特別企画 小林・益川論文を読む! −その5
あまり悩んでいてもしょうがないので,手を動かしてみることにする.
ゲージ場と物資場の相互作用項は,もとは物資場の運動項から生じるのであるから,最初に物資場の運動項の形を決めておく必要がある.論文には明示的には書かれてはいないが,ゲージ不変の要請から運動項は,
(ここに)となる.
これにゲージ場を導入して,相互作用項を出すのであるが,Rはsingletであるからゲージ変換で変わらず,結局
だけとなる.この項を電荷ごとに分解してみる.そのために,SU(2)のリー環の生成元を
と選んでおいて,
と分解する. (物理では がリー環の元になるような規約を設けている.これにより,各は実の場であることになる.)また,を導入して,
と分解する. ここには,複素場である.
この分解を利用すれば,
となるが,これを見れば,,,がそれぞれ電荷 +1,-1,0のゲージ場,すなわちウィークボゾン ,,に対応することがわかる.
あとは前回の関係式
, ,
を使って,で書き直せばよい.
まず,L成分への射影演算子を使うと,
となる.
このうちの項を見てみると,関係式で,はユニタリ行列であったから,不変式 が成立する.よってこの和の形はダッシュがついても変わらない.与式には (pの和)−(nの和)という形で現れている.
これはつまり,論文との対応で言うととなる.論文の結果とは異なっているが,おそらく元論文の誤りでないかと思う.とでの変換を忘れたか,qの成分の順番の勘違いと思われるが,等による混合が影響しない部分であるので,大した違いはない.しかし,この項の形は重要である.中性ウィークボゾンと結合するのが,中性カレントであり,初回に述べたFCNCを抑制するGIM機構とは,正に上の不変式の中にフレーバを変化させる項が無いということである.クォークのペアがいくつあっても,それらをユニタリ行列で混合するかぎり,GIM機構が機能することが読み取れる.
次回,の項がうまく計算できたら,大団円?!