数学基礎論講義をこっそり読む(その2)

引き続きこっそり読んでいます。もうちょっとでPartA 第三講が終わります。


いくつか、コメントというかメモっぽいものを。

p.31 定理3.2(演繹定理)の証明は読者に任されていますが、その証明中で唯一問題になりそうなのは


\frac{\Gamma\vdash \varphi\to(\psi\to\theta(x))}{\Gamma\vdash \varphi\to(\psi\to\forall x\theta(x))}


の導出だと思います。ちょこちょこ参考に見ている 前原昭二著『数学基礎論入門』では、\forall x(\psi\to\theta(x))\to(\psi\to\forall x\theta(x))は公理であり、導出規則\frac{\forall x(\psi\to \theta(x))}{\psi\to\forall x\theta(x)}の代わりに\frac{A}{\forall x A}となっており、これらから上の式は次のように証明できます。

\frac{\Gamma\vdash \varphi\to(\psi\to\theta(x))}{\Gamma\vdash \forall x(\varphi\to(\psi\to\theta(x))} は推論規則から、

公理より \forall x(\varphi\to(\psi\to\theta(x))\to (\varphi\to \forall x(\psi\to\theta(x))

\varphi\to (\forall x(\psi\to\theta(x))\to(\psi\to\forall x\theta(x))は、\varphi\to(公理)の形なので定理であり、\varphi\toの部分を分配する公理の二番目より、

(\varphi\to \forall x(\psi\to\theta(x))\to(\varphi\to (\psi\to\forall x\theta(x))が得られ、全部つなげると証明完了。

数学基礎論講義』の公理系は『数学基礎論入門』のものに等価なので、実のところテクニカルには同値関係(ここではAを仮定してB、Bを仮定してAが導出できるとき A⇔Bとする)

A\to (B \to C) \Leftrightarrow A\wedge B \to C

が成立しており、これを認めればすぐに証明できるのですが、テキスト中では論理記号\wedgeについての説明をすっとばしているのでいかんとも…そこでこれと等価な、

A\to (B \to C) \Leftrightarrow \neg(A\to \neg B) \to C

を直接示します。ショートカットのため、少しゲンツェン流の入った証明図です。矛盾\botから前提のどれか一つの否定が導出できるのはp.19補題2.5からです。この論法により、A,\quad A\to B,\quad \neg B \mapsto \botからA\to B,\quad \neg B \mapsto \neg Aという導出が可能です。また \neg\neg C\to C等も黙って定理として使っています。ただし、Aを仮定してBが証明できたとき、Aの仮定なしにA→Bが証明できるという仮定の消去のルールを無反省には使えません。これは証明したい演繹定理そのものだからです。ただし、下の証明のように証明が命題論理の証明図と同じ構造のものは、命題論理の演繹定理よりその使用が正当化されます。


の証明図:



の証明図: