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[集合論] Real Numbers その1(Jech本4章 p.37)
さて,まずは定理4.1『実数の濃度は可算ではない』である.本書の証明は私は初めてみるきれいな形だったので感動した. よくある証明は『区間の実数を小数展開して対角線論法で矛盾を導く』というものではなかろうか.しかし,この十進でも二進でもいいが『小数展開』できるという部分はなんだか気持ち悪くないだろうか? この主張は実際のところ
と言ってしまっているのである.ベキ集合は元の集合より濃度が大きい: は既出だが,先のよくある対角線論法は単に後半のこの事実を証明しているにすぎない.すると実数プロパーな部分は前半のが全てなのであって,これはなんだか論点先取ではなかろうか.
Jech本の定理4.1の証明はそれではない.実数の2つの性質
(ii) 有界な実数の集合はその上限を実数の中に持つ.
さて,とわいえ例によってJech先生は証明の最後のところを読者に放り投げているので,それを補完した形で紹介する.
<定理4.1の証明>
実数 が可算だと仮定して,その可算列をとしよう.以下この列から次のように再帰的に数列 を定義する:
・,; ここには,
・; ここには,
・; ここには.
結局から のような数列ができることになる.
さて,らは有界なので が存在するが,このはのどれとも一致しないので矛盾であるというのである.この部分を補足する.仮に となったとしてみる.の定義から であるが,この等号は実は成立せず(∵ 成立するととなるため の定義に反する).一方で,同じく上限の定義からだがここでも等号は成立しない(∵ 成立するととなってしまう).よって常に が成立している.ところがは なるような最小のと決めたが,すでにがあるのででなければならないため,この操作が高々有限回で止まってしまうので矛盾である □
さて,の証明も念のため.
を示す: にを対応させるとこれはのにおける稠密性より単射である.が可算無限であることを認めると, □
を示す: はCantor set と呼ばれる集合を含んでいる.具体的には で と表される実数である.Cantor setの構成は認めるとして,作りかたから.なので □
N進小数展開を使うよりずっと見通しがいい感じである(個人の感想です).