[集合論] Jech本三章章末問題その1(Jech本p.34)

 やってみて気になった問題を解説する.

<問題3.5> \Gamma(\alpha\times\alpha) \le \omega^\alpha

 左辺で\alphaがAlephのたびに\Gamma(\alpha\times\alpha)=\alphaに戻るのに対して右辺のベキは単調増加だから評価ガバガバやんと思っていたのだが,\alpha=\omega^\alphaみたいな不動点\epsilon_0を含め無限に存在するので逆にイケてる不等式なんじゃないかと,証明した後で気が付いた.

<証明>
\alphaに対する超限帰納法\alpha=0のときは成立している.\alpha+1のとき,(\alpha+1)\times(\alpha+1)の順序がどうなっているかを見てみると

\alpha\times\alpha\mbox{ の元} <  \{(x,\alpha):x\in \alpha\} < \{(\alpha,y):y\in \alpha\} < (\alpha,\alpha) ( < (0,\alpha+1) )

(最後の(0,\alpha+1)(\alpha+1)\times(\alpha+1)の元ではないが,始切片であることを表した).これを順序数の和で表現すると,

\Gamma( (\alpha+1)\times(\alpha+1) )=\Gamma(\alpha\times\alpha)+\alpha+\alpha+1

となる.帰納法の仮定と\alpha \le \omega^\alphaを使うと,

\Gamma( (\alpha+1)\times(\alpha+1) )=\omega^\alpha+\omega^\alpha+\omega^\alpha+1 \le \omega^\alpha\cdot\omega=\omega^{\alpha+1}

となりOKである.\alpha=lim_{\xi\to \alpha}\xiであるとき,\xi\times \xiが始切片W( (0,\xi) )であることから,\Gamma(\alpha\times\alpha)=lim_{\xi\to\alpha}\Gamma(\xi\times\xi).一方,帰納法の仮定から\Gamma(\xi\times\xi) \le \omega^\xi \le \omega^\alphaで左辺の極限を取れば,\Gamma(\alpha\times\alpha) \le \omega^\alphaが成立する □


<問題3.6> Ordのすべての有限列のクラスに整列順序を入れて,すべての順序数\alphaに対して,\omega_\alphaの中の全ての有限列の集合が,始切片となりかつその順序タイプが\omega_\alphaになるものがある.

 どうせならその整列順序の定義も書いておいてよ,と思うのだが.\omegaでの経験から,有限列のmax値でまず順序を付けて,その中では辞書式順序でいけるだろうか.整列性については,それぞれの有限列のmax値の最小値が存在するので,その最小値を取る有限列の集合を辞書式順序でみたとき,列の1番目の最小値を与える列の中から,二番目の最小値を与える列の中から...と調べていくが...あーこれはだめだ.0がn個続いて,1で終わる有限列のnを全て動かして集めた集合には最小元がない.そこでちょっと修正して,max値の小さいもの,列の短いもの,最後は辞書式に並べよう.これならば,整列順序である.

<証明>
まず,一般的に\alphaの中に値を取る有限列\{\alpha_i:0 \le i < n\}が上の順序で,\{\alpha_i\} < \{\alpha\}となっているのはほぼ自明であろう(∵最初にmax値で大小が決まるため).よって問題の始切片の部分は示された.
 後半部だが,\psi:\omega_\alpha \to W(\{\omega_\alpha\})\psi(\xi):=\{\xi\}と定めれば,\psiは順序を保つ写像なので,\omega_\alpha \le \Gamma(W(\{\omega_\alpha\}))であることは分かる.\alpha=0のときは有限順序数の有限列の全体は\omegaに順序同型になるとほぼ同じ論法で,\omega = \Gamma(W(\{\omega\}))は成立している.この等号が成立しないつまり,\omega_\alpha < \Gamma(W(\{\omega_\alpha\}))となっている最小の順序数を\alphaとしておく(ただ,以下の証明では最小性は微妙に使っていない).上の不等号から,\omega_\alpha\Gamma(W(\{\omega_\alpha\}))の始切片なので,それはW(\{\omega_\alpha\})のある始切片に対応する.その始切片を定義する有限列を\{\alpha_i:0 \le i < n,\ \alpha_i < \omega_\alpha\}としよう.すなわち\omega_\alpha = \Gamma(W(\{\alpha_i:0 \le i < n\}).この右辺の集合濃度を評価する.\beta:=max\{\alpha_i:0 \le i < n\}+1とすると\beta < \omega_\alpha|\beta| \le \omega_{\alpha'} < \omega_\alphaなるような無限基数\omega_{\alpha'}があるとしてよい.一方,W(\{\alpha_i:0 \le i < n\})\subset W(\{\beta\}).右辺は集合としては A:=\cup_{n=0}^{\infty} \beta^nに等しく,その濃度は|A|=\sum_{n=0}^{\infty}|\beta|^n=\sum_{n=0}^{\infty}|\omega_{\alpha'}|^n.ところが定理3.5から,\forall n > 0\ 
 (|\omega_{\alpha'}|^n=|\omega_{\alpha'}|)なので |A|=\sum_{n=0}^{\infty}|\omega_{\alpha'}|=|\omega_{\alpha'}|\cdot |\omega| \le |\omega_{\alpha'}|\cdot |\omega_{\alpha'}|=|\omega_{\alpha'}| < |\omega_\alpha|.しかし,これは\omega_\alpha=\Gamma(W(\{\alpha_i:0 \le i < n\}) に矛盾する □


以下の問題で次の用語を使う:

集合Bが集合Aのprojection \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} 全射A\to Bが存在する

ここでさらっと選択公理を仮定すると

集合Bが集合Aのprojection \Leftrightarrow |A| \ge |B|

と述べられている.逆像から選択公理で一つ元を選べば,B\to Aなる単射が得られるのでこれは正しい.テキストではこれに続いて,選択公理なしにはこのことは証明できないと述べている.これは選択公理を仮定しないZF公理系で上のステートメントが成立しないモデルが作れるという意味だが,今は深追いは避けておこう.

<問題3.7> B\omega_\alphaのprojection ならば |B| \le \aleph_\alpha

<証明>
なんだかすでに上で証明してしまった感はあるが,選択公理の仮定が無くても projection \omega_\alpha \to Bの逆像から最小元を選べばよい □

<問題3.8> \omega_\alphaの有限部分集合の全体の集合濃度は\aleph_\alpha

<証明>
問題3.6から\omega_\alphaの有限部分列の集合の全体(Sと書く)の集合濃度は\aleph_\alphaとわかっている.任意の有限列から要素を集めて有限集合を作れば,有限列全体の集合(Fと書く)から有限部分集合全体の集合への全射が得られる.つまり,\aleph_\alphaから全射が入るので 問題3.7から|F| \le |S|=\aleph_\alpha. 一方,\omega_\alphaの元を一つの元からなら部分集合だと思えば,単射 \omega_\alpha \to Fが存在するので,\aleph_\alpha \le |F|

<問題3.9> B\omega_\alphaのprojection ならば |P(B)| \le |P(A)|

<証明>
f:A\to B全射とする.X\in P(B)に対して,f^{-1}(X)\in P(A)を対応させる写像単射である(∵f全射なので f\circ f^{-1}=id_{P(B)}) □

<問題3.10> \omega_{\alpha+1}P(\omega_\alpha)のprojectionである.

<証明>
ヒントがなかなか難しい.定理3.5から|\omega_\alpha \times \omega_\alpha|=\omega_\alphaなので,P(\omega_\alpha)の代わりにP(\omega_\alpha \times \omega_\alpha)を考慮する.写像 f:P(\omega_\alpha \times \omega_\alpha)\to Ordを構成するのだが,R\in P(\omega_\alpha \times \omega_\alpha)Rが整列順序関係を与えるものに対しては,そのorder-typeをf(R)とし,そうでないようなRには(なんでもいいので)f(R):=0としておく.
 さて,この像が\omega_{\alpha+1}に一致することを示したい.まず,作り方から像になっているorder-typeの順序数\betaの濃度は高々\aleph_\alphaである.なので,\beta < \omega_{\alpha+1}でなければならず ran\ f \subset \omega_{\alpha+1}は明らか.逆に任意の\beta < \omega_{\alpha+1}なる順序数 \betaの濃度は基数の定義から |\beta| 
 \le \aleph_\alphaなので,単射\psi:\beta \to \omega_\alphaが存在する.\alphaの整列順序の構造をran\ \psiに入れれば,\omega_\alpha(の部分集合)上に整列順序関係Rが定義されるが,作り方から f(R)=\betaなので題意が証明された □

<問題3.11> \aleph_{\alpha+1} < 2^{2^{\aleph_\alpha}}

<証明> 問題3.10と問題3.9から P(\aleph_{\alpha+1}) \le P(P(\aleph_\alpha)).一方,\aleph_{\alpha+1} < P(\aleph_{\alpha+1})なので題意の不等式が成立する □


<問題3.12> \aleph_{\alpha}を非加算な極限基数とすると,cf\ \omega_\alpha=cf\ \alpha

<証明> \gamma := cf\ \omega_\alphaと書いて,\omega_\alpha=lim_{\xi < \gamma}\beta_\xiとする.\beta_\xiは必ずしも基数とは限らないので,\omega_\alpha(\xi)=|\beta_\xi|が成立するように \alpha(\xi)を定めると \alpha(\xi) < \alphaかつ \alpha=lim_{\xi < \gamma}\alpha(\xi)となっている(∵後半は\omega_\alphaが極限順序数であることを使った).\gamma-列\{\alpha(\xi)\}は非減少列で,Lemma3.7 (ii)より,cf\ \gamma=cf\ \alpha.左辺は cf\ (cf\ \omega_\alpha)=cf\ \omega_\alphaなので題意が証明された □

<問題3.12>(ZF) \omega_2は可算個の可算集合族の和集合ではない.

 本文で示唆されていたが,これと同じステートメント\omega_1で主張するには選択公理が必要ということである.

<証明> ヒントに従う.\omega_2=\cup_{n < \omega}S_nで,各 S_nが高々可算集合としよう.\alpha_nS_nのorder-typeとする.\alpha:=sup_n\ \alpha_nとすると \alpha \le \omega_1である(∵もし \omega_1 < \alphaなら \exists n\ (\omega_1 \le \alpha_n)だが,\alpha_nは高々可算な順序数なので無論これは成立しない).ここで \omega\times \alphaから\omega_2写像\psi(n,\xi)\in \omega\times \alphaに対して,もし\xi \in \alpha_nならば\psi(n,\xi):=\xiに対応するS_nの元,そうでないときは\psi(n,\xi):=0とすれば,条件\omega_2=\cup_{n < \omega}S_nから\psi:\omega\times \alpha \to \omega_2全射であることがわかる.一方で,\omega\times \alpha\omega_1\times \omega_1の部分集合で |\omega_1\times \omega_1|=\omega_1(定理3.5)であるから結局(対応していない元は適当に0に写像すれば)\omega_1から\omega_2への全射が得られる.問題3.7より \aleph_2 \le \aleph_1が得られるがこれは矛盾である □

[集合論] Cofinality その2/2(Jech本p.31)

 次のLemma3.10には一応テキストに証明は付いているが,証明の概略のようなものなのでかなり苦労させられた.以下,テキストの解読結果である.

<Lemma3.10> \kappa無限基数とする.
 \kappa:\mbox{singular} \Leftrightarrow

\exists \mbox{ cardinal }\lambda < \kappa,\ \exists \{S_\xi:\xi < \lambda,\ S_\xi \subset \kappa,\ |S_\xi| < \kappa,\ \kappa=\cup_{\xi < \lambda}S_\xi \}

また,この条件を満たすような最小の\lambdacf\ \kappaである.

<証明>
\Rightarrow\kappaの中のcofinalなcf\ \kappa-列\alpha_\xi:\xi < cf\ \kappaがある.\lambda:=cf\ \kappaとすればsingularなので\lambda < \kappaかつLemma3.8より\lambdaは基数である.S_\xi:=\alpha_\xiとすれば条件をすべて満たす□

\Leftarrow)この条件を満たす\lambdaが少なくとも一つあるという仮定なので,そのうち最小なものを改めて\lambdaとしておく.\beta_\xi:=\mbox{order-type}(\cup_{\nu < \xi}S_\nu)と定義する.

<Claim 1>  < \beta_\xi:\xi < \lambda > \kappa内の非減少な\lambda-列である.
<証明> 
 x < y < \lambdaで,もし\beta_y < \beta_x であるなら,それぞれが基数であったから,|\beta_y| < |\beta_x|でなければならない.一方で,\cup_{\nu < x}S_\nu \subset \cup_{\nu < y}S_\nuだから |\beta_x| \le |\beta_y|となるので矛盾する.よって非減少列である.また,もし \beta_\xi = \kappaが成立したとする(\kappaが基数なので\cup_{\nu < \xi}S_\nu \subset \kappaから|\beta_\xi| \le \kappaであることは分かっている).このとき,\cup_{\nu < \xi}S_\nu=\kappaであることを示そう.もし,\cup_{\nu < \xi}S_\nu < \kappaならば\kappaが基数であったことから,|\beta_\xi|=|\cup_{\nu < \xi}S_\nu| < \kappaでなければならないが,これは\beta_\xi = \kappaと矛盾する.ところで \beta_\xi = \kappaが成立するような最小の\xi\xi_0とすると,\{S_\xi:\xi < \xi_0\}が題意の条件を満たすため,\lambdaの最小性に反していることになる.よって \beta_\xi <  \kappa

<Claim 2> \kappa = lim_\xi \beta_\xi
<証明>
\beta:=lim_\xi \beta_\xiとする.\kappa=\cup_{\xi < \lambda}S_\xiだったので,f:\kappa \to \lambda \times \betaを次のように定める.\alpha\in \kappaに対して

f(\alpha):=(\xi,\gamma)\ ;\  \xi:=min\{\nu:\alpha \in S_\nu\},\ \gamma:=\mbox{order-type}(S_\xi\cap \alpha)

\forall \xi < \lambda (S_\xi \subset \beta)なのでfは定義されている.さて,ここでfが中へのone-to-one写像であることを示そう.f(x)=f(y)=(\xi,\gamma)とせよ.すなわち x,y\in S_\xiかつ \gamma=\mbox{order-type}(S_\xi \cap x)=\mbox{order-type}(S_\xi \cap x)x < yとしておこう.ここに包含関係x \subset yがあって,S_\xi \cap x \subset S_\xi \cap yとなるが,これは整列集合間の順序を保つ写像となっており,z\in S_\xi \cap x,\ z'\in S_\xi \cap xz' < z \Rightarrow z'\in S_\xi \cap xなので,S_\xi \cap xS_\xi \cap yの切片である.また,x\in S_\xi \cap yかつx \notin S_\xi \cap xなのでS_\xi \cap x真に小さい切片である.真に小さい切片と全体は順序同型にならないが,このことは仮定の\mbox{order-type}(S_\xi \cap x)=\mbox{order-type}(S_\xi \cap x)と矛盾する.よってx=yであり,fはone-to-oneとなる.ちなみにテキストでは基数に対しては,集合濃度を表す絶対値記号がついていたりいなかったりとこんがらかるが,たとえば|S_\xi| < \kappaの濃度の比較と考えても,|S_\xi|S_\xi \subset \kappaのorder typeとして順序数の比較と考えてもこの場合は\kappaが基数なので同値となる.ただ,次に|\lambda \times \beta|=\lambda\cdot |\beta|というような表記がでてきて解釈に悩むが,よくよく観察すると『基数には絶対値記号を付けなくても濃度の表記と読み替えてよい』というルールのようである.なので|S_\xi| < \kappaなどは濃度の比較と解釈しておけばよいが,以下ではあえて絶対値記号を付けるようにしておくことにする.
 次のステップでは定理3.5を使うが,これはAlephすなわち無限基数について成立する定理であることをリマインドしておく(2つ前の記事の件).さて,上のfにより,|\kappa| \le |\lambda\times \beta|=|\lambda|\cdot|\beta|\betaの定義からもともと\beta \le \kappaだが,仮に\beta < \kappaと仮定してみよう.|\beta| < |\kappa|で(∵\kappaは基数だから),\kappa' \le \betaかつ|\kappa'|=|\beta|なるような基数\kappa'が存在する.\lambda':=max(\lambda,\kappa')とする.|\lambda|\cdot|\beta| \le |\lambda'|\cdot|\lambda'だが,左辺は|\kappa|より等しいか大きいので,\kappa'は無限基数でなければならない.すると定理3.5より|\lambda'|\cdot|\lambda'|=|\lambda'|となるが,|\kappa| \le |\lambda'| < |\kappa|は矛盾である.よって,\beta = \kappa

<Claim 3> cf\ \kappa \le \lambda
<証明>
\lambda-列  < \beta_\xi:\xi < \lambda >\alpha=\kappaとして,Lemma3.7(ii)を適用すると,cf\ \kappa=cf\ \lambda \le \lambda

さて,cf\ \kappa \le \lambda < \kappaであったから,\kappaがsingularであることが証明された.また(\Rightarrow)の証明に使ったcf\ \kappa列があるので,\lambdaの最小性より\lambda \le cf\ \kappaとなるが,さきの不等式と合わせて \lambda=cf\ \kappaがわかる □

 ここでテキストのコメントがあり,5章でのKönigの定理への期待が高まるが,その定理の系として次の定理は出るらしいのだが,ここでは独立に証明するとのこと.
<Theorem 3.11> \kappaを無限基数とするとき, \kappa < \kappa^{cf\ \kappa}
<証明>
定理のステートメントにおける不等号は濃度の不等号である.定数関数を考えれば,\kappa \le \kappa^{cf\ \kappa}なので,\kappa = \kappa^{cf\ \kappa}と仮定してみよう.これは,cf\ \kappaから\kappaへの関数が\kappaの元とone-to-one対応しているということなので,その対応を F=\{f_\alpha:\alpha < \kappa,\ f_\alpha:cf\ \kappa \to \kappa\}と表記する.そうしておいて,以下にFに属さないような関数f:cf\ \kappa\to \kappaを構成することで矛盾を導くが,要するにこれは対角線論法の類似品である.
 cofinalityを与える列を\kappa=lim_{\xi\to cf\ \kappa} \alpha_\xiとして,

\forall \xi < cf\ \kappa;\ f(\xi):=min\{\gamma:\forall \alpha < \alpha_\xi(\gamma \neq f_\alpha(\xi)\}

この上のカッコの中が空でない(少なくとも一つの\gamma < \kappaが,カッコ内の性質を満たす)のは,|\{f_\alpha(\xi):\alpha < \alpha_\xi\}| \le |\alpha_\xi| < \kappa なので,\{f_\alpha(\xi):\alpha < \alpha_\xi\}\subsetneqq \kappaとなり,左辺に属さない\kappaの元が存在するためである.このように定義されたf:cf\ \kappa\to \kappaはどのf_\alphaとも異なる.なぜなら,もし\exists \alpha < \kappa(f=f_\alpha)なら,\alpha < \alpha_\xiなるように\xi < cf\ \kappaを選ぶと,定義から f(\xi)=min\{\gamma:\forall \beta < \alpha_\xi(\gamma \neq f_\beta(\xi))\}なので,特に\beta=\alphaととるとf(\xi)\neq f_\alpha(\xi).これはf=f_\alphaに矛盾する□

 テキストの締めくくりのコメントは,weakly inaccessible cardinalがどれぐらいでかいかというような話である.\aleph_\alpha > \aleph_0=\omegaが極限かつregularなcardinalとしたとき,\aleph_\alpha = cf\ \aleph_\alpha = cf\ \alpha \le \alpha.ここに2つ目の等式は,\alpha=lim_{\xi < cf\ \alpha}\ \alpha_\xiとしたとき,\aleph_\alpha=lim_{\xi < cf\ \alpha}\ \aleph_{\alpha_\xi}なので,cf\ \aleph_\alpha \le cf\ \alpha.逆向きは \aleph_\alpha=lim_{\eta\to cf\ \aleph_\alpha}\ \beta_\etaとしたとき,\gamma_\eta:=min\{\nu:\aleph_{\nu} > \beta_\eta\}と定義すれば,\{\gamma_\eta\}は単調増加なcf\ \aleph_\alpha列であり,\alpha=lim_{\eta \to cf\ \aleph_\alpha}\gamma_\etaとなるため,cf\ \alpha \le cf\ \aleph_\alpha.また\alpha \le \aleph_\alphaなので(∵ 超限帰納法による.\alpha+1のとき \alpha \le \aleph_\alpha < \aleph_{\alpha+1}なので \alpha+1 \le \aleph_{\alpha+1}\alpha=lim_{\xi \to \alpha}\xiのとき,\xi \le \aleph_\xi \le \aleph_\alphaより \alpha \le \aleph_\alphaが従う)\aleph_\alpha=\alpha
 \alpha \to \aleph_\alphaは定義からnormal(p.22)なので,いくらでも大きなfixed point \aleph_\alpha=\alphaをもつ(問題2.7)が,それがいつregularになるのかが問題とのこと.ちなみにテキストにはこのfixed pointの最小のもの\kappaが次のように与えられているが,作り方からわかるようにそのcardinalityは残念ながら\omegaである.

\kappa:=lim_{n\to \omega}\kappa_n.ここに \kappa_0:=\omega,\ \kappa_{n+1}:=\omega_{\kappa_n}

つまりは \kappa=lim\{\omega,\omega_\omega,\omega_{\omega_\omega},\cdots\}である.これがfixex pointであることを示すのに,自明でない \aleph_\kappa \subset \kappaだけを示すと,左辺に属する元は有限回で打ち切った\{\omega,\omega_\omega,\omega_{\omega_\omega},\cdots\}のどれかの元に属する\xi\omega_\xiと書けるため,明らかに\kappaの元となる.最小性は,もし\omega < \betaなら\omega_\omega < \omega_\beta=\beta.以下繰り返せば\kappa \le \betaが出る.
 以上のことから,weakly inaccessible cardinalが存在するなら,既に途方もなく大きな\kappaよりさらに大きいということになる.

[集合論] Cofinality その1/2(Jech本p.31)

 お次はcofinality(共終数)である.定義は割と簡単ではあると思うが,そもそもなんでこんなものを定義するのかという動機は本章では何も書かれていない.ちょろっと調べてみると基数のベキ 2^{\aleph_\alpha}がどれくらい大きいか(小さいか)が,\aleph_\alphaのcofinalityで制御されるというような話らしい.GCH(一般連続体仮説)と関連するもののようだ.

まずは関連する定義から:
 \alphaを極限順序数,\betaを極限順序数として\alphaの中の単調増加する\beta-列 < \alpha_\xi \in \alpha:\xi < \beta > としたとき

 < \alpha_\beta > \alphaの中でcofinal(共終) \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} lim_{\xi \to \beta}\ \alpha_\xi=\alpha

また,類似した定義として,集合A \subset \alphaに対して,
A\alphaの中でcofinal(共終) \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ A=\alpha

そこで,\alphaのcofinality cf\ \alphaを次に様に定義する:

cf\ \alpha=min\{\beta:\mbox{極限順序数であり,}\alpha\mbox{の中のcofinalな}\beta\mbox{-列が存在する}\}

なんじゃらほいという定義だが,上の\{\}の中が空でないのは, < \xi:\xi < \alpha > というcofinalな\alpha-列がある.ゆえに cf\ \alpha \le \alphaである.
 テキストにあげられた例 cf (\omega+\omega)=\omegaを示そう.\omega-列  < \omega+n:n < \omega > により,cf (\omega+\omega) \le \omega
となるが,有限順序数では明らかにcofinalな列がないので,等号が成立する.もうひとつ cf (\aleph_\omega)=\omega\omega-列  < \omega_n:n < \omega > がある.

 さて,ここまでで私の大きな疑問は無限順序数\alphaならcf\ \alpha=\omegaじゃないんですか? である.\alphaがとてつもなく大きいと可算列では指し示せない可能性はありそうだが,その実例が見たいということである.果たして,テキストはそれに答えてくれるのか,先に進んでみよう.私にとっては cofinalityは新しい概念なので,丁寧にやってみる.

Lemma 3.6 cf(cf\ \alpha)=cf\ \alpha

<証明> テキストの証明がやや謎めいているが,以下のようなロジックである.
cf\ \alpha=\betaとして < \alpha_\xi \in \alpha:\xi < \beta > \alphaの中のcofinalな\beta-列とする.またcf\ \beta=\gammaを与える\betaの中のcofinalな\gamma-列を < \gamma_\eta\in \beta:\eta < \gamma > とする.このとき \gamma-列を < \alpha_{(\gamma_\eta)}\in \alpha:\eta < \gamma > とすると,これは\alphaの中でcofinalとなっている(∵\gamma_\etaが単調増加であるため).cofinalityの定義から,\beta=cf\ \alpha \le \gammaでなければならないが,一方で\gamma=cf\ \beta \le \betaであったから \beta=\gamma. すなわち cf(cf\ \alpha)=\gamma = \beta=cf\ \alpha

Lemma 3.7 \alphaを極限順序数とする.

(i) A\subset \alpha かつ sup\ A=\alpha ならば cf\ \alpha \le \mbox{order-type}(A)
(ii) \beta_0 \le \beta_1 \le \cdots \le \beta_\xi \le \cdots,\ \xi < \gamma\alphaの中の順序数の非減少な\gamma-列で,lim_{\xi\to \gamma}\beta_\xi = \alphaとする.このときcf\ \gamma=cf\ \alphaとなる.

<証明>
(i) A \subset \alphaであるからAは整列集合となるのでそのorder typeが存在する.そのorder typeである順序数を\betaとすると順序同型によりA\alphaの中の\beta-列となり,sup\ A=\alphaよりcofinalとなる.よって cf\ \alpha \le \beta

(ii) \gamma=lim_{\nu\to cf\ \gamma}\xi(\nu)とする. < \beta_{\xi(\nu)}:\nu < cf\ \gamma >は非減少のcf\ \gamma-列で\alpha=lim_{\nu\to cf\ \gamma}\beta_{\xi(\nu)}となっている.ここでテキストではしれっとこの列から極限が\alphaな増加列を選び出せて,かつその指標が  \le cf\ \gammaなので,cf\ \alpha \le cf\ \gammaと結論している.しかし『部分列を選び出す』というようなアヤシイ操作は要注意である.順序数の集合A A:=\cup_{\nu < cf\ \gamma}\{\beta_{\xi(\nu)}\} \subset \alphaと定義すると,Aのorder type \le cf\ \gammaである.これは\beta_{\xi(\nu)}が同じAの元になるような\nuの集合の中から例えば最小元を選んで(選択公理不要),中への順序を保つone-to-one写像 A\to cf\ \gammaが作れるからである.ちなみに2つの順序数\alpha,\ \betaで順序を保つ中への写像\alpha \to \betaがあるなら\alpha \le \betaである.あまりどこにも載っていないみたいなので,補題として証明を付けておく.

補題\alpha,\beta \in Ord,

順序を保つ写像 \phi:\alpha\to \betaが存在する \Rightarrow \alpha \le \beta

<証明>
\betaに対する超限帰納法\beta=1のときはOK.\beta+1=\beta\cup\{\beta\}に対しては,\phiの像が\betaの中に入ってしまうと帰納法の仮定から結論が成立してしまうので,結局\alphaも継続順序数で\alpha=\alpha'\cup\{\alpha'\}\phi(\alpha')=\betaというケースが残るが帰納法の仮定から\alpha' \le \betaより,\alpha = \alpha'+1 \le \beta+1で成立する.\beta=lim_{\xi\to \beta}\ \xiのとき,\alphaが継続順序数だとその最大元の\phiでの像\xi\xi < \betaなので,帰納法の仮定から\alpha \le \xi < \betaと結論が成り立つ.残るは\alpha=lim_{\nu\to \alpha}\ \nuの場合だが,\phi(\nu) < \betaであるため,\exists \xi < \beta(\phi(\nu) < \xi)より帰納法の仮定(と\phi\nu上に制限しても順序を保つ写像となる)から \nu \le \xi < \beta\nuの極限をとれば \alpha \le \betaとなる□ (単射という条件だけなら前に見たように \omega+1\to \omegaなどが存在する.)

さて,(ii)の続きだが,逆向きのcf\ \gamma \le cf\ \alphaを示したい.まず,\alpha=lim_{\nu\to cf\ \alpha}\ \alpha_\nuとしておいて,各\nu < cf\ \alpha \le cf\ \gamma \le \gamma(二番目の不等式は先に示した)に対して,lim_{\xi\to \gamma}\ \beta_\xi = \alphaであったから,\alpha_\nu < \beta_\xi < \alphaなる\xiが存在するが,同時に\forall\tau < \nuに対して,\xi(\tau) < \xiも満たすようにする.\xiを大きくすればいつでもこの2つの条件を満たせるような\xiが存在するので,それら中で最小のものを改めて\xi'(\nu)と書こう(テキストと記号を変えた).\alpha_\nu < \beta_{\xi'(\nu)} < \alphaなので \nu\to cf\ \alphaでは \beta_{\xi'(\nu)} \to \alphaである.ただ,この列は単調増加ではないこともあるが,実はそこは重要ではなくて,示したいのは\xi'(\nu)\to \gammaである.作り方から\xi'(\nu)は単調増加列なので,これが言えると直ちにcf\ \gamma \le cf\ \alphaとなる.ところでいまさらの注意だが,\alphaが極限順序数で列\beta_\gamma\alphaの中にあるのでいきなり\beta_\gamma=\alphaというような値は取れない.一方でlim_{\xi\to \gamma}\beta_\xi = \alphaということは列\beta_\gammaは単調ではないが極限として\alphaに近づいていっているという描像である(解析学とのアナロジーが適切かどうはともかく形式的には同じである).さて,\xi'(\nu)\to \gammaでないとすると,\forall\nu (\xi'(\nu) \le \eta < \gamma)となるような\etaが存在する.一方で,\forall\nu (\beta_\xi'(\nu) \le \beta_\eta < \alphaとこちらも頭打ちになるが,これは\beta_{\xi'(\nu)} \to \alphaと矛盾する□

さて,\aleph_\alpha:regular \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} cf\ \omega_\alpha = \omega_\alpha とし,そうでないとき(cf\ \omega_\alpha < \omega_\alphaのとき)singularと定義する.先の私の疑問は\omegaより大きい regularなcardinalの例を見せてくださいということであったが...まずいですなこれは...テキストのちょっと先(p.33)に"existence of (weakly)inaccessible cardinals is not provable in ZFC"とコメントされていて,(weakly)inaccessible=uncountable regular limit cardinalなので,そんな例の存在はZFCでは示せないということですか(これは私の誤解であることはのちに)...残念.さらにもう完全に蛇足な情報として,Kunen本には訳者のコメントがあって,

 Gitik: All uncountable cardinals can be singular, 1980

という文献で,ある巨大基数公理の無矛盾の仮定において,ZFとすべての無限基数のcofinaliry が \omegaであることが矛盾しないという結果が得られているとのこと.Jech先生もこの結果は知っているはずだが,巻末の文献表にもないのであまりZFC以外のことはテキストとしては触れない方針なのかもしれない.ただ,選択公理があっても(weakly)inaccessible cardinalの存在を示せないということから,もっと公理(巨大基数とか)を追加したくなるのは分かる気がする.テキストでもPart IIの中に巨大基数がテーマの章がある(そういえば,いつ買ったのか Kanamori本がうちの本棚に死蔵されている.今パラパラと見てみたが...これはまだまったく読めないですな).

いろいろガッカリ感はあるが,続けよう.

<Lemma3.8> 任意の極限順序数\alphaに対して,cf\ \alphaはregularな基数である.

<証明> \alphaが基数でないとき,|\alpha|\to \alphaという全単射があるが,|\alpha|の基数を\alpha'としたとき,\alpha' < \alphaである.このときテキストで示唆されているように \alpha'-列で\alphaの中でcofinalなものが存在すれば,cf\ \alpha \le \alpha' < \alphaとなる.記号が同じ\alphaなので紛らわしいが,cf(cf\ \alpha)=cf\ \alphaであったので,cf\ \alphaに対して今証明したことを適用すれば,cf\ \alphaは基数でなければならないことになる.そしてもちろんregularである.さて,『\alpha'-列で\alphaの中でcofinalなものが存在する』が残っている.全単射\psi:\alpha'\to alphaとする.単調写像f:\alpha' \to \alphaを次のように定める.(Kunen本からの借用)

f(0)=\psi(0),\ f(\xi)=max(\psi(\xi),sup_{\eta < \xi}\{f(\eta)+1\})

これが単調なのは後ろのsup項の中で+1しているためで,また\alphaからはみ出ないのは\alphaが極限順序数という仮定からである.これがcofinalであるのは,任意の\nu < \alphaに対して,\xi:=\psi^{-1}(\nu)とすれば,定義より明らかに,f(\xi) \ge \psi(\xi)=\nuだからである□

用語の定義:\kappaを極限順序数,部分集合X\subset \kappaとしたとき,

X:bounded \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ X < \kappa
X:unbounded \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} sup\ X = \kappa

<Lemma3.9> \kappaを基数とする.

(i) X\subset \kappaかつ |X| < cf\ \kappa \Rightarrow \ \kappa:bounded
(ii) \lambda < cf\ \kappa,\ f:\lambda\to \kappa \Rightarrow ran(f):bounded

<証明>
(i) Lemma3.7の(i)からもしXがunboundedすなわちsup X=\kappaならcf\ \kappa \le \mbox{order-type}(X)となるが,これは仮定|X| < cf\ \kappaに矛盾する□

(ii) X:=ran(f) \subset \kappaf:\lambda \to X全射なので,|X| \le \lambda(読者注:全射が存在するときの濃度比較は逆像から一つ選んで単射をつくるプロセスがあるので,一般的には選択公理が必要となると思う.ただ順序数を相手にしている場合は逆像の最小元で指定できるので本件では選択公理はいらない).仮定と合わせて|X| \le \lambda < cf\ \kappaなので(i)より直ちにX=ran(f):bounded

ここでテキストにコメントがあり,いくらでもでかいsinglarな基数が存在し,(例:cf\ \aleph_{\alpha+\omega}=\omega)また,選択公理のもとで \aleph_{\alpha+1}がregularであることを5章で扱うそうである.あれれ? ああそうか.私の欲しかった例はここにありました.cf\ \aleph_1=\aleph_1 > \omegaだからこれでいいですね.先の weakly inaccessible cardinalの存在がZFCで示せないというのは,weakly inaccessible cardinalの定義に limit cardinalという条件があるので上の結果とは矛盾せず,単に私の早とちりであったわけです.といっても\aleph_1自体まだ正体不明ではあるわけですが...

[集合論] 気づいてしまったシリーズ - \aleph_\alphaの彼方編

 Jech本を読み進めているが,次のCofinalityの節の証明でJech先生は手を抜きすぎでなかなかのギャップがある.まあ,イントロ的な章なのでこんな手抜き具合なのかもしれないが,私自身もCofinalityの定義にあまり慣れていないので何に使うのかさっぱりだし,そもそも順序数列を使った定義はめんどーである.
 まあ,特に時間に追われているわけでもないのでじっくり取り組んでいる.一週間ぐらい何も進まなくてもへっちゃらですわ.それでもJech本の行間の幅がちょうど今の私に絶妙で,別の本やWebを調べたりと苦しみながらも少しでも進んだときはとても楽しいですな.

 シリーズの第二弾としてCofinalityの節を読み進める過程で気づいてしまったことを今回の(ぷち)ネタにしたい.

 さて,Alephの定義(p.29)はこうである.『無限順序数で基数であるもの』.
一方,次のp.30には,\aleph_\alphaが唐突に定義されているが,そこをよく読むと「すべてのAlephを列挙する」と書いてはあるものの,どこにその証明があっただろうか? このことを定理3.5を任意のAlephに適用しようとして気づいてしまったのである.つまり,『任意のAlephは\aleph_\alphaのどこかに現れる』かどうかである(調べてみると,Kunen本には同じ旨の記載がある(補題10.19)が,証明はまったく書いていないのでさらに手抜きである).

 一瞬,ウッと来たが落ち着いて証明してみよう.例によって,\aleph_\alphaに現れない最小のAlephを\lambdaとする.S:=\{\nu:\nu < \lambda \mbox{ かつ } \nu\mbox{:基数} \}を考えるとこれは無論,集合なので,Lemmna3.4から \kappa:=sup\ Sも基数である.また作り方から\kappa \le \lambdaである.

(i) \kappa < \lambdaの場合:
このとき\lambdaの最小性より\kappa=\aleph_\alphaと書けるが,\kappa\lambdaの間に基数は存在しないので,\lambda=\aleph_\alpha^+=\aleph_{\alpha+1}なので\lambdaの定義に矛盾する.
(ii) \kappa = \lambdaの場合:
Sの元x\lambdaの最小性よりx=\aleph_\alphaの形に書けるので,\phi:S\to Ord\phi(x):=\alphaと定義する.これは作り方から単射である.Sが集合であったから,置換公理からその像も集合で,\beta:=sup(ran\ \phi)は順序数となる.ちなみにx\in Sならx^+ \in Sなので(∵そうでなければ x^+=\lambdaが成立してしまう)\betaは極限順序数である.ここで \aleph_\beta=\kappaが成り立つことを示そう.\aleph_\beta:=sup\{\aleph_\xi:\xi < \beta\}なので,\kappaの作り方から \aleph_\beta \supset \kappaなのは明らかであろう.逆に\xi < \betaとしたとき,x\in S\xi \le \phi(x) < \betaとなるようなものが存在するが,このとき \aleph_\xi \le \aleph_\phi(x)=xなので,\aleph_\beta \subset \kappaが成立する.\kappa = \lambdaだったから,\lambda=\aleph_\betaとなって,\lambdaの定義に矛盾する.
よって,『任意のAlephは\aleph_\alphaのどこかに現れる』が証明され,一件落着である.


蛇足編:ちなみに,記法として\aleph_\alpha=\omega_\alphaとかなんだかわからないことになっていると思うのだが,一応テキストには\aleph_\alphaと書くと基数すなわち順序数で,\omega_\alphaと書くとorder-typeであるとしている(p.30).後者は整列順序集合の同型類という意味だが,Kunen本では両者の記法は同じく基数の意味であり,\aleph_\alphaは使わないようである.Jech本でも テキストの別のところではorder-typeと言いながらOrdへの写像とか作ってるので,まあ,どっちでもいいのであろう.しかし,p.30の \aleph_\alpha=\omega_\alpha=sup\{\omega_\beta:\beta < \alpha\}のカッコの中身は\aleph_\betaじゃね?と思うのだが...

[集合論] Canonical Well-Ordering of \alpha \times \alpha(Jech本p.30)

 本節の最終目標はテキストp.31の(3.14)

\aleph_\alpha+\aleph_\beta=\aleph_\alpha\cdot \aleph_\beta=max\{\aleph_\alpha,\aleph_\beta\}

というシンプルな公式である.この証明のために,クラスの積 Ord \times Ordにwell-orderingを次のように定義する.

(\alpha,\beta) < (\gamma,\delta) \overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} \begin{cases} max\{\alpha,\beta\} < max\{\gamma,\delta\},   \\ \mbox{ or } max\{\alpha,\beta\}=max\{\gamma,\delta\} \mbox{ and } \alpha < \gamma,  \\  \mbox{ or } max\{\alpha,\beta\}=max\{\gamma,\delta\} \mbox{ and }\alpha=\gamma,\ \beta < \delta.   \end{cases}

 おや? この定義は整列集合の積に対する順序付け Definition 2.23(p.24)と微妙にmaxの条件があるのが違っている.しかし,なぜこのmaxの条件が必要なのかについては特にテキストではコメントはない.別にwell-orderingであることの証明には障害はない.これが理由かな?と思われるのは,テキストのorderingでは任意のinitial segmentは集合であるが(∵maxの条件で上限が縛られるため),もしDefinition 2.23を採用すると,たとえば\{(\alpha,\beta):(\alpha,\beta) < (1,0)\}\supset \{(0,\alpha):\alpha \in Ord\}などと第1要素が0でない元のinitial segmentは全て真のクラスとなってしまう.
 これに関連して,テキストで(0,\alpha)のinitial segmentが\alpha \times \alphaであるというのもmaxのおかげである
(∵(\gamma,\delta) < (0,\alpha) \Leftrightarrow max\{\gamma,\delta\} < \alpha \Leftrightarrow (\gamma,\delta) \in \alpha \times \alpha).

 さて,\Gamma(\alpha,\beta)(\alpha,\beta)のinitial segmentのorder typeと定義する.

補題

\Gamma:Ord \times Ord \to Ordは上へのone-to-one写像である.
またそれは順序同型(\alpha,\beta) < (\gamma,\delta) \Leftrightarrow \Gamma(\alpha,\beta) < \Gamma(\gamma,\delta)である.

<証明>
W(\alpha,\beta):=\{(\gamma,\delta):(\gamma,\delta) < (\alpha,\beta)\}をinitial segmentの表記する.
(\alpha,\beta) < (\gamma,\delta) \Rightarrow W(\alpha,\beta) \subset W(\gamma,\delta)なのは明らかで,また右辺でW(\alpha,\beta)W(\gamma,\delta)のinitial segmentなので,そのorder typeでもinitial segmentとなり,\Gamma(\alpha,\beta) < \Gamma(\gamma,\delta). 逆向きは今の証明から (\alpha,\beta) \ge (\gamma,\delta) \Leftrightarrow\Gamma(\alpha,\beta) \ge \Gamma(\gamma,\delta)が出るからである.
 残りは\Gamma:Ord \times Ord \to Ordがontoであることだが,これは結構悩んだ.まず,u < \Gamma(\alpha,\beta) \Rightarrow u\in ran\ \Gammaを示そう.要するに像は下方向には詰まっているという意味である.W(\alpha,\beta) \sim \Gamma(\alpha,\beta)なので uに対応するW(\alpha,\beta)元を(\gamma,\delta)としよう.W(\gamma,\delta)\subset W(\alpha,\beta)のinitial segmentなので,\Gamma(\alpha,\beta)の中で対応する順序数をv=\Gamma(\gamma,\delta)としよう.u \neq vならどちらも同じW(\gamma,\delta)に順序同型なのに片方がもう一方のinitial segmentになるので矛盾.よってu = v \in ran\ \Gamma.最後にontoを示す.今見たようにran\ \GammaOrd全部でないとすると,\exists u\in Ord(\forall v \in ran\ \Gamma \Rightarrow v < u)というような上界uが存在する(像でない順序数のどれでもよい).uは集合なので,ran\ \Gammaも分出公理より集合となるが,それとone-to-oneに対応するOrd\times Ordは真のクラスなので,矛盾である□

 記号の復習として \omega_\alphaというのは順序数\alpha番目の基数であった.

<定理>

\Gamma(\omega_\alpha,\omega_\alpha)=\omega_\alpha
<証明>
まず\alpha=0のとき,\omega_0=\omegaで,(m,n)\in \omega\times \omegak=max(m,n)mnの昇順に並べられており,全体として\omegaに順序同型であることはよいだろう.よって\Gamma(\omega,\omega)=\omega.さて,\alpha\Gamma(\omega_\alpha,\omega_\alpha) \neq \omega_\alphaなる最小の順序数としよう.集合としてx \mapsto (0,x)単射が入るので明らかに|\omega_\alpha| \le |\omega_\alpha \times \omega_\alpha|.ここで等号が成立しないという仮定により,\omega_\alpha < \Gamma(\omega_\alpha,\omega_\alpha).すると\beta,\gamma \in \omega_\alphaで,\Gamma(\beta,\gamma)=\omega_\alphaなるものがある.前回の記事の議論で \omega_\alphaは極限順序数なので,\beta,\gamma < \delta \in \omega_\alphaなる\deltaを選ぶ(たとえばmax(\beta,\gamma)+1).先の議論で\delta\times \deltaはinitial segmentで(\beta,\gamma)\in \delta\times \deltaなので\omega_\alpha=\Gamma(\beta,\gamma) < \Gamma(\delta,\delta).よって濃度としては\aleph_\alpha \le |\delta \times \delta|.一方で,\omega_\alphaの最小性から,|\delta \times \delta|=|\delta| < \aleph_\alphaなので矛盾である(最後の不等式は\omega_\alphaが基数かつ\delta < \omega_\alphaであることを使った)□

この定理の系として

\aleph_\alpha+\aleph_\beta=\aleph_\alpha\cdot \aleph_\beta=max\{\aleph_\alpha,\aleph_\beta\}

がでる.証明を補足しておく.

<証明>
\alpha \ge \betaと仮定しておこう.\omega_\alpha \times \omega_\beta \subset \omega_\alpha \times \omega_\alphaと上の定理より,|\omega_\alpha \times \omega_\beta| \le |\omega_\alpha \times \omega_\alpha|=|\omega_\alpha|.もとより適当な包含写像により \omega_\alpha \subset \omega_\alpha+\omega_\beta \subset \omega_\alpha \times \omega_\betaなので(∵和から積に入れるには \omega_\alpha \ni x \mapsto (x,0);\ \omega_\beta \ni y \mapsto (0,y+1)とか),\aleph_\alpha \le \aleph_\alpha+\aleph_\beta \le \aleph_\alpha\cdot \aleph_\beta \le \aleph_\alpha \cdot \aleph_\alpha=\aleph_\alpha


この節の最後のコメントとして,基数のベキについては選択公理が無いとP(\omega_\alpha)ですら整列集合にできるかどうかわからないとのことで,5章を待てとある.

[集合論] Alephs(Jech本p.29)

 cardinalはもともとは集合の同値類として定義されているが,その代表元を順序数から選びたいという流れである.ただし選択公理を使った議論は5章を待てということらしい.まずは順序数の中で同じcardinalityを持つもののクラスの最小元として基数(cardinal number)を定義する.テキストではこれに同値な定義として,
順序数\alphaが基数\overset{\text{def}}{\Longleftrightarrow} \forall \beta < \alpha (|\beta|\neq |\alpha|)
としている.
 冒頭部分に『すべての無限なcardinalは,極限順序数である』と書いてあってアレ?と思うが,この節でのcardinalとは先の順序数の基数(cardinal number)のことなのでまだ選択公理を使った一般的なcardinalの議論をしているわけではない.というわけで,このステートメントは『\omega < \alphaなる後続順序数\alphaは基数にはならない』ということを言っているだけである.この証明を補足しておく.\alpha=\beta+1=\beta \cup \{\beta\}として,|\alpha|=|\beta|を示す.対応は次の様である.

g:\alpha \to \beta;\ \ g(x) = \begin{cases} 0  & \mbox{if }x=\beta, \\ x+1 & \mbox{if }x < \omega, \\  x & \mbox{otherwise.} \end{cases}

(前にも使った,ひとつずらして隙間を作る手法である)

<Lemma 3.4.>

(i)任意の順序数\alphaよりも大きい基数が存在する
(ii)Xを基数の集合とするとき,sup\ Xは基数である.

<証明>
 (i) 任意の集合Xに対して,順序数h(X)を次のように定義する.

h(X):=min\{\alpha \in Ord: \mbox{there is no one-to-one function }\alpha \mbox{ into X}\}

これはXの濃度より大きい濃度をもつ最小の基数の意である.もちろんひょっとするとこれは空かもしれないわけだが,テキストp.29の最後に次のような説明があって,これが空でないと言っている.

”There is only a set of possible well-orderings of subsets of X. Hence there is only a set of ordinals for which a one-to-one function of \alpha into X exists.”

かなりの謎の呪文だが,和訳しつつ解読を試みてみよう."There is only a set"を『は高々集合である』と解釈すれば(直訳は『ぽつんと集合がある』)数学のステートメントらしくなる.解読結果は,『Xの部分集合とその上に可能なwell-orderingの(部分集合とその上のwell-orderingの両方を動かしたときの)全体は高々集合である.よって,\alphaからXの中へのone-to-one 関数が存在するような順序数の全体は高々集合である.』となるが,前段の数学的な記述は英文だけからでは読み取れなくて,後半から推定したものである.ここはまあ,Jech先生の手抜きであろう.英文解釈の問題はともかく,数学のステートメントとしてまとめておこう.

 集合Sに対して,その上のwell-ordering全体の集合をWO(S)と書く.WO(S)が集合なのは,二項関係R \in P(S \times S)のうちで,well-orderingという条件(これは論理式で書ける)を満たすものなので,選出公理より集合となるからである.
\cup_{S \subset X}(\{S\}\times WO(S))は置換公理と和集合の公理から集合である.\{S\}を掛けておくのは disjointな和にしておきたかったからである.これが前半の英文の意味である.

WO(S)の元にそれと順序同型な順序数を対応させる写像\phiは関数である.①の集合の元に対して,第二成分に射影してから\phiを掛けるという対応も関数であり,置換定理からこの像は順序数の集合となる.これが二番目の文の意味である.

 順序数\alphaからXの中へのone-to-one関数はその像としてXの部分集合Sを定め,同時に\alphaの構造からSにはwell-orderingの構造が入る.逆に部分集合Sとその上のwell-orderingが与えられると,それと順序同型となる順序数\alphaが唯一決まり,同時に\alphaからSの上へのone-to-one関数が定まる.ということで,①,②により\{\alpha \in Ord:\mbox{there is an one-to-one function } \alpha \mbox{ into X}\}が集合であり,真のクラスであるOrdを尽くせないため,h(X)が空でないということがわかる.
 以上より直ちに|\alpha| < |h(\alpha)|

(ii) \alpha=sup Xとする.\alphaが基数でないとすると,\exists \beta < \alpha(|\beta|=|\alpha|)で,f:\alpha\to \betaを上へのone-to-one写像とする.一方supの定義から,\exists \kappa \in X(\beta < \kappa \le \alpha).この状況はCantor-Bernsteinの定理での2つの濃度の等しい集合の間に集合が挟まれている状況なので,|\beta|=|\kappa|. しかし,これは\kappaが基数であることに反する□

 Lemma3.4からある基数\alphaより濃度が大きい基数が常に存在するので,その中で最小なものを\alpha^+と表記する.\aleph_0=\omega_0:=\omegaから始めて,\aleph_{\alpha+1}=\omega_{\alpha+1}:=\aleph_\alpha^+. 極限順序数\alphaに対しては,\aleph_\alpha=\omega_\alpha:=sup\{\omega_\beta:\beta < \alpha\}と定義する.\omega_\alphaは順序数と見ていて,実体は同じだが\aleph_\alphaは基数(集合濃度)と見ている.\aleph_0はいわゆる可算濃度であるが,\aleph_1がどんなものなのかはよくわからない.連続体仮説がZFCと独立であるので,\aleph_1が具体的にどうなるのか(たとえば連続体仮説を公理に入れると\aleph_1=|P(\omega)|)はモデル依存ということになろうか.

[集合論] Cantor-Bernsteinの定理(Jech本p.28 Theorm 3.2)

 Part I 第三章に突入である.冒頭にCardinalityの定義は,正則性公理(基礎の公理)あるいは選択公理を使うとの気になる話があった.選択公理から整列可能定理の流れかと思ったが,本節ではその手法とのこと.正則性公理によるものは,調べると宇宙(Universe)の構造(すべての集合は整礎的)から,Scottのトリックにより濃度を定義するとの道筋らしいが,いまのところ私にはチンプンカンプンである.Jech本でも扱っていないように見える.ただ,Jech本でも『The Axiom of Choice』の方には何か書いてあるとの情報を得て,調査してみると11章がそのままのテーマのようである.将来のネタのひとつとしておこう(すでにポチっている.Dover本だから安いよ安いよー電子版もあるよー).

 さて,Cantor-Bernsteinの定理は集合の濃度の比較に関する有名な定理である.証明にはone-to-one写像を作る必要があるが,仕掛けは初等的で選択公理すら不要というなかなかすばらしい定理である.ちなみに私はよく Cantor-Bendixsonと書き間違えそうになる.

X,Yを集合として,XからYの上へのone-to-one写像が存在するとき

|X|=|Y|

XからYの中への one-to-one写像が存在するとき
|X| \le |Y|
と(形式的に)書く.

<定理(Cantor-Bernstein)>

|A| \le |B| かつ |B| \le |A| \Rightarrow |A|=|B|

<証明>Jech本の証明がえらい短いなと思ったら,『後は簡単だからできるよね』と読者に放り投げられていたので受けて立ってみよう.本文に従い,まず,セットアップの情報から問題をすこし簡単にする.
 中への単射 f_1:A\to Bf_2:B\to Aが存在する.B':=f_2(B)A_1:=f_2(f_1(A))とすると A_1 \subset B' \subset Aで,|A_1|=|A|かつ|B'|=|B|となっているので,最初から

A_1 \subset B \subset A で 上へのone-to-one f:A \to A_1が存在する
と考えればよい.これは要するに集合Aの部分集合とAの濃度が同じなら,それらの間に挟まれる部分集合はすべてこの同じ濃度になるということである.

A_0:=A,\ A_{n+1}:=f(A_n);\ B_0:=B,\ B_{n+1}:=f(B_n)
と定義する.
 このとき B_{n+1} \subset A_{n+1} \subset B_n \subset A_n.
(∵ A_1 \subset B_0 \subset A_0は成立しており,これをfで送ればnが一つ増加するので普通の帰納法で証明される)
上の関係式より,n,mが異なると (A_n-B_n)\cap (A_m-B_m)=\emptysetであることがわかるので,写像 g:A\to A
g(x) = \begin{cases} f(x)  & \mbox{if }x\in A_n-B_n\mbox{ for some }n, \\  x & \mbox{otherwize.} \end{cases}
と定義する.
このgAからBの上へのone-to-one写像であることがわかれば定理の証明も完結するが,これが読者への宿題となっている.

C:=\cup_n (A_n-B_n)と定義しておく.
gがone-to-oneであることの証明>
 g(x)=g(y)と仮定する.x,y \in Cまたはx,y \in A-Cだとx=yがすぐに出るので,(必要ならx,yを入れ替えて)x \in Cかつy \in A-Cという場合のみが問題となる.x \in A_n-B_nとして,f(x)=y. するとy \in A_{n+1}なので y \in B_{n+1}でなければならないが(∵ y\notin A_{n+1}-B_{n+1}),y=f(b);\ b\in B_nと書けて,f(x)=f(b)より x=b \in B_nとなるが,これは仮定x \in A_n-B_nに反する□

gBの上への写像であることの証明>
 x\in A-B=A_0-B_0なら g(x)=f(x) \in A_1 \subset B. x \in Bなら g(x)f(x)\ or\ xなのでいずれもg(x) \in Bである.よってgの値域はBに入っている.これが全射であることを示そう.b\in Bを任意の元として,b\in A-Cなら g(b)=bなのでb\in ran\ gである.b\in Cならば \exists n > 0 (b \in A_n-B_n).そこで b=f(a)なるa\in A_{n-1}-B_{n-1}が存在する.このとき b=f(a)=g(a)なので,b\in ran\ gである□