絵で見る有限群

有限群ネタを求めてネットを漁って見つけたもので、一番感動を覚えたのは次のサイトである。
弘前大学理工学部数理システム科学科のサイトにある月間ホームページ2002年3月号:
絵で見る有限群


なんと位数60までの有限群が(全部ではないが)ヴィジュアルに表現されている。これを眺めているだけで、位数が同じであっても有限群がいかに多様な構造を持ちえるかということを実感させてくれる。そして美しい。
私が目玉と思うのは位数32の群である。実は位数32の群の同型類は51種類あるが、ちゃんとすべてが視覚化されている。これすごい手間だったろうなぁ。(位数48も52種類と多いが残念ながら全部は視覚化されていない。)
いちおう解説も付いているが、念のために述べると有限群を視覚化する手順は次のようである。

  1. 群の生成元をうまく選ぶ。(たぶん数が最小になるようにするのがいいのかも?選び方によって、一般には絵は違うものができる。)
  2. 群の全ての元を頂点とする。
  3. 2つの頂点A,Bに対応する元g_{A},g_{B}と生成元のどれかaに対して、a \cdot g_A=g_Bが成り立つとき、AからBへラベルaのついた(かわりに色分けしてもよい)矢印を引く。



もちろん頂点の数は有限群の位数となる。また絵では双方向になっている辺の出入りもきちんと勘定すると、頂点からはつねに生成元の数のだけ矢印が入り、同数の矢印が出て行く。つまり一つの頂点につながる辺の数はどこでも生成元の数の2倍となっている。
この(辺にラベルのついた)有向グラフ(と、たぶん単位元の位置)が与えられると、グラフの辺をたどることで生成元の積が計算でき、元の群が再現できるので情報はグラフの中にすべて含まれている。
ただし、視覚化されたからといっても群の構造が全部見えるわけでない。たとえば正規部分群があるとかないとか(つまり単純群かどうか)は見た目ではわからないし、部分群と群全体の関係はこの方法ではうまく表現されていない。また、生成元のとり方に依存しているのでグラフが違うから同型でないとは限らない。
ただ、ぱっと見て二面体群D_{2m}と直積C_2 \times C_mの区別が付くのが面白い。どちらも筒状になるのだが、底と天井でサイクリックに回っている部分が違う向きか、同じ向きかで区別できるのである。これはもちろん二面体群ではサイクリック部分の生成元をa、反転をbとするとb^{-1}ab=a^{-1}なる関係があり、これはちょうど側面の四辺をぐるっと回る関係に等しいからである。