数学基礎論講義をこっそり読む

こっそり読んでいます。まだまだ最初の方の命題論理のコンパクト性のところなのですが、いきなり悩んでました...


こちらのテキストでは、前提\Sigmaのある場合の命題論理の一般化された完全性定理『 \Sigma \vdash A \Leftrightarrow \Sigma\mid= A』を先に証明して、そこからコンパクト性定理『 \Sigmaが充足可能 ⇔ 任意の有限集合\Sigma' \subset \Sigmaが充足可能』を導いています。

左向き矢印の証明は、背理法により

1) \Sigmaが充足可能でない

2) よって任意の命題、特に\botについて \Sigma\mid=\botが成立する

3) 完全性定理により \Sigma \vdash \bot

4) 証明は有限列なので部分集合\Sigma'が存在して \Sigma' \vdash \bot

5) 再び完全性定理により \Sigma' \mid= \bot これは前提に反する。


というステップを踏むのですが、疑問点は 2)にあります。まず、テキストp.21の\Sigma\mid=Aの定義においては、『\Sigmaの命題すべてにTを割り当てる任意の真理値関数が命題Aに値Tを割り当てるとき』そのように書くとあり、もともと\Sigmaが充足不可能なときでも、\Sigma\mid=Aが成立すると規約するのかという点がまず不明確です。しかし、もちろんこれはこれでOKなのですが、一般化された完全性定理の証明の左向き矢印の証明(p.22)において 『\Sigma_0=\Sigma \cup \{\neg A\}と書き直すだけでよい』とある点がすこし問題になります。この場合 \Sigma_0が無矛盾でないとその後の構成がうまくいきません。ただ、補題2.5があるのでこの場合は直接 \Sigma \vdash Aが出て証明が終ります。ちょっと気持ちがわるいのは\Sigmaが充足不可能かつ \Sigma_0が無矛盾でないという場合を一応考慮する必要があるところで、この場合は証明での構成が進んで、\Sigmaを充足する真理値関数ができ、結局矛盾するためそういう場合はないということになります。なんかねじれている感じが…


すっきりさせる方法としては、テキストの完全性の証明をまねすると、

\Sigmaは無矛盾である⇔\Sigmaは充足可能である』

がすなおに証明できるので、その両辺の否定形の

\Sigmaは矛盾する⇔\Sigmaは充足不可能である』

\Sigma \cup \{\neg A\}に適用すると、一般化された完全性定理が得られ、

\Sigmaは矛盾する⇔ある有限集合\Sigma'\subset \Sigmaは矛盾する』

と組み合わせると

\Sigmaは充足不可能 ⇔ある有限集合\Sigma'\subset \Sigmaは充足不可能』が得られ、これの両辺を否定形に直すと、コンパクト性定理が得られます。