方を動かしたときの)全体は高々集合である.よって,からの中へのone-to-one 関数が存在するような順序数の全体は高々集合である.』となるが,前段の数学的な記述は英文だけからでは読み取れなくて,後半から推定したものである.ここはまあ,Jech先生の手抜きであろう.英文解釈の問題はともかく,数学のステートメントとしてまとめておこう.
集合に対して,その上のwell-ordering全体の集合をと書く.が集合なのは,二項関係のうちで,well-orderingという条件(これは論理式で書ける)を満たすものなので,選出公理より集合となるからである.
① は置換公理と和集合の公理から集合である.を掛けておくのは disjointな和にしておきたかったからである.これが前半の英文の意味である.
② の元にそれと順序同型な順序数を対応させる写像は関数である.①の集合の元に対して,第二成分に射影してからを掛けるという対応も関数であり,置換定理からこの像は順序数の集合となる.これが二番目の文の意味である.
順序数からの中へのone-to-one関数はその像としての部分集合を定め,同時にの構造からにはwell-orderingの構造が入る.逆に部分集合とその上のwell-orderingが与えられると,それと順序同型となる順序数が唯一決まり,同時にからの上へのone-to-one関数が定まる.ということで,①,②によりが集合であり,真のクラスであるを尽くせないため,が空でないということがわかる.
以上より直ちに□
(ii) とする.が基数でないとすると,で,を上へのone-to-one写像とする.一方supの定義から,.この状況はCantor-Bernsteinの定理での2つの濃度の等しい集合の間に集合が挟まれている状況なので,. しかし,これはが基数であることに反する□
Lemma3.4からある基数より濃度が大きい基数が常に存在するので,その中で最小なものをと表記する.から始めて,. 極限順序数に対しては,と定義する.は順序数と見ていて,実体は同じだがは基数(集合濃度)と見ている.はいわゆる可算濃度であるが,がどんなものなのかはよくわからない.連続体仮説がZFCと独立であるので,が具体的にどうなるのか(たとえば連続体仮説を公理に入れると)はモデル依存ということになろうか.
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[集合論] Cantor-Bernsteinの定理(Jech本p.28 Theorm 3.2)
Part I 第三章に突入である.冒頭にCardinalityの定義は,正則性公理(基礎の公理)あるいは選択公理を使うとの気になる話があった.選択公理から整列可能定理の流れかと思ったが,本節ではその手法とのこと.正則性公理によるものは,調べると宇宙(Universe)の構造(すべての集合は整礎的)から,Scottのトリックにより濃度を定義するとの道筋らしいが,いまのところ私にはチンプンカンプンである.Jech本でも扱っていないように見える.ただ,Jech本でも『The Axiom of Choice』の方には何か書いてあるとの情報を得て,調査してみると11章がそのままのテーマのようである.将来のネタのひとつとしておこう(すでにポチっている.Dover本だから安いよ安いよー電子版もあるよー).さて,Cantor-Bernsteinの定理は集合の濃度の比較に関する有名な定理である.証明にはone-to-one写像を作る必要があるが,仕掛けは初等的で選択公理すら不要というなかなかすばらしい定理である.ちなみに私はよく Cantor-Bendixsonと書き間違えそうになる.
を集合として,からの上へのone-to-one写像が存在するとき
からの中への one-to-one写像が存在するとき
<定理(Cantor-Bernstein)>
<証明>Jech本の証明がえらい短いなと思ったら,『後は簡単だからできるよね』と読者に放り投げられていたので受けて立ってみよう.本文に従い,まず,セットアップの情報から問題をすこし簡単にする.
中への単射 ,が存在する.,とすると で,かつとなっているので,最初から
このとき .
(∵ は成立しており,これをで送ればが一つ増加するので普通の帰納法で証明される)
上の関係式より,が異なると であることがわかるので,写像 を
このがからの上へのone-to-one写像であることがわかれば定理の証明も完結するが,これが読者への宿題となっている.
と定義しておく.
<がone-to-oneであることの証明>
と仮定する.またはだとがすぐに出るので,(必要ならを入れ替えて)かつという場合のみが問題となる.として,. するとなので でなければならないが(∵ ),と書けて,より となるが,これは仮定に反する□
<がの上への写像であることの証明>
なら . なら は なのでいずれもである.よっての値域はに入っている.これが全射であることを示そう.を任意の元として,なら なのでである.ならば .そこで なるが存在する.このとき なので,である□