位数の小さな群を全て求める

与えられた位数の有限群の同型類を全て求めるという問題である。この問題の歴史は古く、1854年にCayleyが位数4と6の群を決定したことに端を発する(ちなみにどちらも2つの同型類がある)。群論の演習で出てきそうな問題であるが、Burnsideも位数60の群の決定問題はすごくいい演習になると著作で述べている(実際はそう簡単なものではない。答えは13)。
FT定理などの大定理に比べるとなんだか問題が小さいような思うかもしれないが、実はこれ結構難しいのである。Sylowの定理を駆使し、ちまちま場合分けをしてと大変テクニカルな面が大きいのだが、有限群の方法論の本質を突いているという話もある。かのThompsonが彼の有限群論の業績における方法論とは何かと聞かれて、「Sylowの定理」と答えたという話もあるそうだ。
さて、この問題に関して、ぜひとも紹介しておきたい資料がある。本ブログも参加している、はてなリング数学の輪の主催であるRed cat氏の労作 『位数120までの群の分類』である。
http://d.hatena.ne.jp/redcat_math/20051129
私もまだ全部読み込んだわけではないが、大変参考にさせてもらっている。実はこっそりとこの論文の結果を短縮しようと企んでいるのだが、全90ページのうち、位数16に6ページ、位数81に12ページ、2^3pに15ページが費やされており、このあたりが狙い目である。うまくいけばこの場で紹介していきたい。

位数2000までの群は全て求められている

この群の構成の問題はいまどこまで解けているのだろうか?
この問題で手ごわいのは意外に2の冪乗の群である。位数16で14個、位数32で51個、位数64で267個、位数128で2328個、位数256で56,092個、位数512で10,494,213個とどんどん恐ろしいことになってくる。位数が1024=2^{10}の群の同型類の数はつい最近まで知られていなかったが、答えは49,487,365,422個である。また、位数が2000以下で1024以外の有限群の同型類の総数は423,164,062であることも知られており、位数2000以下の群の実に99%以上が位数1024の群であることになる。石を投げれば位数1024の群に当たる。
これらはBescheらの位数2000までの群を構成しようという"ミレニアムプロジェクト"の成果である。Besche
また、彼らの成果はGAPというプログラムの形で公表されている。興味のある方は"GAP Besche"でググッて見ていただきたい。


この結果を見ると問題の難しさの意味が若干ちがってきていて、コンピュータを駆使した物量の勝負と言った感じはする。ぶっちゃけ計算機をぐるぐる回してこんなんでましたーが数学と呼べるのかという論議もあるのだが、私はこういうコンストラクティブなのも結構好きである。野望としては、(控えめに)位数32とか64とかを自分でプログラムを書いて計算してみたいと思っているのだが...